駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・Sバンタム級(54.5kg)契約ウェイト10回戦/●仲宣明(判定0−3)小島英次○

セミファイナルは関西トップクラス選手のサバイバルマッチ。両選手共に、この試合を足掛かりにして世界再挑戦を目指す。
仲はここまで18勝(12KO)1敗2分の成績。デビュー以来、全日本新人王トーナメントをオールKO勝ちで制し、無敗のまま日本バンタム級王座奪取&7回防衛という華々しいキャリアを誇るが、日本王座返上直後の02年秋に交通事故に遭って1年のブランクを経験。復帰2戦目に敵地でジョニー・ブレダルのWBA王座に挑戦するが失敗し、今回はその後タイ人選手との調整試合(観戦記=http://d.hatena.ne.jp/komagi/20040920#p6)を挟んでの再復帰2戦目。現在はWBAバンタム級8位。
一方の小島は11勝(3KO)3敗の戦績。6回戦デビューから5戦目で東洋太平洋Sフライ級王座に就き、7戦目でムニョスのWBA世界Sフライ級王座に挑戦(失敗)するというエリートコースを進んだが、その後は再度のWBA挑戦失敗、更には東洋太平洋王座への3度目の戴冠に失敗するなど、ここしばらくは頭打ちになっている。前回は2階級上のWBCランカーを相手に大苦戦。原田レフェリーの不当レフェリングで4〜5点の恵まれを貰い、更に地元判定のオマケつきで漸く判定勝ちを果たした。現在WBCのSフライ級18位、東洋太平洋同級8位、日本同級3位。
なお、この試合は54.5kg(バンタム級リミット+1kg)の契約ウェイトで行われた。
1R。小島がスピード感溢れるステップを踏みながら、やや変則的なジャブを次々とヒットさせて仲を翻弄。ラウンドを通じて主導権を掴んで放さなかった。仲は様子見の延長線上のようなファイトだったが、3分間でパンチを1発しか当てられないのでは…。
2R。小島はこのラウンドも手数を出してアグレッシブに攻める。仲は前々へ出てプレッシャーを掛けてゆくが狙い過ぎか手が出ない。そうしている内に小島が左フックからメキシコ修行で会得したという右アッパーに繋げるコンビネーションで猛攻。1発目のクリーンヒットで仲の膝がガクンと折れ、2発目では遂にダウン。仲がダウンしたのはブレダル戦以来生涯2度目。
3R。前ラウンドのダメージか、仲の動きは鈍い。対照的にスピードとテクニックが噛み合わさって絶好調の小島はこのラウンドも自在に攻める。遠距離から一気に踏み込んで放つ変則的なタイミングの左フックで2度目のダウンを奪うと、その後も再三クリーンヒットを奪ってゆく。仲の奪った有効打は1発だけで、形勢は大差が付いた。
4R。仲はガード、スピード面で明らかに衰微。小島のスピードに全く対応できず、上下に打ち分けられた左フックを次々と被弾する。
5R。このラウンドも小島の左フックが冴えに冴えた。中盤には3度目のダウンを奪うが、これはパンチと言うよりプッシング。仲は原田レフェリーに激しく抗議したが、これは正当な抗議だろう。ただし、仲の攻撃は散発的に右を2〜3発当てたのみ。内容面では大きく見劣るのは否めない。
6R。仲はこのラウンドになって、漸くプレッシャーに手数が噛み合い始める。しかし小島はスピードを利して自分の距離を掴んで主導権をなかなか手放さない。このラウンドはジャッジ的には少差。
7R。小島のスピードは衰えを知らない。出入りの激しいボクシングで仲を撹乱し、小さいものながら5〜6発のヒットを奪ってジャッジに印象付ける。仲も2〜3発反撃したが、質・量共に物足りない。
8R。仲がこれまでより半歩踏み出すようにして積極的に仕掛ける。小島の防御の甘さは相変わらずで、その隙を突いて一旦は優勢に立つ。しかし終盤、小島が左ストレートを2発ヒットさせて挽回。際どいジャッジを強いられるラウンド。
9R。このラウンドの前半は再び小島の足を使ったボクシングが優勢で、またしても左フックがクリーンヒットすると仲の膝がカクンと折れる。しかし仲も終盤にはプレッシャーを掛けていって巻き返しを見せた。終盤、仲の圧力で小島がスリップすると、原田レフェリーはダウンの判断。今度は小島が猛烈に抗議するが、これも当たり前。せっかく好勝負になって来た所に水を差す、頂けない2度目のレフェリングミスだった。
10R。ここに来て両選手のテンションは最高潮。スピーディーかつ激しい近距離での乱打戦。縺れ合って倒れた際にはエキサイトして睨み合いに。そんな中、主導権を奪ったのは仲で、右フックが小島の低いガードを潜り抜けて顔面を痛打する。が、小島も左フックを武器に最後まで見事に戦い抜いた。
公式判定は96-90、95-91、95-91で三者とも小島支持のジャッジ。駒木の採点では97-89の大差で小島。駒木が小島に振ったラウンドの内には際どいものが2つばかりあり、公式判定ではそれらが仲に流れたようだ。そこまで一方的な試合展開であったし、際どい時は劣勢の方に振り分けたくなる人情も理解は出来る。
それにしても小島の見事な戦い振りには脱帽だ。秘密兵器の右アッパーを学んだメキシコ修行の成果も然る事ながら、今回のウェイトでもスピードが衰えるどころか逆にキレていた所を見ると、懸念されていたSバンタムへの増量も逆にプラスに働いたのだろう。いやはや、駒木も下馬評段階での不見識を詫びなくてはなるまい。ただ、昨年の不振の原因であったディフェンスのお粗末さは今回も顔を覗かせており、これは今後の課題となるだろう。今回は攻撃が最大の防御と成り得たが、一度後手に回らされたら案外脆そうだ。
そして予想外の惨敗でデビュー以来2敗目を喫した仲。こちらはこちらで調子が悪過ぎた。前半戦はアグレッシブさが余りにも足りなかったし、ディフェンスも単調だった。自分のベストパフォーマンスを体が忘れてしまっているかのような戦い振りで、どうやら深刻なスランプにハマってしまったような感がある。今後はとりあえず東洋太平洋王座を目指すなどワン・クッション置いての建て直しが必要になって来るだろう。
 あと、今回も遺憾なく心身の衰えを曝け出してくれた原田レフェリー。「辞めろ」などと下品な罵声は浴びせないが、ここは後進に道を譲る意味でそろそろ勇退なさっては如何かと進言申し上げたい。