駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第5試合・Lフライ級10回戦/○中島健(判定3−0)アルマン・デラクルス●

この試合の直前まで日本ランカーだった中島が、WBCミニマム級インター王者で世界8位のデラクルスを迎えてのチャレンジマッチ。
ラクルスは17勝(7KO)5敗1分の戦績でWBCミニマム級インター王者&世界8位。昨秋にはOPBFランカーの長尾俊輔を223秒で3ダウンを奪って粉砕するなど、この階級らしからぬ強打を印象付けた。
一方の中島はアマチュアで70戦以上のキャリアを積んでプロデビューし、12勝(8KO)2敗の戦績。2敗は4年前のロデル・マヨール戦と、昨年のタイ遠征でのものと、極めてキズの軽いキャリアを重ねて来てはいるが、日本では昨年以来噛ませ犬に大苦戦を強いられる試合が相次ぎ(昨年末の試合=http://d.hatena.ne.jp/komagi/20041213#p7)、そのせいもあってか入れ替え戦も経ずに日本・東洋ランクから滑ってしまった。この試合で名誉挽回を期す。
1R。中島がワン・ツー主体に攻めるが、デラクルスの異様に低いダッキングに的が絞れず苦戦。不完全なヒットで手数は稼ぐが、左ストレートをクリーンヒットされてジャッジは微妙に。
2R。開始直後からデラクルスが圧力をかけていって豪快なボディブロー。左フックも有効打となって、このラウンドの主導権を掌握。中島はデラクルスの強引なクリンチとダッキングに阻まれてヒットがなかなか奪えない。
3R。中島、このラウンドは先手、先手でペースを掴んで不完全ながらヒットを重ねてゆく。デラクルスの左ストレートは依然脅威でクリーンヒットもあったが、このラウンドは手数が少なすぎた。
4R。デラクルスは不可解なほど消極的で、中島の攻めをダッキングするばかり。これに乗じて中島は命中率こそ低いが細かくヒットを奪っていって、左フックの有効打を浴びせていった。
5R。ラウンド前半は中島が前のラウンドと同様に攻勢だったが、デラクルスはボディブローで反撃すると、パワフルなワン・ツー連打で強引に主導権を奪い返す。デラクルスの攻めに明確なヒットは少なく、ジャッジはこれも微妙。
6R。デラクルスの攻めは大振りで粗い。中島はこれを見切って、ジャブ・ボディブローをヒットさせて優位に立つ。デラクルスは相変わらずのクリンチ・ダッキング一辺倒。まるで噛ませのタイ人のようだ。
7R。デラクルスの動きを見切って、中島がジャブ、ストレートで手数を浴びせてアグレッシブさをアピールする。デラクルスの攻めはとにかく大振りが多い。こんなパンチでは当たる方がおかしい。
8R。デラクルスの低い姿勢のダッキングに照準を合わせて、中島がワン・ツーを打ち込んでゆく。デラクルスも強烈なワン・ツーをヒットさせたが、大振りは相変わらずで後が続かない。
9R。デラクルスがセコンドの「レバー! レバー!」という指示に応えて肝臓打ちを連発。中島はこれに効かされながらも顔面にジャブ、ワン・ツーを浴びせていって肉薄する。
10R。序盤、デラクルスの右がクリーンヒット。これで主導権が傾くか……と思いきや、中盤以降は中島がアグレッシブに攻めて細かくヒットを奪い返して逆に優勢。
公式判定は98-92、97-93、96-94で三者とも中島支持。駒木の採点でも96-94で中島優勢。6点差のジャッジは「地元判定転換特約付き採点」の疑いが濃いが、内容的には明白な判定勝ちと言って差し支えないだろう。
ただ、試合内容的には中島の健闘よりもデラクルスの不甲斐なさが目立った内容で、この辺りは階級の壁があったのかも知れない。もっとも、中島も昨年末の体たらくでは早々にKO負けを喫していた可能性が大で、そういう意味では今日は中島も彼なりに好調の部類だったのだろう。業界の噂を聞いていると、どうやら彼にはジムチャンプ的な側面があるようで、このアマ・エリートにとっての最大の敵は己自身なのかもしれない。
なお、この試合後にデラクルスはインター王座を返上(剥奪?)し、最新のWBCランクでは26位に後退。逆に中島はWBCLフライ級18位に登場し、早期の日本ランク復帰が有望となっている。