駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

興行の概要&雑感

日本ボクシング界・夏の大一番はフライ級の世界ダブルタイトルマッチ。この伝統の階級で王者も挑戦者も共に日本人というのは勿論、史上初めてのはず。“ブーム無き黄金時代”となって久しい日本のボクシングシーンだが、今回は人気者・内藤大助[宮田]登場とあって、ゴールデンタイムの地上波全国放送もつき、名実共に揃ったビッグイベントとなった。これまで関東ローカルの地上波中継ばかりが続いていたもう一人の世界王者・坂田健史[協栄]にとっても、便乗と言っては言葉が悪いが、全国の人々にアピールする良い機会を得られて喜ばしい事である。あとはこのチャンスをどこまで活かせるか、だが。
この両王者に挑む挑戦者は、まず坂田のWBA王座を狙うのが西日本から勇躍遠征の久高寛之[仲里ATSUMI]。昨年末に強豪フセインフセインに完勝した勢いをそのままに、世界の頂に指をかけた。ちなみに今年久高が移籍して来た現所属の仲里ATSUMIジムにとっては、これが日本・東洋を含めても初めてのタイトルマッチになる。そして内藤のWBC王座に挑むのが現・日本王者の清水智信[金子]。奇しくも世界初挑戦がタイ国でのポンサクレック挑戦だったという両者による対戦。清水にとっては、内藤がそうしたように海外で苦渋を舐めた経験を活かして飛躍を図りたいところ。内藤にしてみても、自分がそうされたように2度目の挑戦も挫きたいところだろう。
チケットが捌きやすい日本人同士の世界戦を2つ並へ、更に集客力では今が旬の女子戦や、マニア受けのするアンダーカードを並べた事もあり、この日は“大箱”の代々木第一が大健闘の満員マーク。アリーナは札止め、1階席も端を除いてはほぼフルハウス、2階席は流石に空席が目立ったが、前5列の指定席は早い段階で完売となった。テレビ視聴率も大健闘の数字を残し、客入りも合格点。興行としては大成功の部類と言えるはず。
ただ、実際に生観戦をしてみると、この会場は、ボクシング興行を打つには余りにも広すぎという印象も抱いた。試合開始前や休憩時間に確かめてみたが、1階席の10列目までなら何とかリング内の様子が肉眼で把握できるが、それより後ろとなると人間の視力の限界を超えている、という感じ。世界戦から上映の始まったスクリーンのTV用映像に頼らざるを得ないだろう。アリーナ席にしても段差が殆ど無い設計で、後方に座った人は52500円のチケット代を支払う値打ちを実感出来たのか、老婆心ながら心配してしまった。また、当日は前売指定席の不足から急遽「2階自由席」が販売されたのだが、これは大量に売れ残った「ファミリー席(子どもを含んだ4〜6人が同時に入場する格安2階席)」を1人用チケットに置き換えたもの。その計らいはファンにとっては嬉しいものの、その価格が前方の2階指定席より1000円以上高いというのは如何なものか。前述のように、2階席は肉眼で試合をマトモに観られる場所ではなく、こちらもチケット代分の満足度が与えられたかというと疑問が残る。当日券を買って入場するのは、純粋に生で試合を観たいという気持ちを抑え切れずやって来た、ボクシング界にとっては貴重な貴重なファンばかりである。そんな彼らに6300円も払わせて、テレビよりも観難い環境を提供したのでは、せっかくのリピーター候補も「候補」のままで終わってしまう。高額チケットの代表例とされる大相撲でも最後方の自由席は極めて安価な設定になっている。こういう時だからこそ、もう少し大胆で繊細な料金設定を考えて欲しかった。


※東日本地区での興行ですので、観戦記の執筆は世界戦2試合のみとします。
※手元の採点は、それぞれの団体の世界戦採点基準に従って行い、慣例に従って「10-10」は1試合に2回までとします。