駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・東洋太平洋ミニマム級タイトルマッチ12回戦/○《王者》ロデル・マヨール(判定3−0)興梠貴之《挑戦者・同級5位》●

セミ前だというのに“現WBC世界王者より強いOPBF王者”ロデル・マヨール登場。間に1試合挟んで、マヨールの強さをボヤかすプロモーター側の作戦だったりして(笑)。
王者でWBC世界ミニマム級2位のマヨールは00年7月のデビュー以来20連勝(16KO)の戦績。4戦目でフィリピン王者となり、それ以来、東南アジアの国内王者級選手を中心にキャリアを重ね、03年末に大中元気を1RTKOで破ってOPBF王者に。今回が2度目の防衛戦となる。
対する挑戦者・興梠は13勝(4KO)4敗3分の戦績。元日本Lフライ級王者(2度防衛)の経歴があるが、近況は同格〜格下相手にKO負け・引き分けと冴えないのが気掛かり。
1R。マヨールは立ち上がりからワン・ツー主体で先手、先手。時にはサウスポー型のワン・ツーや、いきなりアッパーから入る仕掛けなども交え、変幻自在の攻めで興梠を手玉に取る。その興梠も当然手は出しているが、王者はディフェンスも達者で殆どのパンチは空砲に終わる。興梠はクリーンヒットを避けるのが精一杯といったところ。
2R。マヨール、このラウンドもワン・ツー主体の攻め。ボディブローを絡めて主導権を掌握する。興梠もワン・ツー、アッパーで応戦するも、全く当たらない。終盤にはマヨールの右ストレートがクリーンヒット。
3R。マヨールは更にアグレッシブに。抜群のステップワークで興梠のワン・ツーをスカしてボディブロー、左フックを当ててゆく。終盤には、また右ストレートがクリーンヒット。
4R。マヨールは興梠のガードの上がり下がりを見極めて、顔面へボディへとヒットを重ねてゆく。興梠は次第にマヨールの攻めに対応し切れなくなり、次々と有効打を許してしまう。興梠も不完全ながらカウンターを合わせる場面もあったが、自分から動いてヒットを奪えなくては……。
5R。このラウンドも顔面へのジャブとボディブローで細かいヒットを稼ぐマヨール。興梠のパンチは殆どが空を切り、終盤には果敢に仕掛けていくが逆に左フックを合わされて八方塞がり。
6R。相変わらずマヨールが先手、先手で攻める。興梠は明らかに守勢に立たされて苦しい。後半、カウンター合戦でも打ち負けると、その後はズルズルとボディを5発、6発と打たれてしまう。
7R。王者のペースが続く。興梠はディフェンスを固めてみるが、マヨールの左に対応出来ず。中盤、コーナーに詰められてボディを打たれると明らかに劣勢に陥る。
8R。ボディを打ってガードを下げさせておいて顔面……というテキスト通りの攻めでマヨールが優勢。ジャブを次々と当てて手数・ヒット数を稼いでおいて、ディフェンスも怠らず。
9R。マヨールは明らかに判定勝負を意識した戦い振りだが、隙を見て強打も放つしたたかさも垣間見せる。左アッパーをクリーンヒットさせると、直後にワン・ツー気味の左右連打で興梠をマットにひっくり返してダウンを奪う。興梠のダメージは浅く、このラウンドを何とか凌ぎきった。
10R。ガードが緩くなり、動きもやや鈍った興梠を相手に、マヨールは余裕すら感じさせるマイペースの攻め。細かいパンチ中心の攻めかと思わせておいて、一撃必殺級のアッパーも突き上げてみる(不発)。
11R。開始直後、ジャブを3発ヒットさせた興梠だが、すぐにマヨールが主導権を引き戻す。ボディ中心のいやらしい攻めを見せた後、右フックをクリーンヒットさせて形勢逆転。終盤、興梠は果敢に打撃戦を挑むが、返り討ちに遭って危ない場面に陥る。
12R。中間距離で真向勝負を挑む興梠だが、全てにおいて数段上に立ったマヨールの独壇場に。ジャッジを意識したヒット数狙いのワン・ツーが次々とヒットし、興梠は全く歯が立たなかった。
公式判定は主審(米国)、ジャッジ(NZ、日本)の3者とも120-107のフルマークでマヨール。ジャッジの身内贔屓採点が半ば前提となっているOPBF戦だが、王者の強さはジャッジの戦意すら奪ってしまったか。駒木の採点でも120-107のフルマークでマヨール優勢となっている。
連勝記録を21に伸ばして3度目の防衛を果たしたマヨールだが、これだけのパフォーマンスをもってしても絶好調時の動きには及ばないらしい。確かに今回は早い段階からリスクを避けて判定狙いの試合振りに切り替えた節があり、「今日の相手に体を消耗させる必要は無い」といったところなのかも知れない。
敗れた興梠は「今日は相手が悪すぎた」の一言に尽きるだろう。試合後、「日本タイトルマッチが組まれるなら続けるが」との条件付きながら引退を表明した。