駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・ライト級契約ウェイト(58kg)6回戦/●クラーブデン・キャットグリリーン[タイ国](判定0−3)武本在樹[千里馬神戸]○

休憩とチャーリー・コーセイ*1によるワンマンライブを挟んでのセミファイナル。だが、この褒める所だらけの興行の中で、唯一落第点なのがこの試合。これだけの豪華メンバーを呼んでおいて、どうしてセミに淡々とした試合運びで定評のある武本兄と噛ませタイ人の試合なのだろう? セミでやるなら粟生との日本ランカー対決にするべきだし、それが叶わないならバレロの前か玉越の前あたりに持って来るべきである。普段はこういうケースばかりだから目立たないが、こういったジム側の都合ばかり考えたマッチメイクがボクシング人気を低迷させている諸悪の根源なのだ。
さて、気を取り直して観戦記に移ろう。グラーブデンは24勝(6KO)8敗の戦績。かつてはWBO東洋太平洋王座に就き、世界ランク3位にまで登りつめたが、しかしこれは2階級下のバンタム級でのお話。今ではタイ国フェザー級1位という肩書きになってしまっている。
対する武本は17勝(11KO)5敗1分の戦績で、現在日本フェザー級3位を保持している。04年4月にサオヒン・シリタイコンドーを、かなり疑問の残る判定結果ながらスプリットデジションで降してWBAの世界ランクを獲得。これをチャンピオンカーニバルの指名挑戦権に活用して、05年4月には榎洋之[角海老宝石]が保持していた日本タイトルに挑戦するも、眼底骨折を負わされた上に0−3判定負けを喫してキャリアアップ計画は頓挫した。今回は負傷から立ち直った昨年11/3以来の復帰2戦目となる。
1R。“噛ませモード”で消極的なグラーブデンに対し、武本は相変わらず一発狙い中心の攻めも不発。申し訳程度の手数でジェネラルシップのみをアピール。
2R。武本、右アッパーをヒットするなど攻勢続くが、やはり淡々とした展開に終始。グラーブデンは軽くジャブを合わせる程度の攻めは見せるが迫力全く無し。
3R。両者精度の悪いワン・ツー。互いに互いの攻撃をガードとパーリングで無効化しあってほぼ互角のラウンド。
4R。武本、ラウンド序盤に右フックを喰らってしまうなど精彩を欠く動きも、その後立ち直って左フック、右ストレート、右ボディアッパーなどでヒットを奪い巻き返す。
5R。序盤に左のダブルや右アッパーで見せ場を作った武本だが、後半にはグラーブデンのしつこい食い下がりに遭って、なし崩しに被弾する場面も目立つ。結局詰めきれずに凡戦モードが色濃くなる。
6R。武本はジャブからフック、アッパーに繋げてKO狙うも、グラーブデンに軽くあしらわれる始末。体を入れ替えられてロープ際でラッシュを受けるシーンまであって、武本のメリハリの無い攻めと締まりの無い守りで大凡戦のまま試合は終了した。試合終了のゴングで起こった溜息には如何なる意味合いが含まれていただろうか。
公式判定は3者いずれも60-54のフルマークで武本を支持。駒木の採点も60-54武本だが、この試合は採点結果で内容を語るべきものではない。
昨秋の復帰戦でも不甲斐無い所ばかりだった武本だが、今回もロートルのタイ人を仕留め切れずに大凡戦の立役者となってしまった。以前から彼のファイトは「淡々とした展開からサドン・インパクトでKO勝利」というものだったが、ここ2戦は全くKOを予感させるシーンも無く、残念ながら「単に試合のつまらない選手」になってしまっている。全国のボクシング関係者が詰め掛けたこの日にこの試合では、再度の日本タイトル挑戦は遠く先の話となってしまうだろう。ともかくも、一刻も早く以前の武本の姿に戻って欲しい。

*1:30代以上の男子は絶対知ってる、アニメ『ルパン3世』のエンディングを唄った人。♪ワルサーP38〜