駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第5試合・Lフライ級10回戦/○橘悟朗[エディ](判定2−1)岸田直哉[クラトキ]●

メインイベントは、エディジムの新エースとなった橘が挑む4度目のランキング争奪戦。
橘は7勝(1KO)5敗1分の戦績。新人王予選は1度出場し2回戦敗退。その後は“裏街道”を選択し、6回戦、8回戦と順を追って昇格。05年12月からは日本ランカーへの挑戦を続けているが、現在ここまで3連敗中。今回は“四度目の正直”とばかりに、地元・大阪の自主興行という非常に恵まれた条件でのチャレンジとなった。
対する日本ミニマム級9位の岸田は12勝(5KO)4敗3分の戦績。年に1度の自主興行を除いては敵地や中立地での遠征試合を強いられる地方ジムの悲哀を味わわされつつも、昨年5月にはタイ国内王者を判定で降して念願の日本ランキングを獲得した。今回は9ヶ月ぶり、しかもアウェイでの試合となるが、虎の子のランキングを易々と明け渡すわけにはいかないだろう。
1R。中間距離、両者ステップを踏みつつジャブ、ストレートを浴びせあう展開だが、日本ランキングを争う試合にしては精度が物足りず雑な印象。橘が攻勢点と手数、細かいヒット数で少々有利にも見えたが、ジャッジ的には互角から微差の範疇。
2R。乱打戦だが、早くも膠着気味の展開。両者無数のショート連打を放つが、的確さに欠けて散漫な印象。多分に偶発的なヒットで橘が若干リードを奪ったが、どうか。
3R。このラウンドも乱打戦。岸田はカウンターで左を狙うが、橘のアグレッシブな手数攻勢が試合の主導権を支配する。右ストレートも軽くだが散発的にヒットしており、橘のが微差から小差の優勢か。
4R。掴みどころの無い乱打戦が続く。橘がジャブ、ストレートで岸田を突き放すシーンが目立つが、確固たる優勢を築く事はできない。だが岸田も攻略の糸口を掴めずもがくばかり。
5R。このラウンドも手数、手数の乱打戦。カウンター気味のショートをどちらが決めるか、という展開となったが、これは最初からカウンター狙いの岸田ペースに。橘も必死に手数を振り回して抵抗するが……
6R。先のラウンドと同様の展開。両者ともパンチ力に欠けるため、どうしても散漫な攻防戦に映ってしまう。岸田がヒット数で小差リードだが、橘は粘り強い攻勢でジャッジにアピール。
7R。岸田がラウンド序盤からジャブ、ストレートをタイミングよく当ててヒット数先行。橘は手数がヒットに繋がらずに苦しいが、ラウンド終盤には体力切れで失速した岸田を手数で圧倒した。
8R。手数は激しい乱打戦だが、やはり精度と威力に欠けて迫力不足。橘が右ストレートでカウンターを決め、手数と攻勢点でジャッジ上の優勢も狙う。
9R。膠着気味の乱打戦。共に決定力に欠ける手数の応酬となって一旦は形勢不明となるが、橘のしつこい手数攻めは印象的。。岸田も左ストレートをカウンターで決めたが、あと一押し足りない。
10R。クリンチして膠着になったまま乱打戦に突入。だが、橘の回転力豊かな連打がタイミング良く活きるシーンが目立ち、最終的にはヒット数と手数で小差リード。岸田は最後まで思うように攻め切れなかった。
公式判定は宮崎97-93、原田97-94(以上、橘支持)、半田96-95(岸田支持)のスプリットで橘が悲願のランキング奪取に成功。駒木の採点は「A」97-93「B」98-95で橘優勢。共に精度、パンチ力に欠ける決め手の無い10ラウンズ。ジャッジの困惑振りが大きく割れたスコアに反映されている。
パンチの威力と精度が全く欠けた乱打戦。日本ランキングを争う試合としては極めて低調なものになってしまったが、最後はスタミナと手数で勝る橘の粘り勝ち。後日発表の2月ランキングでミニマム級の日本10位にランクインしたが、これからの展望は全くの未定である。
岸田は最後の最後までマイペースの試合運びが出来ないまま、淡々と小差劣勢のラウンドを積み重ねてしまった。なお、彼はこの敗戦後、引退を表明しているとの話を聞いた。