駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・Sフェザー級8回戦/△福原寛人[江見](公式判定0−1)武本康樹[千里馬神戸]△

両者戦績は福原6勝(2KO)3敗3分、武本8勝(3KO)1敗1分。共に新人王戦西軍代表の実績を持っている。2人とも9/18のサンボーホール興行に出場したが、その結果は福原がTKO負け、武本は大差判定勝ちと明暗分かれた。
1R。やや近い距離で噛み合わない攻防戦。ヒット数少なく様子見気配漂うが、武本はジャブ数発と振り下ろし気味の右フック1発をヒットさせ、数的優勢を確保する。
2R。このラウンドの攻防も噛み合わず。パーリングや互いの連打を連打で相殺するディフェンシブな展開が続く。有効打は二人合わせても福原のジャブ1発のみで、あとは攻守交替しながら互いに攻勢点と細かい手数・ヒットをアピールしあう。
3R。武本が手数をまとめてゆくシーンを作るが、福原に的を外されて不発。逆に福原が鋭くジャブを突いて小差優勢。テクニカルな攻防だが、やや淡々とした流れ。もう少しアグレッシブさが欲しい。
4R。武本が打ち合いを仕掛け、有効打・ヒット数で先行。福原は追う立場になると微妙にリズムを狂わせて攻めあぐみ。反撃は単発のヒットに留まり、数的劣勢をリカバーできない。
5R。武本は漸く当てるタイミングを掴んだか、ジャブ中心にヒットを集める。しかし福原は左フック、右ストレートをクリーンヒットさせて逆襲。これで流れが変わったかと思いきや、ラウンド終盤には武本が立ち直り、ワン・ツーと左フックで有効打を連発し再度突き放す。
6R。武本ややアグレッシブに手数増やし先手。しかし有効打以上の明確なヒットを奪えず、逆に福原から右ストレートを有効打されて苦戦。ラウンド中盤から武本も細かいヒットと手数で“アグレッシブ”と“リング・ジェネラルシップ”でアピールし際どい形勢に。
7R。ジャブ中心の攻撃で武本ペースの展開となり、手数・ヒット数の優位を確保。福原は強打攻めで時折武本をコーナーに追い詰めるが、詰めが甘くこの攻勢も不発。ラウンド終盤には激しい打ち合いとなったが、互いに有効打を交換しただけで、この場面では差がつかず。
8R。淡々とした流れから福原が右を再三クリーンヒット、有効打して優勢となるが、畳み掛けに失敗して勝機を見失う。やがて武本は逆襲の右カウンターで福原をダウン寸前に追い込む印象的なシーンを作って形勢を一気に挽回。福原も最後まで粘り強く戦ったが、折角の優位を明け渡して確実に獲れた筈のポイントを微妙にしてしまう。
公式判定は宮崎77-75(武本優勢)、大黒76-76、上中76-76のマジョリティ・ドロー。駒木の採点は「A」77-75「B」78-76武本優勢。際どいラウンドをどう振り分けるかで、三様の結果も考えられる拮抗した内容の難しい判定。
武本は全体的に見て慎重に持ち前の技巧を活かした試合展開を選んだが、今日はディフェンスが甘く、その慎重さがかえって裏目に出た印象もあった。判定結果を聞いた武本本人は不満そうなポーズをとったが、今日の所は危うい場面を作られながらよくドローまで持ち込んだ、と言うのが妥当かも知れない。どうも最近の彼はボクシングのスケールが小さくまとまってしまっており、新人王戦の頃には感じられた“大物感”が萎んでしまったように思える。ここら辺りで、ショック療法も兼ねて敗戦覚悟の格上挑戦に打って出るのも良いと思うのだが……?
福原は右ストレートで再三チャンスを作り、「あわや」という場面も作ったが、肝心の所で詰めを誤り、指を引っ掛ける所まで行った勝利を手放してしまった。惜しいと言えば惜しいが、逆説的に言えばこれがランカー級選手と今の彼との“格の差”の表れなのだろう。