駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

西日本新人王戦決勝(西日本協会主催)

3月に開幕した今年の新人王戦線も、いよいよ佳境の地区決勝。今年は地区対抗戦シリーズで西日本がシード枠の当たり年のため、これが西軍代表決定戦のセミファイナルを兼ねる事になる。
今年も会場には各ジムの首脳・チーフトレーナークラスが大集結。非番のレフェリー・試合役員まで私服で大挙来場し、試合前のリングサイドで歓談する光景は、世界タイトルマッチでもまず見られない光景だ。この西日本決勝が業界内でどれぐらい重要視されているか、よく判るというものである。
とはいえ、今年の会場は、というか新人王戦線そのものが例年に比べるとやや活気に欠けるような印象もあった。関係者やマニアと話していても、新人王戦の話題になれば出て来る言葉は「今年は不作」「後楽園(の全日本決勝が)心配」の2フレーズばかり。実際、いくつかの激戦区を除いては、エントリー人数の減少と前年度上位組&3〜4勝選手の出場回避により、質・量共に例年を下回る規模のトーナメントになってしまったのである。幸いにもその中のいくつかの階級では成長著しい新鋭が登場し、決勝戦に話題を繋ぐ事が出来たのだが、一部の階級では正直な所、西日本タイトルを争う場に相応しくない地力水準の選手の姿も見受けられる。筆者個人の見解としても、今から年末が怖くて仕方がない。過去2年間後楽園のスタンドで見せつけられた光景を、また今年も見せられてしまうのではないか、と。
勿論この問題は、努力精進している出場選手たちに責を負わせる事は出来ない。とはいえ、業界全体に「このままでいいのですか?」と問いかけたい気分でもある。ここしばらく、西日本地区では、期待出来る新人やアマエリートを自主興行に囲い込み、計算づくのやや甘いマッチメイクで“促成栽培”する傾向が強くなって来ている(実際問題として全日本新人王を狙うよりもそちらの方が手っ取り早く確実にランキングを手に入れられるのが始末に悪い所なのだが)。だが、これでは、期待の新鋭を選抜して新人王戦に送り込み、潰し合い、切磋琢磨しながら育成している東日本代表と、層の薄いトーナメントで急造された西日本代表がアウェイの後楽園で戦う事になるわけで、それでは西の選手がまともに対抗出来るはずも無い。
重ねて筆者は業界全ての関係者に問いかけたい。このままでいいのですか? 伝統の東西対抗戦が形式的な“東日本新人王の信任投票的イベント”に成り果てる前に、西日本地区全体の問題として西日本新人王トーナメントの水準向上を採り上げて頂きたいと、切に切に希望する。


いささかネガティブな余談が過ぎたようなので話を今日の試合カードに振り向けよう。今期パウンド・フォー・パウンド候補筆頭の高梨竜平[高砂]が出場するミニマム級決勝は、相手選手の棄権により試合中止に。残り11のカードで注目されるのは、スピード型と強打型での無敗対決となるSフェザー級・吉野典秀×福岡孝太の一戦になるだろうか。両者ともマニア連では評価急上昇中で、勝者は後楽園ホールまで期待が繋げる対戦である。他に、戦前から注目される選手としてはフライ級の中村優一、Sフライの森川真一郎、Sバンタム級の佐藤裕樹といったところ。当然の事ながら、他の面々にも、ノーマークにしていたこちらを恥じ入らせるような奮闘を期待したい。


※この日は西部日本地区の大藤レフェリーが数試合の副審を担当しています。
※新人王戦の地区決勝以上は、出場する両者が4勝(又は3勝2分)以上の場合は5回戦、それ以外の対戦は4回戦で争われます。
※駒木の手元の採点は「A」(10-9マスト)「B」(微差のRは10-10を積極的に採用)を併記します。「B」採点はラウンドマスト法の誤差を測るための試験的なものですので、(特に8回戦以上のスコアは)参考記録程度の認識でお願いします。公式ジャッジの基準は「A」と「B」の中間程度だとお考え下さい。