駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第2部第5試合・バンタム級8回戦/○山口賢一[大阪帝拳](判定3−0)小島宏樹[エディ]●

セミファイナルは山口賢一の日本ランカーとして初の試合。この日が初の8回戦となる小島宏樹を迎え、いきなりのランキング争奪戦を受けて立つハイリスクな試合となった。
その山口は8勝(1KO)1敗2分の戦績。今年6/11の熟山竜一[JM加古川]戦で勝利し、現在は日本バンタム級9位。手数と回転力、それに豊富な体力で押し切るタイプ。
対する小島は7勝(2KO)2敗の戦績。04年度の新人王戦ではSフライ級で西日本決勝まで進出。敗退からの復帰後は3試合の6回戦を含む4連勝し、この日に満を持してのA級8回戦緒戦を迎えた。
1R。山口が試合開始早々、右・左とフックをクリーンヒットして先手を獲る。その後は小島がジャブ、ワン・ツーで反撃に転じ、細かいヒットを奪うが、山口は落ち着いてこれを捌いてゆく。ラウンド終盤には山口が右ボディストレートなどでヒットを追加してダメ押し。
2R。両者中間距離でスピーディに動きつつ、ワン・ツー中心の連打合戦。小島の攻勢が目立つが、山口は重いパンチでヒットを奪い、守っても巧さを発揮して主導権は手放さない。ほぼ互角の攻防だが、“クリーンヒット”の要素ではダメージ量で僅かに山口。
3R。山口がラウンド序盤から右フックをクリーンヒットさせて猛攻。圧力をかけてロープに詰めると、逃れようとする小島をインサイドワークで釘付けにして左右のフックを続けて有効打、クリーンヒット。小島は山口が攻め疲れした隙を突きたかったが、強い圧力に阻まれて苦戦。
4R。クロスレンジでの乱打戦に。山口のショートフック、アッパーが鮮やかに決まるが、小島もボディブロー中心に渋太く応戦。山口がバテてフラつくシーンもあり、印象度的には微妙。
5R。密着戦。インサイドワークとパワーで勝る山口がショートフックを再三有効打、クリーンヒットさせて圧倒。小島も戦意こそ高いが、6回戦では通じたワン・ツー中心のボクシングがまるで通用せず。奪えたヒット数は少なく、このラウンドは苦戦。
6R。このラウンドも接近戦。山口はガード固く、小島の手数をヒットに繋げさせない。その上、逆に右アッパー起点に上下へ強打を浴びせて有効打の山。小島は反撃したいが攻撃のバリエーションに工夫が無く、完全に山口の想定内で動かされている感じ。
7R。やや攻め疲れした山口に対し、小島が圧力を増して手数攻め。山口の集中力が途切れた所にヒット、有効打を重ねる。しかし山口も防戦に追い込まれつつも有効打を次々と決めてヒット数では互角まで持ち込む。
8R。密着戦で山口がアッパーを幾度と無くクリーンヒット、有効打して大差リード。小島も必死に喰らいつくが、山口のガード固くヒットが奪えない。健闘はしたが、あくまで健闘の範囲に留まって万事休す。
公式判定は野田79-73、北村79-75、宮崎78-74の3−0で山口。駒木の採点は「A」79-73「B」80-75で山口優勢。
山口はランキングを手にして化けたか、それとも前回とは相手の力量が違ったのか、攻守全ての要素で圧倒しての大差判定勝ち。スピード、パワー、そしてインサイドワークでも優位に立ち、主導権をキープしたままアッパー中心の攻めで接近戦を制してヒット数で大差をつけた。今日は満点に近い出来だが、これで本当に本格化したかどうか、その真価は近い将来あるであろう日本ランカー級選手との試合で測りたい。
小島は初の8回戦でいきなりの日本ランカー戦。A級の、そして日本ランカーの“洗礼”を受けてモロに壁にぶち当たった格好だ。今日の相手には6回戦までは通用した手数豊富な連打攻勢が通用せず、しかも通用しない攻めを延々と繰り返して時間を空費する過ちを犯してしまった。このランクの相手ともなると、愚直に自分のボクシングに徹するだけでは通用しないわけで、そこで相手の嫌がる攻めを試みたり、いかに相手のペースや守備を崩すかがカギとなる。今日の敗戦を糧にして、攻め方のバリエーションを増やすなど戦術面の洗練に励んで欲しい。