駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・ライト級10回戦/○高山剛志[ハラダ](判定3−0)ソンコム・ジョッキージム[タイ国]●

メインイベントは、ハラダジムの副将格・高山剛志がタイ人ランカーを相手に初のメインイベントに挑む。
その高山は11勝(3KO)5敗の戦績。97年に東日本地区でデビューし、途中3年のブランクや西日本地区への移籍を経ている。03年度の新人王戦ではSフェザー級で翌年の西軍代表を破り西日本決勝まで進出、B級、A級でも順調に実績を上げており近況の充実も著しいが、日本ランカー級の相手にはこれまで惜敗続きで、今後はこの壁をどう乗り越えるかという事になるのだろう。
対するソンコムはタイ国Sフェザー級4位。PABAタイトルに2度挑戦した経験のある選手だが、過去9回の来日では未勝利8敗1分と、見事な“お仕事”ぶりを見せてくれている。
試合内容は、相変わらず抜群の距離感とフェイントを交えたテクニカルな攻撃を駆使する高山が完全に主導権を掌握。やや消極的なカウンター狙いのボクシングに徹するソンコムに対し、顔面への右フック、ストレートやボディへの左フックを中心とする強打を次々とヒットさせてゆく。
しかし高山は戦意に乏しいタイ人が相手にも関わらず、慎重なヒット&アウェイを淡々と続ける“負けない試合”を実践したため、極めて平坦な展開に。しかも、やがて集中力が途切れたのか攻守が徐々に雑なものとなってゆき、試合は中盤以降急速に大凡戦モードへと突入する。たまに連打が決まってソンコムが効いたそぶりを見せても、ラッシュに行くどころか勝機を勝手に見限って攻勢を自分からリセットさせてしまう始末で、客席のストレスは溜まる一方となった。
緊張感の無い野次が飛び、退席する客も続出するという大変弛緩した空気が会場に充満した中で迎えた最終ラウンドも淡々とした展開に終始。高山はラスト30秒になって漸くKO狙いの大振りに転ずるが、時既に遅し。この試合20回目のゴングが鳴って、もはや結果の明白な判定スコアが読み上げられた。
公式判定は大黒100-90、宮崎100-90、原田100-92で高山のフルマーク。駒木の採点は「西」「東」とも100-90だが、確かに1〜2Rは10-10をつけた方が良かったかも知れない。
高山は持ち前のステップワークとフェイントの健在振りを示しはしたものの、新しい収穫は全く無く、極めて内容の乏しい試合となってしまった。ただでさえ1Rから最終Rまで判を押したように同じような試合内容が続く傾向がある選手なのに、戦意の薄いタイ人相手に何の工夫も無く安全策に終始すれば大凡戦となるのも当然。今日の試合振りは、観客にチケット代金を精神的満足で還元する役目であるメインイベンターとしての自覚に欠けていたと言わざるを得ない。
また今日は、過度の守備優先や折角の攻勢を自らリセットしてしまうという悪癖も露呈し、今後日本ランキング入りを目指すに当たって大きな心配の種を蒔く事になってしまった。こういうディフェンシブな試合を好む選手は、いざ自分の攻撃が通用し難い格上の相手と当たった場合、守勢一方に回らされてズブズブの大差判定負けを喫する可能性が高い。昨年7月のVS磯道鉄平[ウォズ]戦を見る限りでは、格上と当たった時にはそれなりに腹を据えて戦える度胸もあるようなのだが、最近の楽勝続きが影響して“安全策”に溺れるような事があれば、それはかえって危険な作戦となるだろう。