駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部総括

KO決着、ノックダウンシーンが多く、前座から爽快感溢れるシーンが続出。メインも結果こそ不完全燃焼の印象だが、セーンヒランの高い能力と、武本の試合終盤での粘り強い戦い振りで好内容になった。総合的に見て充実した内容の興行と評して良いのではないだろうか。ただ、その前座とメインを繋ぐ中盤で、良い流れをブツ切りにするような凡戦があったのが画龍点睛を欠いたようで残念だった。


あと、これは昼夜通じての話だが、この日大変気になったのがTKOの際のレフェリーストップのタイミングだ。
中でも松田レフェリーのストップが大変に遅かった。守勢の選手が抵抗力を失くして崩れ落ちてから慌てて止めに入る危険なシチュエーションが2度もあり、客席から野次が飛び交うほどであった。
初めから万能の人物などいるはずもなく、どんな名レフェリーも新人から出発するわけであるが、たとえC級ライセンスであれ一度主審としてキャンバスに立った以上は、選手の生命や人生に対して重い責任を負う。選手の安全を守る事はJBC規則にも明記されている。ならばこそ、主審にはその責を負うに足る能力が求められるし、それが必要最低限のラインに達していない者に主審を務めさせるべきではない。このようなケースにおいては一定期間主審担当から外し、副審の業務を通じて先輩レフェリーのレフェリングを間近で学ぶ機会を与えるという処置も必要ではないだろうか。
また、危険という観点からはズレるが、年頭から10数年ぶりに現場復帰している川上レフェリーは、この日に限らずTKOに踏み切るタイミングが相当に早い。かつて担当試合でリング禍を出したという経験がそうさせるのかとも思われるし、選手の安全を確保するための早めのストップは奨励されるべきでもあるが、守勢の選手が余力を振り絞って反撃に出た瞬間にストップしてしまうなど、間の悪さが実に目立つ。不満と疑問を露わにしながら自コーナーに連れ戻される選手を度々目の当たりにしてしまうと気の毒になる。
しかもこの日は、主審担当が松田氏→川上氏という順番で、しかもどちらもレフェリーストップ決着というケースが2度あった。その試合を止めるタイミングのギャップたるや甚だしいもので、これでは当事者である選手・セコンドにしてみれば堪ったものではないだろう。
もっとも、日本のプロボクシング界ではレフェリーストップのタイミングが全く統一されていない状況にあり、「マーチン・ストップ」などという造語の存在から見ても判るように、各レフェリーの試合を止めるタイミングは十人十色の有様である。そんな中で裁定の基準が非常に曖昧なままで重責を負わなくてはならない新人・若手審判諸氏の精神的負担も大きいものだとも思う。採点基準などと同様に、レフェリーストップに関するある程度の基準を、JBC所属の(少なくとも地区内の)全レフェリーで共有する事があっても良いのではないだろうか。選手の安全を守り、かつ敗れた選手や観客が出来るだけ納得するような判断が、常に行われるようにして欲しい。これは理想ではあるが、理想で終わるべきものではないと筆者は信ずる。故に僭越ながらこうして意見させて頂いた次第である。