駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・ライト級10回戦/○高山剛志[ハラダ](判定3−0)鈴木哲哉[Gツダ]●

セミファイナルは、地力・試合内容共に近況良化著しい高山剛志が10回戦で腕試し。
高山は10勝(3KO)5敗の戦績。03年度新人王戦では、Sフェザー級で西日本準優勝。その後はB級〜A級で勝ったり負けたりを繰り返していたが、昨年には04年度Sライト級新人王の磯道鉄平[ウォズ]を大いに苦しめる健闘を見せるなど、素質が開花。現在のポジションは日本ランク入り目前といったところ。
対する鈴木は7勝(4KO)6敗1分の戦績。こちらも6〜8回戦で勝ったり負けたりを繰り返しているが、昨年は日本中・上位ランカー相手に玉砕の2連敗。一流選手の強さを体感させられた1年であった。
1R。高山はちょっとした振る舞いにも既にランカー級の余裕と風格が滲み出ている。人間、よくぞ短期間でここまで変われるものだと感慨深い。鈴木がフック中心にアグレッシブに攻め込むが、高山はこれを落ち着いて捌いて自分のタイミングを探り、的確に左フックのダブルやショート連打を次々と決めてゆく。ほぼ唯一の難点はガードが低く、これを補完するボディワークが不足しているところで、このラウンドも3発ほどの被弾。
2R。高山はフェイント巧みにワン・ツー、左フック、左右のアッパー、そしてこれらのパンチを繋げたコンビネーションで自在の攻めを見せ、鈴木を完全に子ども扱い。その鈴木は絶えずフック中心の攻めでアグレッシブだが、高山に余裕を持って捌かれてしまっている。
3R。高山のワンサイドゲーム。鈴木の攻撃をボディワークとクリンチで完封し、逆にワン・ツーや上下左右のフックで攻め立てる。ジャッジの採点4要素全てにおいて完全に優勢。
4R。このラウンドも高山のパーフェクトゲーム。鈴木が不用意に頭から突込み気味に攻撃してくるのを楽々捌いては、ワン・ツー、アッパーで手堅く手数とヒット数を稼いでゆく。
5R。このラウンドも高山がワン・ツー、フック、アッパーを的確自在に放ってポイントアウト。鈴木は大振り過ぎるオーバーハンドフックなど粗さが目立つ。
6R。高山はクリンチワークを駆使して鈴木の手数までも押さえ込んでしまう。そうしておいて左右のボディフック、そしてワン・ツーでヒットを重ねて大差優勢。KOを予感させるシーンこそ無いが、実力差は明らかである。
7R。高山はこのラウンドもほぼパーフェクトにまとめる。ワン・ツーを効かせておいて、カウンター気味に右→左→右のショート3発を打ち込んでノックダウン。その直後、高山はガードの空いたアゴに右をクリーンヒットされて一瞬ヒヤリとさせるが、大事には至らず。
8R。高山が自分のペースでワン・ツー、ショートアッパーをガードの上から隙間から打ち込みヒット数、手数で圧倒。鈴木は為す術無くお手上げの状況。
9R。高山は自信たっぷりの動きで自在の攻守。これまでのVTRを上映するようにワン・ツー、フック、アッパーを次々と決めてゆく。
10R。鈴木は一縷の望みを託してアグレッシブに立ち向かうが、これもラウンド中盤には体力切れで失速。高山は左のジャブとアッパーで追撃し、更にはワン・ツーの手数攻めで磐石の構え。
公式判定は三者とも100-89のフルマークで高山を支持。駒木の採点でも100-89のフルマークで高山。
高山、この日も典型的なA級ノーランカーの鈴木を相手に攻守に渡って横綱相撲。堅実なディフェンスで鈴木のアグレッシブながら単調な攻撃を完封し、その一方で巧みなフェイントを織り交ぜつつコンビネーションブロー中心の的確かつ多彩な打撃でヒット、有効打の山を築いた。7Rには明確な形のダウンも奪い、堂々たる勝利。地力的には既に日本ランカー級だが、更に上を目指すならば、格下相手なら中盤までにKO出来るだけの決定力と、それを実現させるためのキラーショットの開発が望まれる。
敗れた鈴木はこれで3連敗。乱暴な突進やフック連打ばかりの単調な攻めで、これでは8回戦では勝率が上がらないのも肯ける。