駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・Sバンタム級10回戦/○三谷将之[高砂](判定3−0)ハイメ・オルティス[墨国]●

日本バンタム級10位の三谷はここまで14勝(7KO)1敗の戦績。新人王戦には目もくれず、デビュー以来10連勝をマークするなど派手な戦績が光る。A級昇格後はタイ人との試合が目立つが、04年10月には世界ランカーのホセ・アンヘル・ベランサに挑むチャレンジマッチも経験している(地元判定の謗りを受けつつ、98-90、95-93、95-94の3−0判定勝ち)。今回は昨年6月以来、故障部位を手術してから最初の試合だが、果敢に2度目の世界ランカー戦に挑む。
対するハイメ・オルティスは12勝(7KO)9敗の戦績。WBCバンタム級11位で、同級のメキシコ王者でもある。02年秋には中米ラテン王座に挑戦するも、あのビクトル・ラバナレスに12R判定で敗れている。地元メキシコ以外で試合をするのは今日が初めて。
1R。三谷は持ち前のハンドスピードを活かしてジャブ・ワン・ツーを細かくヒットさせてゆく。一方のオルティスもなかなかのハンドスピードで、やや大振り強打が目立つものの、終盤には速い3〜4連打で見せ場を作った。
2R。ジャブ・ワン・ツーの三谷、大振りのオルティスと、両者対照的な動き。三谷が手数を重ね、オルティスのディフェンスパターンを読み切ってヒット数を稼ぐ。しかしオルティスもパワフルな一撃をお見舞いして少差。
3R。三谷のスピード感溢れる攻撃を、オルティスダッキング、スウェーなどで中盤まで完封。逆にフックから鋭いジャブでクリーンヒットを奪う。三谷もラウンド終盤になって細かくヒットを集めて少差に持ち込んだが……。
4R。このラウンド、再び三谷の細かいパンチが好調。しかしオルティスが強打を連発するとこれが有効打になってしまう。だが三谷もジャブで更に有効打を重ねて接戦に持ち込んだ。
5R。オルティスの力感あるパンチを次々と繰り出して手数を重ね、主導権をキープ。三谷も手の速さ活かしてヒット奪うが、不発多くて決め手無し。大差は開かなかったが、三谷の苦戦が続く。
6R。オルティスが三谷の手数を捌きつつ、要所で右フックを2発有効打とする。三谷もラウンド中盤以降、タイミング合わせて反撃も、ゴング寸前にオルティスのアッパーが2発炸裂。
7R。三谷のアグレッシブな手数攻めを、オルティスはパワーとハンドスピードの融合したパンチで受けて立つ。三谷が右ストレートをクリーンヒットして見せ場を作るが、オルティスはヒット数でリードした上に、またもゴング寸前にクリーンヒットを奪って明確な差を作る。
8R。オルティスは、このラウンドも強烈な左フックをガンガン放つ。不発弾も多いが、1発のヒットが実に印象的。しかし三谷もこのラウンドは手数勝ちし、4連打の細かいヒットもあって互角の展開に持ち込んだ。
9R。オルティスが距離を詰めてフック中心の連打。三谷はペースを奪われて次々と被弾し苦戦。ジャブ、ストレートで必死に反撃するも、非力さが目に付いて逆転するだけのインパクトをアピールできない。
10R。このラウンドも序盤はオルティスペースで推移。しかし中盤、三谷の右ストレートがノーモーション気味にクリーンヒットすると、オルティスは完全に効かされてフラフラ。必死にクリンチで逃げ、時間を潰す。三谷も必死に追い込みをかけたが、倒すには至らず試合終了となった。
最終ラウンドで三谷があわやKO勝利の場面を作ったものの、他のラウンドは互角かオルティス優勢のラウンドばかり。地元判定の恩恵があってもドローがやっとかと思いきや、何と公式判定は安田97-93、野田97-94、北村96-94とユナニマス・デジションで三谷の勝ちとなって唖然、愕然。駒木の採点では97-93で逆にオルティス優勢で、会場にいた他のマニア諸氏の採点もこれに似たり寄ったりだったと付記しておく。
1人ないし2人のジャッジが偏った採点をする事は(恥ずかしながら)珍しくない西日本地区でも、3人まとめて地元判定というのは殆ど見た事が無い。恥も外聞もプライドも捨て去った情けない事態である。もしこれが地元判定じゃなく、公正な採点に基づくものだと仰るのならば、どうかオルティスの的を撃った強打と三谷のガードの上へのジャブが等価で扱われた理由を駒木でも納得出来るように説明して頂きたい。
さて、一昨年のベランサ戦に続いてジャッジの温情で記録上の勝ち星をスコアした三谷。ハンドスピードは流石だが、世界ランカーが相手になると非力さの方が目立ってしまうようだ。今日の勝利で浮かれているようでは、早晩手痛いしっぺ返しを喰らう事になるだろう。WBC王者・長谷川穂積に加えて、世界王者クラスの日本、東洋王者を抱えたバンタム級戦線、彼の前には非常に厳しい前途が待ち構えている。