駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

SEIKEN5 ゴールデンエッグ 嗚呼、デビュー戦

初見参となる阿倍野区民ホール・大ホール。いわゆるシアター型会場で、舞台の上に背の低いリング、その周りに特設のリングサイド席を置いて、あとは固定の観客席でまかなうスタイル。キャパはIMPホール程度で、今回は客席の大部分となる固定座席全てを3000円の自由席とする大盤振る舞い。こういうサービスは大歓迎だ。


さて、今日は正拳ジム主催の企画モノ興行第5弾である。ジム対抗戦やリベンジ・引分再戦に特化した興行など、マッチメイクに趣向を凝らした“SEIKEN”シリーズだが、今回はゴールデンエッグ=金の卵、つまり当日デビューのルーキーばかりを集めた7試合の興行。さすがに出場14人全員をデビュー戦で揃えるのは無理だったが、それでも11人の“金の卵”たちを集めてフレッシュな興行となった。たまにはこういう趣向も面白い。
ただ、一般層つまりボクシング観戦ビギナーを取り込むのが狙いの“SEIKEN”シリーズとしては、今回のこの企画は如何なものかとも思う。確かにグリーンボーイたちの試合は、噛ませ犬や地元判定といったボクシング界の暗部とは縁が薄く、平等な条件の中で熱い気持ちがぶつかり合って白熱した“大当たり”の試合も見受けられる。だが本来、ボクシングの面白さが観客に伝わるのは、やはり戦意も技術も兼ね備えたA級トップ選手同士の真剣勝負であるはずだ。観客へのケアどころか自分の事だけで精一杯なグリーンボーイ達にボクシングファンの開拓を担わせるのは、やや無理のある話ではないだろうか。
幸い、今回の興行では“当たり”と分類してもよい試合が多く、観客の満足度も比較的高かったと思われる。だが、これがもしルーキーゆえの至らない面ばかりを曝け出す試合が相次いでいたとすれば(実際にそういう興行もまま見受けられる)、せっかく集めた観戦ビギナーたちを失望させ「所詮、ボクシングなんてこんなもの」という誤った認識を植え付けるだけに終わってしまうだろう。やはりボクシングを知らない人たちを相手にする時こそ、出来うる限り最高水準のマッチメイクを最低1つは用意するべきだと考えるのだが、如何なものだろうか。
あと、正拳ジム興行と言えば、“ショーアップ要員”の外国人女性MCやラウンドガールが御馴染みとなっている。経済的な制約も多い中、よく頑張っているなぁというのが第一感だが、これらにしても、そろそろ“よりよい使い方”を考える時期に来ているのではないだろうか。率直に言って、女性MCのアナウンスは何を言ってるのか聞き取れない事が多いし、演出上の効果が劇的に上がっているとは思えない。PRIDEの真似をして巻き舌でコールしろとは言わないが(笑)、ライティングやBGM、入場通路や花道といった様々な舞台装置と組み合わせる中で、どうすれば観客にとってキャッチーな入退場シーンとなるのかをもっと研究してもらいたいと思う。方向性は間違っていないのだから、あとはそこを邁進する距離と速度だけである。