駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・フェザー級契約ウェイト(128パウンド)6回戦/○粟生隆寛[帝拳](1R2分54秒KO)文在春[韓国]●

高校時代アマチュアで76勝(27KO・RSC)3敗の成績で史上初の“高校6冠”を達成して堂々のプロ転向を果たした粟生は、03年9月のプロデビュー以来、二線級の日本人選手やアジア国内ランカーなど相手を選びつつも勝ち星を積み上げていって現在8勝(5KO)無敗。今年2月には空席に滑り込む形で日本ランク入りも果たし、現在も日本フェザー級9位を保持している。今年7月のプロ8戦目では、“ランカー予備軍”級選手の宮田芳憲と対戦し、ベテラン選手の老獪な試合運びに苦戦を強いられつつも価値のある中差判定勝ち。ここまで良い意味で身の程相応のマッチメイクで着実に経験を積んで、デビュー2周年の節目を迎えた。
一方の文は、韓国Sバンタム級2位にランクされる選手で現在5勝(3KO)無敗。昨年度の韓国新人王タイトルを保持しているとのことだが、興行すらままならない現在の韓国ボクシング界で、これがどれほどの勝ちがあるのかは微妙な所だろう。
1R。文は開始早々アグレッシブに仕掛けてゆき、対サウスポーのセオリーである右ストレート中心の攻撃。ハンドスピードや威力などは日本の6回戦上位〜8回戦級といったところだが、上体が泳ぎ気味で見栄えも悪く、やや迫力不足か。粟生はしばらく様子見をしていたが、間もなくワン・ツー・フックを基本とする3〜4連打のコンビネーションを続け様に放って有効打を重ねると、フック気味の左ストレートをクリーンヒットさせて1回目のノックダウン。文はカウント9で立ち上がると決死の覚悟で接近戦を挑み、左右のフックが交錯する激しい打撃戦に持ち込む。粟生はここでも優勢に事を運んでいたが、不用意に足が揃ったところへフックを浴びてフラッシュダウンを喫する不覚も。だが、その後は強引にフック連打をお返ししてダメージを蓄積させると、文は足元をフラつかせて2度目のダウン。ロープを頼りに立ち上がったが、セコンドからタオルが投入されてKO決着となった。
日韓ホープ対決は、階級のアドバンテージもあった日本代表・粟生の完勝に終わった。序盤から幾度となく見せた回転力のあるコンビネーションはなかなか見事なモノで、現状でも日本ランク中〜上位クラスの攻撃力はあるだろう。なるほど、これは帝拳ジムならずとも大事に育てたくなる好素材に違いない。ただ、今回の試合ではディフェンス面の技量を測るには材料が乏しく、総合的な力量の把握をするには至らなかった。よく“同期”の亀田興毅と並べて語られる選手だが、見たところファイトスタイルも性格面も明らかに亀田とは異なるタイプのようで、単純な両者の力量比較は簡単に出来そうに無い。まぁ階級も4つ違う事だし、今は回答を急ぐ時ではあるまい。