駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・フェザー級契約ウェイト(56.0kg)8回戦/△上谷雄太[井岡](判定1−1)川野正文[大阪帝拳]△

上谷は6勝(2KO)無敗の戦績。アマ時代に高校選抜タイトルを獲得し、06年12月末にプロデビュー。わずか半年の間に4回戦を3連勝、6回戦を2連勝でA級に昇格。中には際どい判定に持ち込まれた苦戦もあったが、徐々にプロの水に慣れ、今年2/29には難敵・内山淳[倉敷守安]と6回戦で対戦。持ち前のスピードで相手の圧力を完封する好勝負で6連勝目を挙げている。
対する川野は7勝(2KO)6敗1分。02年にデビュー。それ以来3連勝で03年、04年と新人王戦に挑むが、04年の西日本ベスト4が最高位に終わる。6回戦昇格後は、荒川正光[京都拳闘会]と1勝1敗の後、現日本ランカーの小林克也[正拳]に1RKOしてA級へ。8回戦では上原裕介[大鵬]と昨年8月、12月と連敗、昨年8月の中井五代[大鵬]戦にも敗れ、未だA級8回戦で勝ち星が無い。
1R。どちらもスピードを前面に押し出す作戦でスタートしたが、スピード上位の上谷がインファイトも交えつつ、左中心にヒット連発してリード。カウンターや打ち終わりを狙われる場面ではヒヤリとするが、このラウンドは上手く対処して大差優勢。
2R。上谷が懐に潜ってボディアッパー中心にヒット連発。フック連打にも繋げてコンビネーションでグラつかせる。川野は後手後手の流れから脱せられず。
3R。足を止めての打撃戦へ。上谷はフック、アッパーに回転の利いた連打でヒット数大差だが、川野のジャブとストレートを浴びるシーンも。ラウンド終盤、上谷はカウンター合戦でフックを川野のアゴに掠らせてノックダウン。
4R。上谷はクロスレンジで果敢な打ち合いに。フック連発→アッパー、フックというコンビネーションで相手に反撃するゆとりを与えない。攻撃時には緩くなる守備も、意識していればガードも堅く相撃ち以外の被弾は許さなかった。
5R。上谷は体力温存のためにクルージングか、ロングレンジで守備中心の立ち回りで、川野の攻勢を捌きつつ左中心に手数を出す。だが、不用意に近距離に飛び込んで川野から3連打を浴びてしまう。すぐさま反撃するが、消極的な姿勢と相まって、やや劣勢か。
6R。再びショート〜クロスレンジの打撃戦へ。回転の利いた連打で上谷がリードを広げる中、川野もラウンド終盤に打ち終わり狙いで右ストレート中心の反撃。上谷は5Rにパンチで作った左目上のキズが広がって来た。
7R。このラウンドも打撃戦。上谷がタイミング良く仕掛けて連打で圧倒も、川野は勝負を諦めず圧力攻勢。上谷はスタミナ不安か、ラウンド後半は守備中心にシフトしてリードを守るのに専念。
8R。上谷はいきなりフック連打をクリーンヒットしてTKO寸前の大チャンスを作るが、川野は必死に膠着へ持ち込んで回復を図る。その内、上谷の体力が先に尽きて失速、息を吹き返した川野の反撃を喰って逆にクリンチへ行く場面も。終了ゴング前、川野はノックダウン寸前の猛攻で追い上げ、このラウンドは互角以上まで挽回した。
公式判定は坂本77-76(上谷支持)、宮崎76-75(川野支持)、原田76-76の三者三様ドロー。駒木の採点は「A」77-74「B」78-74で上谷優勢。回転力に富んだコンビネーションで手数・ヒット数を稼いだ上谷と、断続的にダメージブローを叩き込んだ川野とで見方が割れた。こちらも客席後方とリングサイドでは見え方の違う試合か?
上谷がスピード中心の立ち回りを封印し、果敢にインファイトを挑みかかって勝利への貪欲さを示したが、相手の右強打を浴びて危うい場面も。8回戦上位クラスで打ち合うには攻守の地力がまだ頼りないか。プロらしい逞しさが身につき、大いなる進境の跡を見せたが、それと同時に日本ランク以上を目指すための課題が見えた。
川野は序盤戦のスピード争いで劣って主導権を手放したままの苦しい展開。相手の拙守と体力切れに乗じて右中心の打ち終わり狙いでビッグパンチを浴びせ、ジャッジにアピールしたが三者三様が精一杯。逆に言えばヒット数の大差劣勢を上手くリカバーしたとも言えるが……