駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第3試合・Sバンタム級契約ウェイト(54kg)8回戦/○山口賢一[大阪帝拳](判定3−0)熟山竜一[JM加古川]●

山口は7勝(1KO)1敗2分の戦績。唯一の敗戦は03年の新人王予選で、その後は6回戦の上位級選手を中心に、地味ながら確実なキャリアを重ねて来た。今日は昨年8月にベテラン北原久巳[進光]を降して以来のリングで日本ランカーに挑戦する。対する熟山は20勝(8KO)7敗3分の戦績で、現在日本バンタム級8位。00年のバンタム級日本新人王で、過去にOPBFタイトルに1度、日本タイトルに4度挑むも未だ無冠。最近は油断ならない選手に胸を貸す日々が続いており、以前からの『はじめの一歩』を思わせる過酷なマッチメイクが更に加速している印象である。
公式判定は登本78-74、宮崎77-75、大黒77-75の3−0で山口。駒木の採点は「西」77-75「東」78-77で山口優勢。
山口が持ち前のアグレッシブさと豊富な手数で、試合序盤から熟山のスマートなボクシングを封殺。さすがに中盤以降は相手の老練なインサイドワークに互角かそれ以下の試合展開を強いられたが、少差判定でA級2戦目にして日本ランキングを獲得する大金星。技術の洗練は感じられず、日本ランキングは現状やや重荷な感が否めないが、8回戦でも文字通りのフル回転で拳を振るい続けられる体力は魅力。
熟山は序盤、ガードを固めて相手の様子を窺う慎重な立ち上がりだったが、そのままペースを握られてズルズルと序盤戦のポイントを失ったのが最後まで響いた。中盤以降をしつこいボディ攻めを中心に渋太く戦い抜いたように、インサイドワークや攻撃の精度などの技術面では日本ランカー相応の地力を感じさせたが、今日はいつに無く戦い振りに覇気が薄く、最後まで消極的で淡白な印象を受けた。
ただ、熟山の場合に限って言えば、自分が目指すタイトルの王座決定戦の前座試合に出場させられてモチベーションを上げろというのが無理な相談だし、歴年の過酷なマッチメイクの連続で心身の疲労が限界を超えて溜まっているのかも知れない。よくよく考えれば、突然バンタム級戦線に割り込んで来た選手が一足飛びに王座決定戦に出場し、世界下位ランカーに地元判定で勝ちを拾った選手が次期挑戦者候補というのが日本バンタム級戦線の現状。かつて世界上位ランクの王者と激闘を繰り広げ、彼らが去った今になって実の無い苦労を重ねている熟山に対しては、「頑張れ、腐るな」と言う方が酷なのかも知れない。悲運の闘将も遂に進退窮まったか。