駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第5試合・Sフライ級契約ウェイト(51.5kg)10回戦/●吉山博司[ヨシヤマ](判定0−3)孫正五[韓国]○

ダブルメイン1試合目はヨシヤマジム軽量級エースの吉山博司が登場。戦績は15勝(7KO)3敗、現在OPBF東洋太平洋Sフライ級10位、日本同級7位のランキング保持者である。今年に入ってからはタイ人相手の調整戦が続いているが、日本下位ランカー級の相手とは互角以上に戦える地力はあり、現有ランク相応のパフォーマンスが期待出来る選手だ。
対する孫の戦績は7勝(1KO)4敗1分と発表された。現在のランクはOPBFのLフライ級5位であるが、02年には小松則幸OPBF王座を懸けて12R、今年3月にはフェデリコ・カツバイ相手にノンタイトル10Rを戦い抜いており(いずれも数Rを獲っての判定負け)、実質上はフライ級の強豪東洋ランカーという事になるだろう。吉山にとっては久々の骨のある対戦相手である。
1R。吉山、体格差を活かしてジャブ、ボディブローでヒットを奪うが、ローブローも目立ち動きの精度がやや粗いか。孫は圧力で負けずに応戦し、サウスポースタイルから右のダブル、トリプル、更に右アッパーでヒット、有効打を量産して優勢に立つ。
2R。接近戦。吉山は左右のボディブロー中心に顔面へのフックを狙うが、これはやや手打ち気味で威力が弱い。対する孫もボディブローと右アッパーで攻め込み、ヒット数で小差リード。体格差を感じさせない好ファイト。
3R。このラウンドも近距離での戦い。吉山は手数豊富にショートを放ってゆくが、孫のディフェンスは手堅く、大半がガードされるか的を外されてしまう。孫は前、前へ出て細かい連打でヒット奪い、手数劣勢を挽回する。
4R。吉山がボディ中心の手数攻めで数的優位に立つが、強いヒットは皆無でインパクト不足。孫は圧力かけつつ要所でショートをヒットさせ、終盤には右ストレートをクリーンヒットさせて攻撃の質で形勢を肉薄させる。
5R。吉山は手数こそ多いがガードの上ばかりで明確なヒットが奪えない。孫は体を寄せつつショートアッパー、ワン・ツー。ヒットを奪うと同時に主導権も掌握してゆく。
6R。孫の圧力が吉山の手数を放つ隙間さえ抑え込み始める。吉山のパンチは相変わらずガードの上か、さもなくばボディ狙いのオープンブローに終始。孫は老獪なインサイドワークを使いながら自分の距離をキープして打ち合いでも優勢に立つ。
7R。吉山は足を使いつつボディブロー中心の手数攻めでラウンド序盤を優勢に。しかし孫はレスリングか柔道のように吉山の体を自分の射程圏に引き寄せると、精度の高い連打を浴びせてグロッキー状態にまで追い込んでゆく。
8R。吉山は死力を振り絞るという感じの気迫溢れる右ストレート2発で主導権を引き寄せると、強引な手数攻めを展開してこのラウンドの優勢を獲りきる。孫は右フックなどで有効打奪うが、手数と主導権支配で劣勢。
9R。吉山は孫のプレッシャーに気圧されつつもボディ連打中心に手数を稼ぐ。だが孫の的確な反撃は度々クリーンヒットとなりダメージ量は一目瞭然。ラウンド終了直前には左ストレートでダウン寸前の状況に。
10R。孫がラウンド序盤から左右のアッパーをクリーンヒットさせると、あとは一方的展開。吉山は殴られるがままでTKO寸前の大ピンチ。途中、孫のグローブのバンテージが弛み、2度の中断があった事で何とか救われたが、ホームグラウンドでなければ確実にストップが掛かっていたほどの劣勢だった。
公式判定は野田97-93、北村97-95、宮崎96-94の3−0で孫。駒木の採点は吉山がTKO負け寸前となった10Rを10-8孫として「A」98-91「B」98-93で孫優勢。公式判定の2点差は「地元判定とは言えない吉山寄り採点」の許容範囲ギリギリといったところ。
吉山、今日は実力派韓国人選手のインサイドワークと精度高い攻撃にクリーンヒットを次々と許して惨敗を喫した。実質1階級上であるにも関わらず主導権争いでも劣勢で、今日はタイトルを狙える選手とそうでない選手の格の差を見せ付けられたという所か。年齢的にもベルトを狙うには余裕の無い状況だが、この敗戦で計画は完全に頓挫したと見ていいだろう。もっとも今の地力では、たとえ東洋・日本タイトル挑戦が実現したとしても勝算は相当低いと言わざるを得ないのだが。