駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・フェザー級8回戦/○玉越強平[千里馬神戸](7R2分20秒負傷判定3−0)山本直[守口東郷]●

玉越は20勝(8KO)5敗6分の戦績で、現在Sバンタム級OPBF7位・日本3位。99年にデビューし、00年の新人王戦では西日本決勝まで進出。その後は01年いっぱいまで6回戦〜8回戦で苦戦続きの停滞期を経験するが、02年から5年余りに渡って無敗をキープ。03年には当時無敗・日本1位の池原信遂[大阪帝拳]に土をつけて日本ランクに躍進し、04年6月には中島吉兼[角海老宝石・引退]が保持していた日本タイトルに挑戦している(結果は負傷ドローで挑戦失敗)。07年6月には強豪王者ウェート・サックムアングレーン[タイ国]に挑戦、ダウンを奪うなど大健闘するも逆転判定負けに終わった。間もなく再起し、現在はウェートへの再挑戦を目指し実績作りの途中。07年11月には新進気鋭の石東正浩[Gツダ]にドローとされたが、今年3月には松村勝[ウォズ]に久々のクリーン・ノックアウト勝ちを収めて復調気配である。
山本は6勝(3KO)5敗1分の戦績。03年末にデビュー、04年を2戦2勝として05年と06年の2度新人王戦に挑戦するが、いずれも初戦敗退。マッチメイク面の不遇で再起にも手間取るがデビュー時のSフライ級からフェザー級まで増量した事でフィジカル面を充実させ、06年11月と07年2月に連勝してB級昇格。その後、今年4月までの4戦で2勝1敗1分の戦績を挙げてA級まで辿り着いた。今回は初の8回戦にして日本上位ランカー挑戦の大チャンスを迎えた。
1R。山本がアグレッシブに前へ出て挑戦者らしいボクシングを展開。玉越は冷静にクリンチを多用しての捌きで対処し、ラウンド後半からはショートフックやアッパー連打で手数を返し、ワン・ツーの狙い撃ちでKOチャンスを窺う。山本は防御も確実で、ダメージは最小限に留めた。
2R。このラウンドも玉越は冷静な立ち回り。やや守勢だが、相手の攻めを受け流して手数は互角の迎撃。ただ、2戦前までの冷静に過ぎる面が出てヤマ場の少ない試合に。
3R。山本は胸を借りる立場を自覚した真っ直ぐで勢いの良い攻め。前へ出ては3〜4連打を放つシークエンスを繰り返す。ただ、逆に言えば一本調子で、玉越は冷静に捌いてアッパー中心に手数を返す余裕がある。玉越は1Rにバッティングで作った左目上の傷が開いて、視界に影響がありそう。
4R。玉越は勝負を急ぎ始めてアグレッシブな攻めを展開。ボディへ手数を集めて攻勢点を主張。山本は怯まず果敢な反撃を見せるが、これも玉越が的確に捌き、ラウンド後半には顔面へ強打を放つ。玉越が実力の差を見せ付けて漸く試合が動きだした。
5R。前へ出る山本に対し、玉越がアグレッシブなフック乱打で手数、ヒット数リード。しかし目の傷の影響か、やや雑な面もあって決め手なし。山本も得意の右ストレートは玉越の傷を広げ、自らの負傷判定負けに繋がるだけに攻め辛い。一転してもどかしい展開に。
6R。このラウンドも同様の展開。互いに現状打破する工夫に乏しく、玉越がボディ中心に数的リードも、一本調子は相変わらず。玉越へのドクターチェックも2度入って、試合終了の雰囲気も漂い始める。
7R。山本はアグレッシブさを増して勝負をかけるが、玉越は淡々と捌いて時間を使ってゆく。山本はなおも攻め、左フックで有効打奪って漸く反撃への地盤を固めたが、時既に遅く、玉越の傷悪化によるドクターストップで負傷判定へ。
7Rまでの採点で争われた公式判定は野田69-65、原田69-66、宮崎68-66の3−0で玉越。駒木の採点は「A」69-64「B」70-65で玉越優勢。
玉越は慎重な立ち上がりからエンジンをかけようとした所で負傷のアクシデント。その後は血が目に入ったか雑な攻めに終始して決定的場面を作れず、起伏の乏しい試合にしてしまった。彼の実力と地位からすれば、今日の試合はKOして合格点だったのだが……
山本はまさしくチャレンジャーに相応しい真っ直ぐでアグレッシブなボクシング。ただ、格下に甘んじる事を受け入れているような試合運びでもあった。A級では試合の中で一工夫、二工夫しなければ手詰まりになってしまう。