駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第4試合・フライ級契約ウェイト(49.5kg)6回戦/△中澤翔[大鵬](判定1−1)野口貴史[大阪帝拳]△

両者戦績は中澤8勝(1KO)3敗1分でサウスポー、野口5勝(0KO)5敗。中澤は昨年末の新人王全日本決勝からの再起戦。06年の西日本新人王戦準Vの野口は昨年末に1年3ヵ月振りの再起戦を勝利で飾って、今回が初の6回戦。
1R。野口が早々に攻勢仕掛け、中澤がアウトボックスで捌く展開。野口はアグレッシブに手数を出すが、ほぼ捌かれてヒットは僅か。しかし中澤も反撃態勢になかなか移行できず、ヒットは1発程度。ほぼ互角の内容だが……?
2R。野口はアグレッシブに攻め続け、ジリジリと中澤をロープ際に詰めて手数・ヒットを重ねてゆく。中澤も巻き込み気味のフックなどで迎撃するが、受身の時間が長いか。
3R。中澤も前に出て乱打戦模様。しかし両者パンチ力に欠け、ダメージブローが皆無。互角の展開の中、前Rに野口がバッティングで額に作ったコブが巨大に膨れ上がり、中澤もドクターチェックに長い時間を要する右目付近の切り傷を負う。妙な形で痛々しさが漂う試合に。
4R。再び野口の圧力が優勢になり、ストレートなどで有効打連発。後半から中澤もボディなどへ強打返して抵抗するが、主導権を獲り切れなかった時のアウトボクサーは見栄えが悪い。
5R。野口の攻勢を必死に食い止めようとする中澤だが、命綱の左ストレートが当たらず主導権を引き寄せ切れない。ラウンド終盤には野口の右ストレートがクリーンヒットして、形勢ハッキリ。
6R。このラウンドも野口の攻勢と中澤の迎撃という構図。中澤がステップ使ってパンチを打ち逃げするシーンも作るが、野口の前進伴う連打と右が有効打になる。ラスト30秒の時点で再度長いドクターチェック。一息入れた両者が最後の力振り絞って乱打戦を展開するが、気持ちが空回りした。
公式判定は宮崎58-57(中澤支持)、野田58-57(野口支持)、坂本58-58の三者三様ドロー。駒木の採点は「A」59-55「B」60-56で野口優勢。
アウトボクサーの主導権支配とファイターの攻勢点で、採点が割れ易い試合の典型例。筆者は有効打・ダメージブローで勝った野口の右ストレートと圧力攻勢を一貫して支持したが、公式ジャッジは中澤のスピードある捌きにも一定の評価を与えたようだ。昨年の東京地区のJBC試合役員会では「戦型に関わらず、優勢・劣勢の決手はダメージブロー」という合意が為されていたが、今回の野口の有効打は決手となる程のダメージブローではない、という事か。どのレベルから有効なダメージブローとするかという点も含めて、未だこの手の試合は採点者泣かせである。