駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第3試合・Lフライ級契約ウェイト(48.0kg)10回戦/○堀川謙一[SFマキ](判定3−0)山脇正輝[大阪帝拳]●

第3試合は西日本のマニア垂涎の一戦。04年・05年の西日本Lフライ級新人王同士の一騎打ちだ。
04年度西日本覇者の堀川は12勝(4KO)5敗1分の戦績で、現在ミニマム級OPBF4位、日本3位の上位ランカーでもある。4回戦時代は負けが込んだが、新人王戦で活躍してから一気に台頭。日本ランカー相手の3連戦を2勝1分の無敗でクリアし、自身も日本ランカーの一角を占めた。前回、昨年10月の試合ではノーランカー・大洞達馬[金沢]を1RKOで屠り、その急成長ぶりを見せつけた。
対する05年度覇者の山脇は7勝(0KO)1敗1分。西軍代表戦で惜敗を喫した後、8ヶ月のブランクを開けて昨年6月に復帰。10月には岡山遠征でA級初勝利を果たしている。今回は一気にジャンプアップを果たすための大事なステップとなる試合。チャレンジマッチをチャレンジだけで終わらせたくは無いだろう。
1R。山脇はいつも通りガードを固めつつ、ジャブ中心に手数を放つ。堀川はこれを概ねガードとステップワークで捌くと、スピードの違いを見せ付けるように軽快なフットワークからジャブ、ワン・ツー、ボディアッパーで攻勢。山脇のガード堅くヒットは少ないが、手数と主導権確保の面で優勢に立つ。
2R。山脇はやや圧力を強めて前へ出る。ラウンド序盤はショートフック連打で見せ場を作るが、堀川も上手いディフェンスでヒットを易々とは許さない。堀川は中盤から再びジャブ連打やワン・ツー、上下のアッパーで細かいヒットを奪いつつ手数を重ねて互角以上の形勢へ。
3R。ガードの堅い両者のガマン比べのような展開。スピードと回転力で上回る堀川がジャッジ的には有利。ジャブ、ワン・ツーに混ぜて放つアッパーが効果的に機能。山脇も手数を増し、ヒットも奪ったが小差及ばずか。
4R。堀川はこのラウンドもステップ使いつつの小気味良い手数攻めを展開。アグレッシブ、リング・ジェネラルシップの2要素で優位に立つ。しかし山脇のガードが突き破れず、逆に山脇から打ち終わりに右ストレートを有効打されて形勢が極めて微妙に。
5R。堀川が山脇の鉄壁ガードに苦しめられつつも、スピードと手数の差で完全に主導権を掌握。山脇の手数は堀川のパンチで相殺されるか、もしくはボディワークで躱されて苦しい。前Rは機能した打ち終わり狙いも不発に終わる。
6R。密着距離の乱打戦へ。山脇がラウンド前半、手数劣勢ながらカウンター気味にヒットを浴びせて先制。しかし堀川は後半からボディ中心に手数を畳み掛け、山脇を体力切れに追い込む。
7R。堀川が再びスピードと回転力を活かしたヒット&アウェイ策に出て、手数圧倒。山脇の抵抗は、堀川のガード、ダッキング、ステップワークの前に無効化されてしまう。守備堅く、被弾は許さないのだが、攻められなければポイントは奪えない。
8R。堀川はKO意識したか強打狙い。足を止める時間が長くなった分、山脇の右ストレートを被弾する事が増えたが、それでも有効打狙いの手数を重ねてゆく。山脇は終始主導権を見失って受身のボクシングを強いられている。
9R。近距離の打撃戦模様。この展開では山脇も五分以上に奮闘し、固いガードも機能させていたが、ラウンド終盤、堀川は左ボディを捻じ込んで山脇の動きを止め、左フック、右ストレートで追加弾を撃ち込む。
10R。山脇が圧力欠けてアグレッシブに上下へ手数を浴びせる。KO狙いに走っていた堀川はこの苦戦にそれを断念するが、それでもラウンド後半には再びボディに照準を合わせてヒットを返し、互角まで形勢を戻してしまう。
公式採点は野田99-92、半田99-92、宮崎97-93の3−0で堀川。駒木の採点は「A」98-92「B」100-94で堀川優勢。小差優勢のラウンドを積み重ねた堀川が、ラウンドマスト制の特性を活かしてスコア上では大差を開けた。
スピード、回転力、インサイドワークの差を見せつけて、堀川が大差判定勝ちを収めた。まさに日本上位ランカーの貫禄といったところか。生憎、直前の日本ランキング会議でが順位が3位に下がってしまい、早期の日本タイトル挑戦実現は難しくなったが、いずれそのチャンスを得るべき好選手だ。
山脇は、いわゆる「クラスの壁」というヤツだろう。最大の持ち味であるガードの堅さは今日の相手にも通用したが、自分の攻め方が通用しなかった際の対処が全く出来ていなかった。日本ランカーとの格の違いを見せ付けられた形。