駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・Sフェザー級契約ウェイト(128パウンド)6回戦/○粟生隆寛[帝拳](2R2分14秒KO)オズワルド・ファレス[墨国]●

第4試合に早くも帝拳ジムの誇るホープ粟生隆寛が登場。高校で6つのタイトルを獲得し、鳴り物入りでプロデビュー。以来、10勝(6KO)無敗の戦績を残し、現在は日本フェザー級4位、WBCの世界ランクも23位まで上がって来ている。デビュー当時から「西の亀田・東の粟生」などと並び賞されているが、その亀田興毅とは、階級もファイトスタイルも、そして地力下位ながら一発KO負けの危険性がある相手とばかり対戦して築き上げたキャリアの中身も、その全てがまるで違う“似て非なる存在”である。今回も戦意の高い二線級のメキシカンを相手に招聘し、調整戦と言うにはややハードな6回戦に臨む。
対戦相手のオズワルド・ファレスは10勝(8KO)3敗の戦績。アマチュア出身のエリートという触れ込みで、なるほど途中のキャリアでは楽な相手を中心に9連勝を含む10勝をマークしている。しかしここ2戦は手痛い連続TKO負けを喫しており、未だ国内タイトル未満の段階で足踏みをしてるようである。
1R。ファレスはやや大振りながらも手数豊富で高い戦意をアピール。だが粟生は、これら一連の攻撃を、プロ仕様のステップワークとガードで上手く捌いてゆく。時折、相手の動きを読み違えて軽く被弾する場面が気になるが、まずは無難な立ち上がり。攻めてはサウスポースタイルから的確にジャブを起点にした手数を浴びせ、右フックや左ストレートでクリーンヒットを奪って優勢を確保する。
2R。ファレスは左フック、右アッパーを多用し、豊富な手数で荒っぽく攻めて来るが、粟生はこれらをキッチリと見切って早くも余裕の構え。逆に左ストレートで攻め立て、最後はファレスがストレートを空振りして前のめりになった所へジャストタイミングの左ストレート一閃。自分のつけた勢いもろとも弾き返されたファレスはたまらず仰向けに倒された。ダメージは深刻でなく、立ち上がって戦意の高さをアピールしたものの、宮崎レフェリーの試合早期終了を前提とするような高速10カウントの前にファイティングポーズをとる暇がなく、何とも間抜けな試合の幕切れとなった。タイ人相手の冗長な試合の際には映える宮崎レフェリーの決め打ちレフェリングだが、この試合では大きな節介以外の何物でもなかった。
粟生が初の関西遠征を2RKO勝ちで飾って、プロデビュー以来の連勝を11に伸ばした。攻守に渡る軽快な動きはアマチュア・エリートというよりもプロのテクニシャンのそれで、いかにもカネの取れる華のある選手という印象だ。ただ、ディフェンスで一瞬ガードが甘くなるシーンがあるし、攻撃でもスピード・パワーのいずれもが微妙に物足りない。世界を狙う存在になるには、持ち前の華やかさの中に芯の強さというか、重厚さが欲しい。