駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・Sバンタム級契約ウェイト(55.0kg)8回戦/●西正隼[正拳](判定0−3)ジェロッピ瑞山[千里馬神戸]○

格下のアウェイ選手ながら赤コーナーに据えられた西は8勝(4KO)7敗3分の戦績。02年にデビューするが、新人時代は勝ったり負けたりを繰り返し、04年に出場した新人王戦でも2回戦敗退に終わっている。6回戦に上がっても連敗スタートを強いられたものの、06年から6回戦で連勝してA級昇格。7月、10月と8回戦で連勝して勢いに乗る。07年末からは本田秀伸[Gツダ]、児玉卓郎[岐阜ヨコゼキ]と連続してランカーに挑戦。それぞれ大差判定負け、負傷ドローに終わっているが、今回すかさず3度目のランキング挑戦を敢行した。
今回からリングネームを変えて輸入ボクサー色を一層強くしたジェロッピは15勝(6KO)1敗2分の戦績で、先日OPBFランキングにSフライ級5位で顔を出した。05年4月にデビュー。14ヶ月で10戦、デビュー戦の負傷判定を除いて9連勝をマーク。続く比国タイトルマッチで初敗北を喫し、07年2月には敵地・南アフリカで次期WBC王座挑戦者に内定しているブシ・マリンガのWBCインター王座に挑戦し、惜しくもドロー。その後は長谷川穂積のスパーリング・パートナーを務めた縁で千里馬神戸ジムに長期滞在。現在は輸入ボクサー扱いで千里馬神戸所属となっている。来日以来、難波拓人[明石]、川口裕[Gツダ]、松元雄大[Gツダ]と、西日本新人王クラスの日本人選手に3連勝するなど、若手の壁として立ち塞がり、前回3月にはタイ人を122秒で3ノックダウンして決定力も垣間見せた。先日は世界ランカーとの試合が内定していたが、プロモーターの金銭トラブルで興行中止となり、今回は不本意ながらの再始動という形。
1R。ジェロッピは早々と西の動きを見切ってしまうと、コーナーへ追いやって、西の反応遅れがちなガードの開いた所へ実に的確な狙い撃ちで強打のヒットを連発。西の大振りはスウェーで躱して下がらず、コーナーに詰めたままのポジションを維持。圧倒的大差をつけてジェロッピのラウンド。
2R。ジェロッピは突然運動量が落ちて、ガードを固めるばかりで守勢に転じてしまう。体力切れか? 西は労せず主導権を奪って手数の山を浴びせる。ラウンド終盤、ジェロッピはアッパーをカウンター気味に放つなど老獪な所を見せたが、西も不完全なガードに頼る愚を犯さずにボディワーク中心の捌きで逃げ切った。
3R。ジェロッピはやや復調。体力温存を意識か、押し引きのタイミングを計った省エネファイトを展開。西が隙を見せるたびにボディへ単発の右を打ち込みヒット数優勢。西の強振は相変わらず躱され気味で、折角の主導権も早々に手放した。
4R。西の頭ごと突っ込むようなラフ攻勢に対し、ジェロッピは冷静に捌いて技術の確かさをアピール。時には西をロープに張り付けて猛攻を加え、試合を主導。だがこちらも大振りが悪目立ちする印象。
5R。ジェロッピのインサイドワークと右がこのラウンドも有効。西は勢い良く攻めていくが、いつの間にかロープを背負ってしまう。ジェロッピはボディ打ちと右アッパーの迎撃でここも採点要素を完全に満たしての優勢。
6R。クリンチを交えつつの消耗戦へ。西はボディワーク中心のディフェンスに切り替えてから被弾数を大幅に減らしているが、ジェロッピは持ち前の動体視力の良さを攻守に活かして互角以上の立ち回り。
7R。膠着気味のクロスレンジ打撃戦。メルカドがボディへ手数とヒットを集めて優勢。西は中盤から手数が減って体を預けるだけに。終了ゴング前には猛攻で形勢挽回狙うが不発に終わる。
8R。膠着戦。西が圧力かけつつ手数を稼ぐが、ジェロッピはガードを固め、機を見てカウンターで反撃。アグレッシブさでは勝る西だが、ジェロッピの攻守に渡る巧さも印象的。
公式判定は坂本79-73、半田79-74、原田79-74の3−0でジェロッピ。駒木の採点は「A」77-75「B」79-75でジェロッピ優勢。
ジェロッピは2Rからいきなり失速するなど危うい所を見せたが、インサイドワークと優れた動体視力を駆使して主導権をキープ。右手を試合中に骨折していた(翌日病院で診断を受けたそうだ)とは思えない冷静な試合運びで相手の狙いを全て潰し、ポイント争いを制した。A級ノーランカーには負けない地力を持ってはいるが、世界ランカークラスと混じるとスピードが平凡で、相性に恵まれた上でインサイドワークでどう誤魔化せるかの勝負になりそう。
西は持ち前の元気溌剌なラフファイトで今日も挑んだが、攻守の隙の大きさが解消されず。1Rでは不完全なガードに頼っていきなりの大ピンチ、攻めても頭から突っ込んでの強打一辺倒、そしてラウンド後半に動きが鈍る。これでは何戦してもランカー相手に通用しない。この3連敗を意義ある物にするためには、負けから得た反省点を踏まえて自分を造りかえる事が必要だ。