駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第5試合・Lフライ級契約ウェイト(48.0kg)10回戦/△ボブ・ソラーノ[墨国](10R0分35秒負傷判定0−1)武市晃輔[金沢]△

武市は8勝(3KO)1敗の戦績で、現在日本ミニマム級7位。04年に東日本のドリームジムからデビュー、05年にはミニマム級で新人王戦にエントリーし、東日本新人王タイトルを獲得(全日本決勝は実施されず)。06年8月のA級緒戦ではいきなり元OPBF王者・山口真吾[渡嘉敷]に挑戦するが、8R判定負け。その後は長期ブランクを経て西日本へ移籍。今年1月の再起戦はタイ国ランカー相手に1RKO勝ち、続く4月には東洋ランカーのロレン・デル・カスティーリョ[比国]に判定勝ちを収め、ランキング入りを果たしている。
ソラーノは10勝(3KO)10敗と発表された。現在WBCミニマム級22位。信頼出来る記録のみを採り上げてみると、96年にデビュー。2戦目から5連敗を喫するなどデビュー当初は全く無名の存在で、99年から04年まで5年のブランクも経験している。再起後は、現WBC世界Lフライ級王者エドガーソーサと2度の対戦や、ソーサ戦のうち1度を含む3度のメキシコ王座・NABF北米王座挑戦を果たしているが、いずれも獲得失敗。世界ランクに名を連ねているとは言え、目立った実績は認められない。ただし、前回07年10月の初来日時には、神谷優季[ピューマ渡久地]に判定勝ちしており、日本のA級ボクサーとでも互角以上に渡り合える地力は既に証明済みである。
1R。ソラーノは様子見中心。ガードを固めて時折ワン・ツー打ちつつ前へ。武市はジャブ中心に手数を稼ぎつつ、ラウンド終盤にはワン・ツー・スリーなどアグレッシブな連打でポイントアウトか。
2R。武市は大振りを交えつつ左右の3〜4連打。しかしソラーノのワン・ツーを捌き切れず、真っ直ぐ後退する悪癖も。ヒット数で小差リードは守ったが、安定感には少々欠けるか。
3R。ソラーノは愚直にガードを固めてワン・ツー中心。武市はサイドステップを駆使しながら寸での所で躱しては反撃。強振を飛び込みざまに放つ。だがソラーノの圧力も強く、攻勢点の観点では色々な見方も成り立つラウンド。
4R。武市はゲーム「ストリートファイター」の昇竜拳を彷彿とさせる強引なアッパーや連打だが、空転。ステップも切れを欠き、ソラーノの圧力を捌き切れない。ラウンド後半には武市がロープに押し込まれるシーンもあり、徐々に形勢が混沌に。
5R。ソラーノはラウンド序盤から圧力攻勢。だが、距離を詰めた後の攻撃が甘く、武市は命拾いした格好。その武市はまたしても強引なアッパーに加え、ボディフックで手数とヒットを稼いで互角に持ち込む。
6R。武市が冷静さを漸く取り戻し、本来のスピードを活かしたアウトボクシングを展開。左右の単発で先制し、あとは足の速さで主導権を確保し続けた。ソラーノは圧力すらかけられず。
7R。ラウンド前半は武市が防戦気味ながら積極的に応戦してリード。しかし後半に入るとソラーノはラフながらも正攻法の圧力攻め。武市、今度は完全に受身に転じて尻すぼみの格好に。
8R。圧力・手数攻勢のソラーノに対し、後退しつつジャブで迎撃の武市。共に決め手欠き、微妙な内容の攻防戦。ここに来て凡戦ムードが漂い始めた。
9R。武市が絶え間なく動きつつ、カウンター中心のアウトボクシング。ソラーノは手堅いガードで被弾を許さず、愚直な圧力攻めも決定打欠けて微妙。
10R。これまで同様の展開が続く中、偶然のバッティングでソラーノが激しく出血で即ストップ。負傷判定へ。
公式採点は石川97-95(武市支持)、村瀬96-96、野田96-96のマジョリティドロー。駒木の採点は、短時間で優劣無しの最終10Rを10-10で固定し「A」97-94「B」98-96で武市優勢。かなりラフな武市のファイトがジャッジの心証を損ねた形。内容的には武市の負けは無い、という感じ。
武市はガードの固いメキシコ人を攻略できず、焦りからか粗い攻めに終始。それでもアウトボクシングで主導権を確保し、価値は確保したかと思われたが、今日のジャッジはとにかくアウトボクサーに辛い。今日は若さが悪い方向へ出た試合で、これを反省材料にして技術の完成度を高める方向に持っていってもらいたい。