駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・Sフェザー級契約ウェイト(57.5kg)10回戦/●片山博司[アポロ](判定1−2)児島芳生[明石]○

セミファイナルはアポロジムの“ポスト度紀武彦”的存在となりつつある片山が、初の日本ランキング挑戦する冒険マッチ。
片山は8勝(2KO)無敗1分の戦績。04年のデビュー以来無敗のレコードを伸ばしているが、4回戦時代はタイ人か未勝利選手、6回戦では大幅負け越し選手、A級昇格してからは来日未勝利のタイ人が相手と言う、ここまでは葛飾在住のボクシング一家も真っ青のかなり露骨なマッチメイクが為されている。だが、今回は期せずして日本ランキング挑戦。真価の問われる試合となるだろう。
児島は9勝(2KO)8敗2分の戦績で現在日本フェザー級10位。00年にデビュー。4回戦は脱出に3年半を要し、新人王戦も2年連続で予選敗退。6回戦からA級昇格を果たすまでにも2年と相当の時間を要したが、A級3戦目の06年11月に当時日本1位だった武本在樹[千里馬神戸]を僅差の負傷判定で降す大番狂わせを演じて一気に台頭した。その後、今年3月に在樹の実弟・康樹に敗れてランキングを下げたが、6月には森川弘幸[高砂]の挑戦を退けて踏みとどまった。
1R。クロスレンジ乱打戦。片山がアグレッシブに手数を出すが、精度今一つで命中するパンチは少ない。児島が後半から手数返すと、明確なヒットに繋がって形勢は小差ながら逆転か。
2R。早くも泥仕合気味の乱打戦。片山の先手の攻撃を児島がもらう場面が目立つ。苦戦ムードとなった児島も左中心にヒットを返して互角近辺の形勢に持っていく。
3R。泥仕合が続く。技術で劣勢の児島はとにかく手数で攻め立てるが、児島は時折中間距離に離れると印象的なジャブ、ストレートを放ちジャッジにアピールする。ボクシングの形になっているのは児島だが、受身の時間が長い。
4R。乱打戦が続く。片山は「手数を尽くして天命を待つ」と言わんばかりの試合振り。児島はボディ連打や右アッパーなどでヒットを手堅く重ねて小差ながらリード確保か。
5R。片山は遮二無二手数を出すと、児島はこれを捌き切れずに被弾し、見栄えが悪い。更にショルダーアタックでリズムを狂わされる児島だが、左ボディで効かせてどうにか見せ場。
6R。片山の強引な圧力と連打によって、児島は塩漬けにされてしまう。反撃の糸口を掴むべく、ボディ狙いに徹するが、これが手数減少に繋がって逆効果。泥仕合となって劣勢に。
7R。泥仕合が延々と続く。児島は片山の圧力を捌き切れずに厳しい展開を強いられるが、ボディで片山の体力切れを誘ってどうにか見せ場を作る。片山はスタミナが厳しくなって来た。
8R。片山は完全にスタミナ切れ。フックは全てオープンブローになるなど厳しい状況だが、児島はこれをもらってしまい、更に印象を損ねる。ボディを散発的ながら的確に打ち込んでジャッジを説得するのに必死。
9R。片山は中間〜遠距離でフック中心に大振りも、児島はこの乱雑なパンチをカウンター気味にもらってしまって苦戦。終了ゴング直前、漸くボディをヒットさせるが……
10R。片山がこのラウンドも左フッククリーンヒットで先制。児島は圧力攻めに屈して主導権を掴み切れない。泥仕合の中で、試合終了直前にヒット重ねて逆襲したが、どこまで?
公式判定は北村98-95、野田96-95(以上、児島支持)、坂本96-95(片山支持)のスプリットで児島が辛くもランキングを防衛した。駒木の採点は「A」96-94「B」98-96で児島優勢。
児島が相手の強引な圧力攻めに屈してよもやの大苦戦。全てのラウンドで塩漬けにされて、ダルファイトを強いられただけでなく危うく勝利も手放すところだった。今日の試合は守備も拙く、受身に回って主導権を失ったファイターの脆さを再確認させられた。試合を潰された事に恨み節も出したくなろうが、今日の失態は格上たる児島が全責任を負わねばならない。
片山は地力上位の相手に対し「これしかない」と言わんばかりの手数・圧力攻勢。しかし極度の緊張のためか序盤から息が上がり、時を負うごとに攻めが乱雑になっていった。数字上は大健闘のスプリットデシジョンだが、この内容で日本ランカーになられても……という感は否めない。