駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第1部第6試合・ウェルター級契約ウェイト(65.0kg)10回戦/○松本憲亮[ヨシヤマ](4R2分59秒TKO)ヨードサクシット・ポー・ムアンスリン[タイ国]●

メインイベントはヨシヤマジムの中量級エース・松本憲亮が、もはや何度目になったか判らない日本・東洋タイトルマッチ前哨戦に挑む。
その松本の戦績は19勝(14KO)3敗2分で、現在日本Sライト級8位。日本下位ランカー級選手と東南アジア人と交互交互に戦っていたが、最近はタイ・インドネシア人相手が続いている。派手な戦績とランキングに相応したキャリアを積んでゆきたいところだが、ガードの甘さが故に冒険マッチが組み難い現状か。
相手のヨードサクシットは初来日で、自称戦績8勝(5KO)6敗の戦績。タイ国Sフェザー級9位とコールされたが、ウェルター級契約の試合でこの階級の選手を呼んで来る事自体にマッチメイカーの不誠実さを感じてしまう。
1R。松本はアグレッシブにジャブ、ストレート、左フックをコンパクトにヒットさせてゆく。しかしヨードサクシットも左ボディストレートにオーバーハンドフックで松本の拙いガードを脅かす。体格で勝る松本ペースは揺るがぬが、危なっかしい印象も抱かせる。
2R。松本はジャブ、ストレートをロングレンジから放ってゆくが、ヨードサクシットのカウンターが掠めてヒヤリ。ラウンド終盤には密着距離からボディ中心にフック、アッパーを突き上げてポイント確保は磐石だが……
3R。松本は、カウンターと右フック狙いのヨードサクシットをロープに詰めつつ、ストレート中心にヒットを奪う。だがクリンチ多く膠着気味の凡戦ムードに。ラウンド後半、松本が上下に手数・ヒットを散らして稼ぐが、ダメージブローは少ない。
4R。松本は前へ詰めて来るヨードサクシットにショートアッパーを突き上げて数的優位を築く。ヨードサクシットは松本の打ち終わりを狙ってボディストレート、ショートアッパーを放つが実らない。ラウンド後半には松本の一方的攻勢となるが、攻めが淡白で決め手に欠ける展開。それでもダルファイトを打ち切らせたら日本一の宮崎レフェリーは、ラウンド終了間際に突如TKOを宣告。会場も戸惑う微妙なタイミングだったが、勝敗の帰趨は決していた上に好試合に転じる気配もなく、これも一つの見識とは言えるかも知れない。
松本が2階級下のタイ国ランカーに淡白な試合振りで攻めあぐんでいる内に、業を煮やしたレフェリーに試合を打ち切られてしまった。今日も攻勢のメリハリの無さとガードの甘さが浮き彫りになり、前途に立ち込める暗雲は更に深く濃くなった印象がある。これは「ブロックの反応が鈍い→カウンターや打ち終わりを狙われての被弾を怖れる→攻めが淡白になる」という悪循環が形になって表れているもので、相当に根深い“症状”と言える。仮定の話として、このままの状態で日本タイトルマッチに挑んだ場合、恐らくは王者・木村が好きなタイミングで(クリーンヒットなどではなく)ノックダウンやカウントアウトが決められるという、松本にとって絶望的な内容となる可能性が高い。