駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・Sライト級8回戦/○西尾彰人[姫路木下](6R終了負傷判定3−0)大崎丈二[ウォズ]●

昨年11/23神戸興行で行われた試合のダイレクト・リマッチ。前回は西尾の小差判定勝ちとなったが、当日観戦した選手・関係者の中には大崎を支持する向きもあった大接戦&採点困難な試合。今回は場所を姫路に変えての決着戦となる。
西尾の戦績は9勝(6KO)3敗1分。デビュー戦で敗れ、2度の新人王戦エントリーも西日本予選で敗退するなど勝ったり負けたりの新人時代を過ごす。B級緒戦も04年度Sライト級全日本新人王・磯道鉄平[ウォズ・引退]に敗れたが、そこから前回の大崎戦に至るまで4連勝でランカー入り寸前の位置まで躍進している。
対する大崎は9勝(5KO)2敗2分の戦績。05年、新人王トーナメント2度目の挑戦で4KOを含む5連勝で全日本新人王に輝いたが、06年9月の復帰以来、8回戦で連続して苦戦を強いられている。今回はリベンジを懸けたダイレクト・リマッチで、文字通り今後のボクシング人生を左右する正念場という事になるだろう。
1R。ガードを固める大崎の圧力攻めを西尾がステップワークでいなし、ジャブ中心に手数出して牽制する……という、前回同様の試合展開に。しかし大崎はアグレッシブさこそ衰えないが西尾のスウェーに攻めあぐんだ印象で、有効打は1発のみ。逆にガードの上と隙間から手数と軽いヒットを重ねられて微妙な形勢に。
2R。西尾は徹底したアウトボクシングで大崎を捌きつつ、時折連打をまとめて手数とヒットを重ねる。大崎は距離を詰めてマイペースの攻勢に持ち込みたいが、スピードで見劣って主導権を喪失。時折明確なヒットを奪ってアピールするが、手数が伸び悩む。
3R。大崎が圧力を強めていくが、西尾はクリンチで凌ぎつつアウトボクシングによる主導権支配の成立を目指す。両者共にヒットは不明確なものが多く、決め手の無いラウンドに。大崎の攻勢点か、西尾のリング・ジェネラルシップか。
4R。これまで同様の展開が続く、西尾はクリンチの回数が増えて大崎の攻勢に手を焼いている印象も受けるが、手数と主導権支配の観点で優勢。大崎はクリンチ際の不完全なボディブロー、ラウンド終盤の連打で奪ったヒットがどこまで評価されるか。
5R。大崎の圧力と手数が強まり、ストレートやフックのヒットも増えるが、西尾は被弾するのとほぼ同時に同質のパンチを浴びせてリードを容易に奪わせない。逆にジャブやアッパーを大崎のガードの隙間から捻じ込んで印象的なヒットを決める場面も。
6R。大崎のアグレッシブな強打攻勢を捌き、西尾が手数をまとめて数的に優位。アッパーを中心に有効打を奪う一方で、守ってはスウェーとステップワークで大崎の手数、ヒット数を伸び悩ませる。このラウンドに大崎はバッティングで目の付近を負傷し、2度のドクターチェック。切羽詰った状況に追い込まれて、ラウンド終盤には必死のラッシュも敢行したが、目立った戦果は挙げられずゴング。インターバル中に半田レフェリーが大崎の傷を再確認し、レフェリー権限で試合をストップさせた。よって、公式記録は6R終了負傷判定
公式判定は宮崎59-55、北村58-57、原田58-57の3−0で西尾が同一カード2連勝。駒木の採点は「A」59-55「B」60-57で西尾優勢。前回同様、採点者の主観と視点で採点が割れ易い内容。大崎の攻勢点を重視すれば北村、原田両氏の1点差も誤差の範疇。
因縁の対決は、またも採点困難な内容となって負傷判定という残念な結末に。それでも西尾が前回よりも手数とヒット数で差をつけて、6Rまでで最高4点差をつける判定勝ち。大崎の固いガードをこじ開けて顔面を跳ね上げるジャブとアッパーが要所要所で決まった他、ボディワークとステップのキレも鋭かった。
大崎は今回も西尾の低いガードでむき出しになった顔面にストレート系強打をクリーンヒットさせる狙いだったが、前回よりも有効打数が目減りし、相手の“数”攻めを“質”で上回り切れなかった。ファイタースタイルの戦い方をする割には攻勢が淡白で、いくら相手が試合巧者とはいえ、もっと強引に攻めても良かったのではないかと、この結果を目の当たりにすると、どうしても考えてしまう。