駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第6試合・Sフライ級10回戦/●ロセンド・ベガ[墨国](判定0−3)小松則幸[Gツダ]○

ベガは14勝(9KO)3敗の戦績で、現在WBCフライ級14位。96年デビュー。連敗スタートと躓くが、5年のブランクを経て01年に復帰すると12連勝をマークして急上昇。ここまで目立ったビッグマッチの出場歴は無いが、世界ランクに名を連ねている。しかし今回は昨年6月以来14ヶ月ぶりのリングで初来日。環境の変化にどう対応するかがカギか。
小松は23勝(10KO)5敗6分の戦績。現在は日本フライ級8位。97年にエディタウンゼントジムからデビュー。新人王戦にはエントリーせず地道にキャリアを積み重ね、02年5月までに5つの引分を挟んで13連勝。同年9月に初挑戦でOPBFフライ級タイトルを獲得し、以後丸2年で5度の防衛。ただし、政権末期はトラッシュ中沼[国際]との疑義にまみれた2試合の判定が激しい論議を呼んだ。05年1月、再起即世界挑戦のチャンスを掴み、当時のWBCフライ級王者ポンサクレックに挑むが5RTKOで敗れる。同年6月に再起し、11月にはフェデリコ・カツバイとのOPBF王座決定戦を制するも、翌06年に当時の日本王者・内藤大助[宮田]との王座統一戦に敗れた。07年には再起戦を挟んで吉田健司[笹崎]の日本王座に挑戦するも、吉田のラフプレイに屈して6R負傷判定負けで挑戦失敗と、ここ数年はタイトル戦線からの撤退戦を強いられている。その後も敗戦の1ヵ月後にフィリピン遠征1R負傷ドロー、年が明けた08年は1月の試合では元タイ国王者のOPBFランカーに2度のダウンを喫して敗れ、4月の再起戦もタイ国王者にダウンを喫しながらの2−1判定勝ちと近況は芳しくない。進退を賭けての試合が続く。
1R。小松はアグレッシブに迫るベガにカウンターを合わせてラウンド序盤に主導権確保。しかし中盤からはベガの攻勢が強まり、打ち合いの中でベガの一撃が小松の顎を捉えると、小松はモロに効いた素振りで後退。
2R。ベガの攻勢に対し、小松は終始受身のカウンター狙い。手数とヒット数は互角だが、このラウンドもベガの右が小松の顎を撃ち抜いて、小松は一瞬棒立ち。
3R。小松は必死の迎撃戦。位置取りを意識しつつ、アウトボクシング。ボクシングの理想「打たせずに打つ」を3分間死守して、ボディに手数集めてポイント確保。
4R。小松はクリンチでベガの突進を止めつつ、ボディに左→右のフックで有効打。しかしベガは強引にロープへ詰めてまたも顎に一撃。小松はここから防戦一方となり、優勢を手放してしまう。
5R。このラウンドも小松はスピード差を利してヒット&アウェイのヒット数稼ぎ。終始防戦なのと、ローブロー気味のボディがどこまで評価されるかは気掛かりだが、一応は作戦成功といったところ。
6R。ベガが先制攻撃で顔面にヒット連発。小松は終始ロープ際で圧力を浴びて劣勢だが、徐々に立ち直ってロープ際からカウンター気味に連打を有効打して巻き返す。
7R。クロスレンジ乱打戦。小松が手数、ヒット数共に上回る。ベガは圧力強いがパンチ力乏しく、小松を攻め切れない。
8R。小松はこのラウンドも必死の攻守。クリンチやバックステップなど駆使して懸命の凌ぎ。単発ながらジャブ、ワン・ツーでヒットも稼ぐ。ベガは圧力強いがこのラウンドも決め手なし。
9R。小松は相手の動きを見切ったか、時には前に出つつの積極的な攻撃に。ベガとの打ち合いも際どく制し、このラウンドは明確な優位を得た形。
10R。ベガは強引な圧力もボディへの手数のみ。小松はヒット&アウェイでショートフックを当てまくって一時は優位に。しかし終了ゴング前、またまた顎への被弾でグラついてしまう。
公式採点は堺谷97-94、宮崎97-94、石川96-95の3−0で小松。駒木の採点は「A」96-94「B」98-95で小松優勢。
小松が“奇跡の復活”とも言うべき快勝。打たれ脆くなった自分の負の特性を把握し、アウトボクシングやクリンチワーク中心のファイトスタイルに完全転換。前回は苦し紛れの印象も残ったディフェンシブな試合振りが、今日は随分と頼もしく感じられた。判定勝ちに徹したボクシングは往時の彼の姿からは想像もつかないが、“タフボーイ”は彼の肉体面ではなく精神面を体現するニックネームに変わり始めたということなのだろう。
ベガはスピードに乏しいパワータイプ。一瞬の連打のキレはあったが、狙い撃ちの鋭いタイプではなく、典型的な2桁順位の世界ランカー。