駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・Sフェザー級契約ウェイト(57.5kg)10回戦/○武本康樹[千里馬神戸](判定2−0)児島芳生[明石]●

セミファイナルは武本兄弟の弟・康樹が2度目のランキング争奪試合に臨む。相手は昨秋に兄を破り、日本ランカーとなった児島。まさに因縁の対決である。
武本康樹の戦績は8勝(3KO)1敗2分。05年度新人王戦ではSフェザー級で西軍代表となり、全日本決勝でもあと一歩の大健闘を見せた。しかし年が明けた06年は、3月に日本ランキング奪取に失敗(VS山崎晃[六島]、ドロー)。その後も無敗でキャリアを積み重ねているものの、東南アジア人相手の凡戦や日本人A級選手相手に勝ちきれないなど、やや伸び悩みを見せた。今回は“兄の仇”を相手に昨年果たせなかった日本ランク奪取を狙い、飛躍を期す。
対する児島は8勝(2KO)7敗2分の戦績で、現在日本フェザー級4位。長らくSバンタム級前後のウェイトで勝ち負けを繰り返し、名目上の地位としては平凡なノーランカーの1人に過ぎなかったが、昨年11月に不利なSフェザー契約で臨んだ武本在樹戦で負傷判定ながら大金星を挙げて急浮上。前回の勝利がフロックだったと言われないためにも、今日の一戦は大事な位置づけの試合となることだろう。
1R。児島がアグレッシブに圧力攻めを仕掛けるが、武本はジャブ、左フック、ワン・ツーをガードの上へ放って手数を稼ぎ、主導権も手放さず。ラウンド終盤、児島が打撃戦を仕掛けたが、武本がストレート、フックで有効打連発して返り討ち。
2R。児島の圧力攻めが続く。右ストレートからフックでヒット、有効打も奪う。しかし武本はジャブ迎撃で手数を稼ぎ、左右フックのカウンターでクリーンヒットも度々奪う。ナチュラルな階級差も相まって、武本の攻めのインパクトが強く見える。
3R。児島の愚直な圧力手数攻め。武本はパワーと体格差を活かして迎え撃ち、右ショートアッパーなど決めるが、このラウンドは児島のアグレッシブさと手数の多さが目立った。
4R。児島がラウンド前半にまたも圧力、手数攻めを展開。ジャブも繰り出して主導権支配をアピール。強引な強打狙いで自縄自縛に陥りかけた武本だが、ラウンド終盤には足を使ってスピード豊かな攻めで逆襲に移り、右ストレートなどで形勢を五分に戻した。
5R。圧力、手数の児島に対するは、パワーパンチのカウンターで反抗する武本の構図。ヒット数、ダメージ量はほぼ互角だが、攻勢点と主導権支配では児島やや有利か。主観で採点の割れそうな試合内容。
6R。武本のジャブを掻い潜っていこうとする児島だが、武本のストレート系パンチ迎撃が機能する。ストレートを互いに浴びても、その後に武本がワン・ツーを当てて、その分ヒット数でリードしてゆく。だがラウンド終盤になると児島のプレス攻撃に武本がやや根負け気味の体となる。
7R。児島のスタミナ豊富な攻勢に武本は防戦に専念させられる。児島の明確なヒットは右ストレート1発程度ながら、手数とアグレッシブさが出色。ラウンド終了間際、武本はコーナーに詰められながらもカウンターで一矢報いたが……
8R。児島の圧力攻めがやや空回りしたところを、武本が右ストレート、左フックをカウンターで打ち抜いて効かせて久々に優勢を築く。しかし児島は粘り強い抵抗を見せ、細かいヒットを集めてストレート、フックで有効打を返してまたも形勢微妙に。
9R。児島が再び攻勢に出る。武本もジャブ中心に鋭く迎撃するが、児島の右ストレートに足を止められてしまう。数的にはほぼ互角の内容だが、攻勢点で勝る児島の方が見栄えする。
10R。武本は意識的にスピードとリーチ差を活かすアウトボクシングで点数稼ぎに出た。児島は圧力かけて必死に喰らい付くが、武本はラウンド後半から右ストレート2発、そしてフック連発で一気に優勢。児島は手数振るったが決め手にかけた。
公式判定は宮崎98-92、半田96-95、北村96-96の2−0で、武本が兄の敵討ちを果たすと共に日本ランキング入りを濃厚にした(後日発表の3月度ランキングで日本9位に登載)。駒木の採点は「A」95-95イーブン「B」97-96児島優勢。
終始圧力と手数で攻め立てた児島と、実質2階級上のパワー差を活かした迎撃で一定の戦果を挙げた武本が、それぞれ別の採点要素で優勢を主張する際どい内容。ジャッジの主観、特にどちらの選手を主体的に観るかで採点結果が大きく異なりそうな試合だったと付記しておく。
武本が児島の圧力手数攻めをパワー優位の迎撃で凌いで、優劣微妙な内容ながらジャッジを味方につけて僅差の判定をモノにした。今日は実質1階級のナチュラルウェイト差に利もあった。
児島は日本ランクが自信をつけさせたのか、戦法こそ以前と変わらぬが堂々たる戦い振りで大いに有力ホープを苦しめた。“アグレッシブ”の採点要素では圧倒していたが、手数を明確なヒットに結び付けられず、苦杯を呷らされた。この敗戦を受けて3月度ランキングでは10位に降下。次戦がランキング維持の正念場となる。