駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・ウェルター級契約ウェイト10回戦/△ダウディ・バハリ(判定1−1)山本大五郎△

バハリはインドネシア出身で25戦全勝(11KO)のキャリアを誇る。現在WBAスーパーライト級9位で、PABA同級王座を4回防衛中。日本で通用し易い言い方をすると、WBCランカーを兼ねる東洋太平洋王者のWBA版といったところか。日本ではPABA王座が公認されていないのでタイトルマッチは出来ないが、なかなか面白い選手を連れてきたものだと思う。
山本は6回戦デビューから9勝(7KO)2敗1分の戦績で現在日本Sウェルター級5位の選手。ただし主戦場は専らウェルター級で、ここ2戦は東南アジアのSライト級ローカル王者orランカーとウェルター級ウェイトで戦う調整試合が続いている。なお前回タイのSライト級王者に勝った時の観戦記はhttp://d.hatena.ne.jp/komagi/20040920#p4を参照。
この試合は両者140パウンド台のウェイトで、ほとんどSライト級の契約ウェイト。これは、Sライト級のウェイトで戦った場合、バハリが負けるとPABA王座が剥奪される事を考慮しての事だろう。
1R。両者中間距離から様子見中心の静かな立ち上がり。ハンドスピードで勝る山本が時折ジャブをヒットさせてゆく。一方のバハリも接近戦に誘い込んで打ち合いの中でヒットを奪い返す場面もあり、ほぼ互角の攻防。有効打数では3−2の少差で山本だったが。
2R。山本が意識的にロングレンジでの戦いに持ち込み、ハンドスピードの差を活かしてペースを掴もうとする。ただし相手の堅守に阻まれ有効打は皆無。バハリは戦績ほどの迫力・スピードに欠ける印象で、むしろ泥仕合の中でインサイドワークを駆使して戦うタイプか。結局このラウンド、互いに有効打はゼロで、ジャッジは印象度勝負。わずかに山本が手数でも上回った感があったが微妙。
3R。このラウンドに入って、バハリが積極的に出始めて主導権がそちらに流れる。山本はこのラウンドもロングレンジからのジャブに活路を見出さんとするが、接近戦に持ち込まれると劣勢が明らか。
4R。バハリは山本が不用意に頭を下げた所へ的確にジャブ、左フックを浴びせてゆく。スピードで勝負出来ないタイプが25連勝出来ているのは、こういう隙を突く所が上手いからだろう。山本も手数は少なくないのだが、放つパンチは寸でのところでブロッキングされてヒットまで行かず、ファウルチップがせいぜいといったところ。
5R。山本が自分の距離を意識したヒット&アウェイで上手くバハリの攻め手を封じ、このラウンドは的確にポイントを奪い切った。ただ、攻めがやや散発的なのが多少気になる。
6R。バハリが序盤から積極的に動いて再び主導権を奪う。山本も手数を出して攻めるが、またしても好守に阻まれて見た目の印象が良くない。
7R。山本の両腕のガードがやや開き気味なのを見抜いたか、バハリがガードを割るようにジャブを放ち、ヒットを奪った所で右フックに繋いで優位に試合を進める。山本の攻めはやはりガードの上か的外れで有効打にならない。
8R。序盤こそ互角だったが、中盤以降、バハリの力で圧す連打に山本が対応出来なくなって来た。
9R。山本はガードが下がり気味で、パンチも更に散発的になって来た。バハリが中間レンジから自在の攻めでヒットを奪う。終盤、山本が体力を振り絞って渾身の連打を放つも全てガードされた。
10R。バハリが手数で勝り、プレッシャーをかけてジェネラルシップをも奪う。山本もラウンド中盤以降は懸命に抵抗したが、やはりパンチの命中度が低い。アグレッシブと主導権争いの劣勢をクリーンヒットでカバーできず、ズルズルとポイントを失った格好。
疑問の残る公式判定はジャッジの名前付きで公開しておこう。上中96-94(山本優勢)、原田95-95、宮崎96-94(バハリ優勢)。山本に恩恵を与える一方で、バハリの無敗レコードにもキズをつけないという芸術的な三者三様の判定。駒木のジャッジは97-93でバハリ。試合後、茫然自失といった感じでうなだれたまま退場していった山本の姿がこの試合の真の勝敗を物語っていた。
山本はこれで規定上はWBAランカーの資格を得た事になるが、こんな過程で手に入れた中量級のランキングなど、来年度のチャンピオンカーニバルの優先挑戦権以外に有効活用する術などあるまい。ただ、己の不甲斐なさは本人が一番分かっているに違いないので、今後は懸命に“名”に恥じない“実”を作り上げて欲しいと願う。
《追記》次戦は、6月に大阪である川嶋×徳山戦の前座で行われる東洋太平洋Sライト級タイトルマッチとのこと。なるほど、冒険ではあるけれども上手いマッチメイクではありますな。