駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Sライト級10回戦/△畑大輔[進光](判定1−1)松本憲亮[ヨシヤマ]△

メインイベントはSライト級下位ランカー同士のサバイバルマッチ。タイトル戦への挑戦者決定戦的な意味合いも含まれている、との話だがさて……?
畑は11勝(1KO)3敗3分で、現在OPBFのSライト級10位、日本同級7位。02年末にデビュー。グリーンボーイ時代は勝ち負けにこだわらず、ハイペースで試合経験を積む方針で育成された。04年には新人王戦にエントリーするが、西日本ベスト4でドロー敗者扱いに泣いている。その後、6回戦を連勝でクリアし、A級でも山崎晃[六島]に敗れた他は丸2年で5勝1分と高い勝率をキープしている。ただし最近は徹底的に打ち合いを避けて軽打でポイントアウトを狙う消極的な試合姿勢が窺え、ここ3戦はタイ人相手にノックダウンや苦戦を強いられる場面もまま見受けられる。今回は久々の日本人ランカー相手で、文字通りの正念場と言えるだろう。
松本は20勝(15KO)3敗2分で、こちらも同じくSライト級でOPBF13位、日本9位のランキングを保持している。01年にデビュー。以来、新人王戦などのトーナメントとは無縁の“裏街道”を全力疾走するマッチメイクで、慎重に相手を選んで連勝を重ねつつ、時折日本ランカー下位(級)選手にチャレンジしては苦戦……という内容がここまで続いてしまっている。高勝率・高KO率が目に付くが、このうち9勝・9KOは戦意の乏しいタイ人相手に稼いだものである事を考えると幾分割り引いて考えねばならないだろう。今回は06年9月以来の日本ランカーとの対戦。28歳・26戦目という事も考えると、こちらもプロ生活の重大な分岐点に立たされていると言わねばならない。
1R。松本が圧力をかけ、ロープに詰めて畑のスピードを封殺。ガードを固めながら時折左を畑のアゴに捻じ込んで優位に立つ。畑はジャブ中心にチャンスを窺うが守勢気味。
2R。畑は手足のスピードを活かしてジャブ中心。細かくヒットも奪うが、松本の圧力の前にやはり受身に回ってしまう。松本は明確なヒットを奪い切れないが、攻勢点は確保。ジャッジの見方は割れそうだ。
3R。松本がラウンド序盤に圧力かけつつ3発ヒットを奪って先制。畑はキレのある手足の動きで反撃、見せ場を作るがヒット数と攻勢点で劣勢に立たされる時間帯が長い。
4R。このラウンドは畑のスピードが松本の圧力を凌いだ。ステップしながらのジャブ、ストレートを細かく浴びせてリード。松本は中途半端なファイタースタイルが裏目に出ている。
5R。畑のスピードと松本の圧力で五分の態勢。畑はジャブや右カウンターでヒットを奪うが、やはり軽打中心。松本の追い足使いながらのストレート、フックとの比較でどう判断されるか?
6R。松本がジャブで圧力かけ、ロープに詰めてストレート、フックに繋げてヒット数でリード。畑もステップで捌きつつ、キレのあるストレートで反撃するが、パンチ力不足は如何ともし難い。守勢に回った時間も長い。
7R。ラウンド序盤は松本が圧力かけつつ右ショートで先制。しかし畑は中盤からアッパー中心にヒットを返し、スピードで主導権もアピール。採点要素的には五分の展開。
8R。松本はここも圧力かけて畑のペースを乱す作戦。畑はスピード優位をジャッジに意識付けしたいが、ロープを背負う時間が長く、その中で被弾も目立ってしまう。
9R。松本の圧力と手数に苦しむ畑、口を開けて苦しそうな表情。畑の反撃は散発的でインパクトに欠ける。力量は互角だろうが、見た目に優勢に映るのは松本か。
10R。松本の圧力を、畑が手数豊富な迎撃で対抗。ラウンド後半からは珍しく至近距離の乱打戦に打って出て、ここでは松本を圧倒する。最後の最後に意地を見せて貴重な1ポイントを奪い取った。
公式判定は坂本97-95(畑支持)、野田96-95(松本支持)、北村96-96の三者三様ドロー。駒木の採点は「A」96-94「B」98-95松本優勢。アウトボクサーの主導権支配とファイターの攻勢点、どちらを重視するかで採点が大きく割れそうな試合。実に妥当な公式採点結果と言って良いだろう。
注目のサバイバルマッチは痛み分けのドロー。手足のスピードを活かして主導権支配を狙う畑に対し、圧力攻めでその作戦を封じこめようとする松本。ラウンドごとに優勢・劣勢が入れ替わるシーソーゲームとなった。
畑はパンチ力不足が響き、“クリーンヒット”要素の優勢を確保できないのが痛い。松本も己の被弾癖に自縄自縛の状態で、知らず知らずの内に消極的な姿勢が顔を覗かせている。共にランカーとしては長所よりも短所の方が目立つ現状で、勿論のことタイトル挑戦には時期尚早だ。