駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・フライ級契約ウェイト(50.0kg)8回戦/○久田哲也[ハラダ](判定2−1)戎岡淳一[明石]●

久田は10勝(4KO)4敗の戦績。03年デビュー、新人王戦では04年に緒戦で本田猛[尼崎]に敗退、05年度も、西日本準決勝で後の全日本新人王・奈須勇樹[Gツダ→角海老宝石]に同年の西日本新人王戦でも屈指の激闘の末に敗退した。その後は不調の時期もあったが、徐々に復調。6回戦で3勝1敗とジックリとキャリアを積み重ねた後、A級でも07年の3戦では2勝1敗と勝ち越し。08年は遅めの緒戦となった8月の吉田ファンキー[奈良]戦で、粘り強い試合振りで小差判定勝ちを挙げた。今回は実績あるベテランを相手に初の日本ランキングチャレンジ。
戎岡は18勝(8KO)11敗3分の戦績で現在日本Lフライ級11位、WBCミニマム級30位。98年にデビュー、00年に挑んだ新人王戦は西日本決勝で敗退。その後はハードなマッチメイクを重ね、勝ち負けを繰り返す白黒の使い分けが派手な戦績を重ねていたが、05年6月に元世界王者・ピチット・チョー・シリワットを逆転KOで降し、世界ランクを獲得。06年1月には日本タイトルに挑戦するが惜しくもドローに終わり、以後は格下相手に苦戦を重ねてランキングも降下するなど停滞期に入る。07年8月には元世界王者ホセ・アントニオ・アギーレに判定勝ちして漸く再浮上のきっかけを掴み、調整戦を2戦挟んで08年6月にWBC世界ミニマム級王者オーレイドン・シスサナーチャイ[タイ国]と敵地で世界タイトルマッチに挑むが9RKO負け。9月に再起戦で勝利し、今回もノーランカーを迎えての調整試合である。
1R。戎岡が鋭くジャブ、ストレートをガードの上に叩き込んで攻勢点と主導権を確保。しかし明確なヒットは少なく、ラウンド後半からは久田も左ボディ、ジャブ、右ストレートと軽めながらヒットを返して微差の範疇に。
2R。フェイントや捨てパンチを多用したA級上位の戦いに相応しい中身のある攻防。戎岡は手数を出していくが、久田はガード堅く、断続的に右→左→右のフックを有効打、クリーンヒットさせて一気にリードする。
3R。このラウンドも同様の展開だが、戎岡の攻めとボディワークが冴えて来た。久田は際どく戎岡の猛攻をしのぐが受身の時間が長い。フック連打で巻き返すが、採点は微妙。
4R。今日の戎岡はスピード感溢れた動きで絶好調の部類。ジャブ先手で主導権を奪うと、左右のフック中心にヒット、有効打を稼ぐ。久田は後手に回って苦しんだが、終了ゴング直前に有効打を立て続けに3発奪い、猛ラッシュを敢行して一気に挽回。形勢を五分に戻す。
5R。戎岡は前ラウンドのダメージがまだ残ったか、動きのキレが鈍った。久田は攻めあぐみ気味で勿体無い展開になりかけたが、右でヒット稼ぎ、ロープ際のラッシュで攻勢アピール。戎岡も手数は出たがガードに阻まれた。
6R。久田が先手で攻める流れに。戎岡は後手に回りつつも手数を出すが、やはりガードの上。久田が小差優勢の流れの中、ラウンド終盤には打ち合いとなるが、ここでも一進一退の中で久田が巻き返した。
7R。打撃戦模様。戎岡が再び先手を獲り、ジャブやフック合戦でやや優勢。しかし久田は打ち終わり狙いに渋太くヒットを返してほぼ互角に渡り合う。
8R。断続的な打撃戦。際どいタイミングでの打ち合いで久田がワン・ツー決めて優位に立つ。戎岡も戦意高く最後までアグレッシブに強打を放ったが、久田がヒット数のリードを守り切った。
公式判定は大黒77-76、原田77-76(以上、久田支持)、宮崎77-76(戎岡支持)のスプリットで久田。駒木の採点は「A」76-76イーブン「B」79-77久田優勢。
久田が大激戦を制して殊勲の日本ランク奪取! スピードで見劣りする流れの中、ボディワーク中心のディフェンスと精度の高い左を駆使して、幾度となく起こった打ち合いを際どく制して、細かいポイントレースを鼻差で凌ぎ切った。これで昨年に続く年末最終戦での劇的な勝利で客席からは「年末男」の声も飛んだ。6回戦当時からスプリットデシジョンの多い選手で、いつも苦戦している印象もあるのだが、試合内容を精査すれば一戦ごとに地道に実力をつけてきており、努力はウソをつかないという事を体現している選手でもある。勿論、今後はもっと明確な形でラウンドごとの優勢を確保するテクニックや戦い方を覚える事も必要だ。
戎岡は格下相手に痛恨の敗戦。ムラッ気のある選手として知られるが、今回はむしろ絶好調の部類だった。しかし4Rでラッシュを受けて徐々に失速。また、持病とも言えるガードの甘さがヒット数の劣勢に直結する形になってしまった。ラウンド前半で優位を築きながら、後半でそれを手放した場面が多かったのが響いた。