駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・ウェルター級契約ウェイト(143ポンド)4回戦/○畑大輔[進光](判定3−0)シントートング・フルオライトジム[タイ国]●

畑は9勝(1KO)3敗2分の戦績で、現在は日本ウェルター級6位。4回戦時代は新人王予選も敗退するなど地味な成績に甘んじるも、6回戦に転じてからは大幅に勝ち越し。今年9月には、お世辞でも褒められる内容ではなかったものの、日本ランカー攻略に成功した。
対するシントートングは自称成績10勝(9KO)3敗で、タイ国Sライト級王者にしてOPBF同級2位。しかし来日成績は0勝3敗で、今年2月には山本大五郎[金沢]に抵抗したものの10RTKOを喫している。
1R。シントートングは完全にカウンター狙いの“噛ませモード”。畑はガードを下げて鋭いジャブ、ワン・ツーで攻め込むが、相手のガード手堅くヒットが奪えない。
2R。圧力かけるも手数少なくガード固めるばかりのシントートングは、打ち終わり狙いのヒット数発のみ。畑はリードジャブを細かく当てて手数では圧倒だが、こちらも有効打以上の明確なヒットが奪えない。
3R。これまでと同様の展開。畑はジャブに加えてストレート、アッパーで散発的に有効打を奪うが、KOを狙うわけでもなく、いわゆる「負けない戦い方」でダルファイトに転落。シントートングは専守防衛で、攻撃のタイミングも後手に回った。
4R。畑が足を使いつつの安全運転。右ストレート有効打で一応の山を作るが、守備を固めるタイ人を完全には攻略できない。シントートングはスピード面で全く畑についていけない。ガードの上へボディブローを放つが、これも形式的な反撃に留まる。
5R。畑は逃げつつのワン・ツー、アッパー。前、前へ出てもカウンターを警戒しすぎか手を出し渋っている。散発的にヒットは奪うが、優勢に立っている側がこの消極的姿勢では大凡戦となるのも必定。シントートングはいかなる思惑か、畑以上に消極的。
6R。このラウンドもダルファイトが続く。余りにも動きの無い展開にシビレを切らしたか、シントートングもラウンド後半からはワン・ツーで手数を出してほぼ互角の形勢まで持っていった。畑の試合振りは9月に続いて客席無視のポイントアウト狙いで、これはカネを取ってお見せする試合ではない。
7R。シントートングがラウンド序盤に積極的なワン・ツー攻勢で手数を出して優勢も、中盤からは畑もややアグレッシブに手数をまとめる。強いアッパーでクリーンヒット狙いに出るが、これは不発で散発的なヒットのみに終わる。
8R。畑はこのラウンドも引き気味のボクシングで淡々とジャブ、ストレート、アッパーで軽めのヒットを奪ってゆき、シントートングの反撃にはクリンチで対処。お通夜状態の客席に対し、畑陣営のセコンドばかりが景気の良い掛け声で盛り上がるというお寒い内容。
9R。畑が手足のスピードを活かしてジャブ中心にヒットも、連打はキッチリとガードされて決定力不足ばかりが目立つ。シントートングが攻勢を強めると、畑は必死にクリンチとバックステップで逃れて被弾だけは許さず。しかし採点で大勝ムードの選手がするようなファイトではないだろう。
10R。シントートングが圧力強め、強引なフック見せるが、畑はジャブとクリンチで捌いて無難にやり過ごす。しかし最後まで盛り上がりに欠ける展開のまま、観客からすれば精神的拷問にも似た試合の終了を告げるゴングが打ち鳴らされた。
公式判定は宮崎100-90、原田100-91、藤田99-91の3−0で畑。駒木の採点は「A」99-91「B」100-92で畑優勢。
畑が安全運転で“高級噛ませ”にポイントアウト。スピードはこの階級では目立ち、ジャブの鋭さは出色だが、決定力不足と相手に攻められた際の凌ぎ方の不恰好さは隠しようもない。少なくとも試合の面白さという観点からすれば、とてもメインイベンターに相応しい選手とは言えないだろう。最近の畑は、記録上の結果と名目上の地位を追い求めるのに懸命になりすぎて、プロスポーツ選手として一番大事なものを忘れてしまっている気がする。ファンの立場から彼に猛省を促したい。