駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・Sフェザー級8回戦/●三浦誉士[金沢](判定0−3)エカウィット・シスソーウォー[タイ国]○

三浦は7勝(4KO)1敗1分の戦績。6回戦デビューから順調にキャリアを積み重ね、03年秋に武本在樹[千里馬神戸]に敗れた他は、元日本Sフェザー級王者・キンジ天野を破るなど重厚な成績を上げて来たが、交通事故により1年のブランクを余儀なくされた。今回は11月にタイ人噛ませ犬を難なく降して以来の復帰2戦目。
対するエカウィットはムエタイ出身で3勝(1KO)3敗の選手。戦績だけ聞くと、どうしようもない噛ませ犬にしか思えないが、実は昨年7月の初来日時には、室井啓宏[ワタナベ]を相手に80-75、79-74、79-75の大差判定で勝利を収めている。果たして金沢ジム側はこの“正体”を把握して招聘したのだろうか……?
1R。果たして、エカウィットは真剣勝負モード。本格的な構えからガードを固め、そこから左のダブルや右ストレートなど重いパンチが有効打となる。三浦もジャブを中心に反撃するが、攻撃の質・量共に見劣る。
2R。エカウィットの左アッパー、右ストレート、左右のフックが次々とヒット。ディフェンスも達者で、三浦はジャブから当てることすらままならない。
3R。三浦、リードジャブからボディへ繋げてヒットを奪うが、エカウィットもラウンド中盤以降、上下のフック、そしてジャブの高速連打で逆襲。ほぼ互角の手数だが、強打のインパクトに格差がある。
4R。三浦がリードジャブで漸くリズムを掴むと、相打ちながら優勢な戦いぶり。しかしエカウィットの戦意は極めて高く、ゴング前にワン・ツーをクリーンヒットさせて三浦からダウンを奪う。
5R。三浦、このラウンドもジャブを起点に主導権を模索するが、エカウィットの強打が次々と放たれる。エカウィットも精度はそれ程でもないが、パワーの差が明らかで三浦の攻撃は見劣り否めず。
6R。エカウィットの左右フック、左の上下へ打ち分けたダブルが再三ハードヒット。まるで世界ランカーのような戦い振り。三浦も懸命にジャブ、ストレートで反撃するが明らかに苦戦。
7R。中間距離での打撃戦。三浦がカウンター合戦で相打ちになりながらも打ち勝つシーンが目立つ。エカウィットの重いフックは不発気味で、ようやく明確に三浦がラウンドを奪った。
8R。エカウィットが自分の距離を見出して、的確な左フックを上下に散らしてゆく。左ボディのクリーンヒットは、まるでどちらがタイ人か分からぬ光景で、エカウィットが圧倒した最終ラウンドだった。
公式判定は79-72、78-73、76-75の3−0でエカウィット。1点差のジャッジはイリーガルに近い地元判定だが、それでもこれが限界といった感じ。駒木の採点は79-72で勿論エカウィット。
エカウィットはムエタイ兼業とは思えぬ本格的な国際式スタイルで、攻守に渡って重厚な技術を見せつけた。世界下位ランカーぐらいの実力はあると思われ、何故この選手が噛ませ犬的な呼ばれ方をしているのか理解出来ない。今後は噛ませ犬として呼んでもらえるはずもなく、地域王者か世界ランカーにでもならない限りはこれが見納めという事になるだろう。色々な意味で凄い逸材であった。
敗れた三浦は戦いながら「話が違う」と思っていたのではないか。大ケガからの復帰2戦目としては、率直に言ってかなり荷が重い相手との試合になってしまった。せめてこれで勝負勘を少しでも取り戻してくれると良いが……。