駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第6試合・Lフライ級契約ウェイト(48.0kg)8回戦/○堀川謙一[SFマキ](判定3−0)諸一宇[尼崎]●

堀川は15勝(4KO)5敗の戦績で、OPBFミニマム級4位、日本同級1位。WBCではLフライ級34位の下位ランクに登載されている。00年デビュー。01年から新人王戦にチャレンジし、この年は準決勝敗退、02年初戦敗退、そして04年にLフライ級西日本新人王となる(中日本との地区対抗戦で敗退)。だが本格化は05年からで、再起戦勝利でA級昇格すると、翌06年春までに3人の日本ランカーに相次いで挑戦し、2勝無敗1分の好成績で自身も日本上位ランカーに。その後、ノーランカー相手に連勝を収めて07年後半には日本1位の立場ながらA級トーナメントにエントリーし、これも見事優勝した。世界ランカーの層が厚いミニマム級戦線故にタイトル挑戦の機会がなかなか与えられないが、実力の証明は既に十分。来るべき日に向けて、牙を研ぐ日が続く。
対する諸は6勝(1KO)6敗3分。03年デビュー、04年・05年と新人王戦に参加するも予選敗退。05年までに4勝目を挙げてB級昇格を果たす。しかし06年は3戦して3敗、07年も敵地遠征での黒星スタートで4連敗と低迷。ところが同年8月に久々の勝利を挙げると、12月にも以前敗れた相手にリベンジの1勝を挙げて連勝でA級昇格。丸2年でのB級停滞から一転、勢いづいて初の8回戦に臨む。相手はこれまでにない強敵だが……
1R。諸は“挑戦者”らしくアグレッシブに手数。堀川はガードしつつカウンター・打ち終わり狙い。諸がジャブ中心にヒットと手数を稼ぐが、堀川は虎視眈々と右ストレート、フックを狙い、ラウンド終盤に強烈な右カウンターで諸をキャンバスに沈める。タフな諸はカウント8で立ち上がるが、早々と堀川が格の差をアピール。
2R。堀川は無言の圧力をかけてジリジリと諸をロープ際に追いやる。堀川は手数抑えてカウンター狙いで、右ダブルなど的確にヒット奪う。諸もラウンド終盤にコーナーに詰めてのラッシュを見せたが、堀川の落ち着いた捌きの前にヒットは1〜2発のみ。
3R。堀川が自分から攻め始める。左ボディを効かせておいて、同種のフックを顔面に叩き込むなど理詰めの攻めで有効打数リード。諸の掴み処の無い攻撃は霞んで見える。
4R。堀川の鋭利な左ボディが次々と諸に突き刺さる。諸も怯まず抵抗し、ラウンド終盤にはカウンターを決めるが、堀川は被弾からすぐさまラッシュで反転攻勢に移り、ジャッジの浮気を許さない。
5R。諸が先手で手数。しかし堀川はジャブは当てさせてもその先を許さず、逆に左アッパーを有効打し、他にもボディへ細かくヒットを集める。諸も圧力かけてアグレッシブさをアピールするが、どこまで?
6R。諸は果敢に圧力と手数で迫るが、堀川1Rの恐怖を思い出させるような動きで威嚇し、争わずして主導権確保。そこからボディブロー、右ストレート、アッパーと自在の攻めで優勢。
7R。堀川の一方的な優勢。左ボディにヒットを集めてからの右ストレート狙いを見せたかと思えば、諸が一瞬怯んだと思えばロープに詰めてのラッシュでレフェリーストップを促すなど、随所に理で詰めた攻め方を披露。しかし諸もカウンターで一矢報いようと必死の防戦を続ける。
8R。最終ラウンドにして気迫溢れる好ファイトに。諸のガムシャラな猛攻、これを堀川がコーナーに詰まりつつも捌き、そこから攻守逆転させて左フック、右ストレートを決めて諸をグロッギーにさせる。だが最後の最後まで諸も粘り強く抵抗し、立ったまま試合終了のゴングを鳴らさせた。
公式判定は半田80-71、坂本80-72、野田79-72の3−0で堀川。駒木の採点は「A」80-71「B」80-73で堀川優勢。
堀川は1年2ヶ月ぶりとなる関西での試合を、卓越したインサイドワークと堅実な攻守を組み合わせた熟練の戦い振りで完勝。これで12ヶ月連続の日本1位キープが確実となった。充実ここに極まるといったコンディションで、今すぐにでも日本タイトルに挑戦させたいぐらい。勝負の勘所を知り尽くした試合運びの妙はタイトル戦線でも十分に通用するだろう。
諸はA級緒戦で1Rに痛烈なダウンを喫する中、粘りに粘ってフルラウンド。しかし気持ちの強さだけでどうにか出来るレベルを超えた相手の前に完敗を喫した形。しかし心身の強靭さはアピールできたし、今後に繋がる試合だったと言える。