駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・フェザー級契約ウェイト(127p)10回戦/○片山博司[アポロ](判定3−0)ウィラチャイ・チュワタナ[タイ国]●

片山は7勝(2KO)無敗1分と、負け無しの戦績をキープしているアポロジムの新エース候補だ。しかしここまで8戦の対戦相手には、ある時は相当に、またある時は極度に恵まれたと言わざるを得ず、未だ「作られたエース」という感が否めない。今回は昨年12月のA級昇格緒戦に引き続いてタイ人相手、しかも招聘禁止処分明けの噛ませ犬。せめて内容のあるKO勝ちで周囲に実力をアピールしたいところだが……
対するウィラチャイは自称戦績9勝(5KO)11敗でタイ国フェザー級10位。しかし国内戦績はここまで10戦して10敗で、その無気力試合ぶりがJBCの知る所となって06年の招聘禁止選手に指定された経歴を持つ。今回は一昨年11月、光山健[金沢]にKO負けを喫して以来の来日。色々な意味で試合振りが気になる選手である。
1R。中間距離でジャブ中心の牽制。片山の攻撃に迫力無く、目一杯頑張ってウィラチャイと同レベルの力量という印象。手数を出さず抵抗弱いウィラチャイに片山が手数集めてポイント上の優位は確保したが。
2R。このラウンドもやや静かな攻防。片山は時折強振見せるがパワー、精度不足で不発。ウィラチャイは軽いジャブを申し訳程度に当てつつ、ガード固めて淡々と時間を潰してゆく。
3R。片山は積極的に手数を出すが、ウィラチャイに軽く捌かれてしまい、逆に手数浴びせられる場面も。ウィラチャイはボディワーク使いつつ、左のダブルなどでヒット数優位。ラウンド終了30秒前になって片山は漸く左フック1発ヒット、ウィラチャイに半ば促されるようにして手数を出したが不発。
4R。片山は先手で手数を出すも、やや消極的。精度も悪くヒットを稼げない。ウィラチャイは時折連打やジャブで細かくヒットを奪い、手加減しつつも力の差を見せ付ける。ゴングが鳴るや、ウィラチャイは大あくびをカマしつつ背筋をストレッチしながら悠然と自コーナーに帰還。
5R。片山はウィラチャイに促されるように手数を出すが、楽々捌かれて打ち終わりにヒットを浴びる始末。手数は片山だが、ヒット数と主導権ではウィラチャイが明らかにリード。
6R。業を煮やした片山が強引に距離を詰めてボディへ手数を集めリード奪うが、乱雑さ否めずヒットらしいヒット無し。ウィラチャイは攻め込まれてもジャブを軽く合わせて淡々と凌いでゆく。
7R。片山がアグレッシブに出ようとするが、ウィラチャイはジャブを合わせて試合をコントロール。酷くレベルの低い水準で「圧力か、迎撃か」で採点を迷うラウンド。
8R。ジャブの差し合い、牽制と、まるで序盤戦のような展開で、互角の相撃ちが目立つ。手数は片山がリードするも、ウィラチャイも時折連打を見せて抵抗。ラウンド終盤、片山が手数をボディに集めてようやく明確なリードを奪う。
9R。片山はボディに手数を集めてポイントをかき集める作戦。ウィラチャイは左ジャブを合わせるが消極的。手数を浴びるだけ浴びて淡々とやり過ごすのみ。
10R。このラウンドも片山はボディ狙いだが、ガードの上を叩くばかりでダメージを与え切れない。ウィラチャイは手数少なく、流し気味に時間を空費。距離をコントロールして痛い目に遭わないよう気遣いつつ、淡々と試合を終えた。
公式判定は坂本98-93、北村98-94、野田97-94の3−0で片山。駒木の採点は「A」97-93「B」98-94で片山優勢。
片山がまたしても地力不足を曝け出した。噛ませの中の噛ませ・ウィラチャイに軽くあしらわれ、手数を打たせてもらい、やっとの事でポイントアウト。攻撃の迫力は未だ4回戦レベルで、ディフェンスも心許無い。意地悪な言い方をすれば、今後どうやって勝ち星を稼ぎ、日本・東洋ランキングを窺うのか、別角度から興味が沸いて来る……といったところ。