駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第4試合・ミドル級8回戦/○叶栄治[大阪帝拳](判定3−0)真木和雄[倉敷守安]●

セミ前は“ゲスト対決”。34歳と36歳、ミドル級のベテラン両雄によるノンタイトル8回戦。
ナカムラエイジから改名したばかりの叶は、11勝(4KO)8敗5分の戦績。95年デビュー、翌年に2人参加ながら西日本ミドル級新人王となるが西軍代表戦で敗退。その後もドロー続きで足踏みし、B級へ昇格したのは99年秋。しかし6回戦を1年でクリアすると、やがて層の薄い階級ゆえに日本ランキングに滑り込み、タイトル戦線にも顔を出し始めた。03年、05年には日本王座に、06年にはOPBF王座に挑んでいるがいずれも敗退。今回はそのOPBF戦以来10ヶ月開けての再起戦となる。
真木は8勝(7KO)8敗1分。30歳になる00年にデビューし、01年には西日本ミドル級新人王に。西軍代表戦敗退後も6回戦は2勝1敗、しかも勝利はいずれも1RKOという派手な結果を残していたが、A級昇格後は2勝6敗と苦戦続き。昨年出場したビータイトで、1回戦で保住直孝[ヨネクラ]にショッキングな失神KOを喫して会場の空気を凍りつかせた事は記憶に新しい。その後、05年西軍代表の田島秀哲[天熊丸木]にKO勝ちして無事に再起したが、今年は2月に1戦し、今度はTKO負け。本来は規定の出場停止期間中だが、ドクターチェックを受けての強行参戦か。
1R。真木は所謂待ちのボクシング。叶がジャブ、ワン・ツー、フックを踏み込んで放つが、ハンドスピード鈍く決定打に欠け、手数優勢でポイント確保のみ。両者の全身の動きからは肉体的な衰えが隠せず、「枯れた老雄の決戦」といった趣。
2R。カウンターのフックを狙いドッシリ構える真木に対し、叶は自在のタイミングでワン・ツー、右アッパーを放ち、そのストレートとアッパーが度々ヒットして優勢に。真木は耐えて忍ぶ時間帯が続く。
3R。このラウンドも叶が動きの小さな真木に淡々とワン・ツー、アッパーを打ち込んでゆく展開。真木はアッパー、ストレート中心にカウンター狙いも、ステップバックで軽く捌かれて打ち負け。
4R。叶のワン・ツー、アッパー、ストレートが次々と決まって大差の形勢。真木は鼻血を垂らしつつ奮戦するが、ジャブの打ち合いに敗れ、連打も際どく捌かれて戦果が上がらない。
5R。真木が漸くラウンド開始直後から動き出し、連打攻勢で主導権を窺うが早々にストップ。叶がワン・ツー中心に左ボディを交え、更にジャブ連打で手数を重ねる。真木の反撃は単発止まりで、どうしてもクリーンヒットが奪えない。
6R。叶のワン・ツー・スリー、ジャブ、ストレートが断続的に決まってヒットを量産。真木が放って来る連打も熟練のダッキングで空転させる。叶はマイペースを守りながら着実にリードを広げてゆく。
7R。叶は手数やや減り、そこを真木がワン・ツー、フック連打で攻勢に出る。だが叶はこれをダッキングブロッキングでほぼ封殺し、左ジャブ、フックを合わせて省エネを図りながら手数を稼いでゆく。
8R。真木はKO狙いの攻勢。だが叶はこれを足使って捌き、ジャブ、ストレートで反撃。真木は渋太く抵抗するが、叶はカウンターを渋く決めて優位に立ち、最後も一発狙いの打ち合いの中で、右ストレート→左アッパーでダメ押し。
公式判定は坂本80-74、野田79-74、半田78-75の3−0で叶。駒木の採点は「A」80-72「B」80-73で叶優勢。
「重厚」か、はたまた「鈍重」か、スピード感に欠ける打撃戦となったが、制したのは攻守の技術で勝る叶。今日の動きを見る限りではタイトル戦線へ復帰する事は厳しそうだが、それでも並のA級選手との格の差は見せ付けた。
真木はカウンター狙いに徹して戦ったが、手足のスピードが足りず、結局は勝負にさせてもらえなかった。ランカー級とは大きな壁がある現状。特に足の衰えが著しく、このコンディションでは選手生活の限界も近そうだ。