駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・バンタム級10回戦/○馬野晃[ハラダ](判定3−0)川口裕[Gツダ]●

メインイベントは4回戦から叩き上げて来たノーランカー同士による10回戦。
馬野は6勝(3KO)2敗の戦績。05年7月にデビュー、持ち前の強打を活かして4連勝、06年の西日本新人王戦で準決勝まで進出するが山本幸史朗[ウォズ]に接戦を落として敗退。しかし6回戦で間もなく再起し、山本にもリベンジを果たしてA級昇格。今年4月の8回戦でベテランの中谷年伸[八尾]に敗れて2敗目を喫したが、再度立て直してA級初勝利を狙う。
対する川口は6勝(2KO)3敗。04年10月デビュー。緒戦を黒星とするも、その後は3連勝をマーク。06年にエントリーした西日本新人王戦は、相手選手の棄権で準決勝スタートとなり、その試合でこの年西日本を制覇する難波拓人[明石]に敗れる。再起後はまたも3連勝。6回戦も連勝でクリアしたが、A級緒戦を輸入ボクサー・ジェロッピ・メルガド[千里馬神戸]に敗れて3敗目を喫した。今回は再起戦で初の10回戦というハードな条件となった。
1R。距離を開けてロングフックで牽制する川口が手数でラウンド前半を優位に進めるが、馬野は上手い迎撃連打で対抗する。終了ゴング前、馬野は左アッパーを有効打してこのラウンドほぼ唯一のハイライトシーンを作った。
2R。相手の攻勢をステップワークで捌き合う静かな流れ。馬野が唐突にフック、左アッパー→右ストレートのコンビでヤマ場を作り、重いボディブローも追加する。川口も怯まず反撃、ラウンド終盤には小気味良く三連打を2セット決めたが、こちらは軽打中心で微妙。
3R。ショートレンジ打撃戦。馬野がアッパー連打の打ち逃げ巧く、手数・ヒット数でリード。川口も隙見て飛び込み上下にフックを浴びせ、ラウンド終盤の打ち合いでは優位に運んで形勢を互角に戻してみせる。
4R。ショート〜中間レンジの攻防。両者やや攻防分離傾向のある捌き合いだが、川口が手数でリード。時折ジャブで馬野の顔面を跳ね飛ばす。馬野はラウンド終盤までボディを攻められず、やや淡白な内容に終始。
5R。やや動きの鈍った馬野に対し、川口が序盤から圧力をかけてコーナーに詰めコンビネーションを見舞う。その後も左右をスイッチさせながら自在の攻めを展開。しかし終了ゴング前、馬野は左をクリーンヒット、川口を効かせて猛追。
6R。ショートレンジ中心の攻防。川口は右ストレート2発先制も、馬野はボディ打ちから得意のフック連打でダメージ与える。川口も立ち直りかけるが、クロス気味に右ストレートを浴びて苦戦。
7R。馬野がラウンド序盤からアッパーを起点に猛攻。フック、ストレートを無数に浴びせて圧倒的優勢。川口はマウスピースを吐き出しつつ悲壮な抵抗もTKO寸前の大ピンチ。なお、このラウンドに馬野は明らかに故意のヘディングを行って一発で減点2のペナルティ。
8R。ショートレンジ打撃戦が続く。川口必死の抵抗も、馬野のアッパー、フックがダメージを刻み付けてゆく。パンチの質・量両面で馬野が優位。だが川口の粘りも驚異的。
9R。川口はステップを使って捌きつつ、ロングレンジから手数を出して主導権確保と巻き返す。馬のも強打でアグレッシブとダメージブローを狙ってゆくが、採点で優位と判断してやや流し気味になる時も。結果、やや淡白な内容になった。
10R。川口が一縷の望みを賭けて最後の攻勢。しかし馬野は左カウンター、右ストレート、左アッパーで迎撃して突き放す。川口もフックでカウンターを決め一矢報いるがパンチ力の差は如何ともし難く、大健闘も劣勢否めず。
馬野は7Rに故意の悪質なヘディングにより減点2。
公式判定は原田96-92、野田96-93、北村96-95の3−0で馬野。駒木の採点は「A」95-93「B」97-94で馬野優勢。
馬野が久々に彼らしい強打攻勢で完勝。試合後半を完全に支配するなど減点2の“狼藉”を除けば上々の内容も、ガード難ゆえの穴も大きく、ランカー級との対戦では欠点が先立つ心配も。
川口は前回でもそうだったが、得意のディフェンスがA級ではアドバンテージにならず、攻撃力の弱さばかりが目立つようになってしまった。この壁をどう越えるか、08年はこの難問との戦いとなるだろう。