駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Sライト級8回戦/○大崎丈二[ウォズ](判定0−3)土居裕介[塚原京都]●

セミファイナルは、故障で休養中だった05年度Sライト級全日本新人王・大崎丈二の復帰戦。
大崎は8勝(5KO)1敗2分の戦績。全日本新人王戦を戦慄の走るKO劇で制し、日本ランクに名を連ねたものの、負傷で5月の試合をキャンセル。今回はノーランカーとなって再出発。9ヶ月ぶりのリングで初の8回戦とハードルは高いが、立場的には負けられぬ一戦。
土居は8勝(5KO)8敗1分の戦績で、02年度新人王戦ではフェザー級西軍代表になっているが、最近は試合枯れ気味で、最近は04年12月、05年10月と年1試合ペースの出場に留まっている。
1R。土居が左フックを振るいつつ果敢に突貫攻撃。後退する大崎にクリーンヒットを見舞う波乱の幕開けとなるが、その後は大崎もジャブと巧みなディフェンスで主導権を奪取し抵抗。ただし土居も堅い守りで有効打を許さず、どうやら序盤のリードを死守したか。
2R。大崎がジャブを巧みに用いて自分の距離と主導権を掌握。ショートアッパー、右ストレート、左の上下ダブルなど多彩な攻撃で優勢。土居も散発的に左フックなどで攻めるが、大崎の守りは固く手数劣勢のみが目立つ形に。
3R。大崎の主導権で静かなファイトが続く。ジャブ中心にショートアッパー、左ボディなどで細かいヒットを重ねたが、ラウンド終盤になって土居が突如猛然と大崎をコーナーに詰めてフックを一気に乱れ撃つシーンを作った。
4R。大崎の試合運びは巧いが、今日は力強さに欠ける印象も。土居は何度か強引な攻勢に出て右フックを決めてジャッジにアピールする。大崎も右ストレートでヒットを返し、手数と主導権の優勢をアピールするが、このラウンドも形勢は微妙。
5R。土居がプレスしつつの攻勢で有効打を奪うと、大崎はやや失速して手数が減る。こうなると土居の強打が見栄えする展開となり、やや手数は少ないものの左フックなどで有効打を追加して優勢。
6R。このラウンドは大崎が先手で細かくて数を出して主導権を奪還。あとは密着しながらショート連打を放って、明確なヒットこそ無いが手数を稼ぐ。土居も強打を振るうが、このラウンドは自分のペースでない分だけ攻めあぐみ、不発に終わる。
7R。手数の伴わない圧力の掛け合いで膠着気味の展開。土居はコーナーに詰めての連打を放って見栄えあるシーンを作るが明確なヒットは奪えず、大崎も軽い手数攻勢でジェネラルシップをアピールする。
8R。膠着気味の密着戦。土居が強引なオーバーハンドと変則モーションの左アッパーをクリーンヒットしてまず先制。これに対し、大崎はショートボディからアッパーで反撃するも、やや攻めあぐんで挽回したかは極めて微妙。
公式判定は北村77-75、藤田77-76、野田77-76の3−0で大崎。駒木の採点は「A」77-75「B」78-77で土居の方を優勢と見た。「微妙な判定」という言葉がこれほど似合う判定結果も珍しい。公式判定は、大崎のジャブとテクニックを重視して微妙なラウンドを優先的に振り分けた結果なのだろうが、流石にユナニマスというのは違和感の残る“統計上の誤差”であった。「大崎=実力上位のテクニシャン」という先入観と、番狂わせを避けようとするジャッジ特有の習性が勝負の綾になってしまったのかな、という気もする。
さて、大崎は試合運びの巧さは健在だったが、今日の試合を見る限りでは8回戦では少々パンチ力不足かも知れない。これが調整途上ゆえの不調ならよいのだが……。主導権支配と技巧で僅差判定をモノにしたが、日本ランク再登載を目指すには、今日の内容は及第点未満。
土居は強打と攻勢で印象的な場面を作って互角の健闘を見せたが、際どいラウンドでジャッジの支持を固めきれずに惜しい星を落とした。強引な試合運びが裏目に出たか、微妙な勝負の綾の悪戯か、ともかくも勿体無い試合であった。