駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1試合・Sウェルター級契約ウェイト(150p)10回戦/○レブ・サンティリャン[比国](判定3−0)如月紗那[六島]●

赤コーナーに陣取ったサンティリャンは22勝(16KO)3敗1分の戦績。元OPBFウェルター級王者で、王者時代には現王者・丸元大成を挑戦者に迎えて完勝で退けた経験もある。現在も同級1位、既に次期挑戦者に内定している文字通りのトップ・コンテンダーである。
対する如月は5勝(2KO)3敗3分。04年度の新人王戦で西日本決勝に進出した実績があるが、本格的な実力を身につけて来たのはここ最近の話。今回はデビュー以来最強の敵を相手に、大金星を狙う。
1R。中間距離の攻防。互いにジャブ、ワン・ツー中心。サンティリャンが先手で手数出して攻勢、左ストレート、右ボディフックをヒットさせる。だが如月も断続的な右ストレートと連打でヒット数では上回り、形勢は互角かそれ以上。
2R。如月はサンティリャンのワン・ツーを手堅くガードしつつ、ワン・ツー、フックの連打で2発、3発とヒットをまとめて優勢。サンティリャンも戦意そのものは高く、パワー十分の左ストレートで意地を見せるが数的劣勢は否めない。
3R。如月の健闘が続く。従来のワン・ツー中心の攻めに加え、左フックやスイング気味のアッパーを増やした強打攻勢でヒットを連発。更にはボディストレートも追加してサンティリャンに的を絞らせない。サンティリャンの攻勢は概ね如月のガードに捌かれた。
4R。サンティリャンが圧力を増し、如月をコーナー、ロープ際に詰めてストレート攻め。これに対して如月はストレートにショート連打、フック攻勢でヒット数そのものでは圧倒する勢いだったが、ラウンド終盤、サンティリャンはまたも如月をコーナーに詰めて重い左ストレートを連発で見舞って大いに効かせた。
5R。如月はダメージが残ったか、パンチの威力、連打の回転力いずれもダウン。だがサンティリャンも漫然とワン・ツー、アッパーをガード上へ打ち込むばかりで拙攻が目立つ。如月はラウンド後半になって立ち直り、手数を見舞って形勢逆転を窺う。
6R。如月の断続的に放つ連打がサンティリャンの顔面を度々捉え、ヒザを折らせる場面も。しかしサンティリャンの猛攻はガードの上からでも効かせるパワフルさで、あわやKO級の左ストレートまで見せて、形勢は互角。
7R。如月は左フック、右ストレート、更にはツー・ワンなど力強い攻勢でこのラウンドもヒット数ではリードする。サンティリャンは攻守共に工夫が無く、動き乏しいディフェンスで被弾を繰り返し、反撃で放つ左ストレートもガードの上ばかり。
8R。如月は右ボディフックで先制するが、サンティリャンは左アッパー、ストレートに右上下フックを絡めた重たいパンチで如月をガードごと吹き飛ばし、続くボディブローでは明確に効かせた。如月は左フック、右ストレートで抵抗したが、届かず。
9R。如月は死力を振り絞っての手数、圧力攻め。リード代わりの右ストレートが小気味良く当たり、ヒット数と攻勢点の観点では圧倒。サンティリャンもアッパー、ストレートで迎撃するが、ここも如月は必死のガードで凌ぎ切った。
10R。ガード固めて圧力をかける如月に対し、サンティリャンは重いアッパーとストレートで効かせる作戦も、やはり如月のガードが被弾数を相当に目減りさせている。如月は体力を溜めつつショーとフック連打で細かくヒットを集めて必死の抵抗を見せたが、最後はダメージ深くバテバテになってしまった。
公式判定は半田98-93、北村97-93、原田96-94の3−0でサンティリャン。駒木の採点は「A」97-93「B」98-95で如月優勢。
判定結果を聞いた途端、如月は無念の余りキャンバスに崩れ落ち涙に暮れた。サンティリャンの力任せの攻勢が如月に大きなダメージを与えていたのは事実だったが、明確なヒットの質・量は如月が互角以上の大健闘。一連のサンティリャンのパワーパンチは概ね如月のガード上を叩いたもので、これは採点基準上の“アグレッシブ”要素は十分満たしているとは言えるが、“クリーンヒット”要素として積極的に評価して良いかどうかは疑問が残る。会場のマニアの声も「如月大健闘」という声が多く、たとえ如月の敗戦を是とするにしてもこの点差で、というのは、試合内容と地元判定が連発されている普段の状況から考えると極めて不可解に映った。如月陣営も、まさか準地元の兵庫県での比国人相手の試合で、まるでタイ遠征かというようなアウェイ感を味わわされるとは思いもしなかっただろう。