駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・フライ級6回戦/○久田哲也[ハラダ](判定3−0)堀江純平[大阪帝拳]●

両者戦績は久田6勝(3KO)3敗、堀江5勝(2KO)4敗。この2人は10/9に対戦し、その際は久田が小差判定で勝利を収めている。そして堀江は10/9の後、10/29に佐藤武夫[Gツダ]と対戦して大差判定勝ちしており、中19日→中19日という凄まじい間隔でのスケジュールとなっている。
1R。堀江はワン・ツーにショートアッパーを交える細かくも軽快なコンビネーションで手数・ヒット数共に小差優勢。久田は右フック、ワン・ツー、左右のボディでヒットを返すが、堀江の牽制ジャブにリズムを狂わされ、やや攻めあぐんだ。
2R。堀江の左ジャブが鋭く決まって、主導権を引き寄せる。緩急の効いたコンビネーションが次々と決まって数的優勢を築くが、やや当たりが浅いか。久田は強打中心に突破口を見出そうと奮闘するが、堀江の好守に目論みは阻まれた。
3R。堀江はこのRも肩の力が良い感じで抜けた回転力豊かな連打で左中心にヒット数先行。だが久田も右ストレートの有効打からボディ、ショートアッパーで漸く本格的な反転攻勢で逆転。しかし堀江も退かず、またしてもショートアッパーを小刻みに当ててゆく。
4R。久田は前回の試合同様、体を密着してボディ攻めを狙う構え。しかし堀江は左右のショートアッパーでこの前進を迎撃し、主導権を譲らない。久田の攻勢も感じるが、それ以上に堀江の作戦勝ちと言う印象。
5R。久田はやや距離を取ってストレート中心の狙い。だが堀江のハンドスピード、精度、回転力豊かな連打がこれを封殺する。ただ、堀江のヒットは軽く、久田もカウンターのアッパーで印象ある強打をヒットを奪うなど、見方によっては判断が割れそうではある。
6R。堀江の回転力と精度ある細かいコンビネーションがこのラウンドも機能する。久田も右ストレート有効打に加えて手数でもアピールするが、ヒット数そのものは堀江が優勢で微妙な形勢。
公式判定は半田、宮崎、藤田の三者とも58-56で久田を支持。しかし駒木の採点は「A」59-55「B]60-56で堀江の方を優勢と見た。
この試合の判定のポイントは、度々久田の顔面をハネ上げていた堀江の一見軽打に見えるショートアッパーをどう評価するかだったろう。駒木は「相手に明確なダメージが表れない『パワーパンチ』のクリーンヒットよりも、相手に明確なダメージが表れた『一見手打ちの軽いパンチ』のクリーンヒットの方を、より高く評価する」というWBC基準に従って堀江の“クリーンヒット”に高い評価を与え、上記の採点結果とした。対して公式ジャッジは久田の力強い攻勢と時折見せた強打のヒットを重視したのだろう。以前から久田の試合では、公式ジャッジと駒木(や周囲で見ていた関係者・マニア等)の採点が大きく割れる事があり、久田の試合振りはJBC西日本の採点方針と非常に相性が良いのかも知れない。
さて、久田は堀江の細かく鋭い連打に苦しめられながらも、強打中心の手数攻勢と、10月の試合でも効果的だったボディ攻めでジャッジの好印象を獲得した。しかしスピードの差は大きく、見方によっては敗勢とも受け取れる大苦戦だった。これでA級昇格となるが、このままでは苦戦必至なのは誰よりも久田本人が気付いている事だろう。弛まぬ努力精進を望みたい。
堀江は前回の敗戦の反省点を踏まえ、ボディ狙いに来る相手をジャブとショートアッパーで迎撃する新戦術で大いに健闘した。ヒット数そのものは明確なリード、手数でもほぼ互角で、これで負けというのは可哀想な気もするが、軽打がジャッジに嫌気されたようだ。だが、内容的な進歩は明らかで、余程の事が無ければすぐに6回戦を突破出来るだろう。