駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・Sライト級契約ウェイト(141p)10回戦/△畑大輔[進光](判定1−1)バーヌン・サコームシルパ[タイ国]△

メインイベントは進光ジムのエース格・畑が“客演”。試合間隔1ヶ月のハードスケジュールだが、近況内容芳しくないだけに、ここらで荒療治というのも一手か。ノーランカータイ人を相手にどのような試合を見せるか。
畑は11勝(1KO)3敗2分の戦績。若手時代は肝心な所で躓いて地味なキャリアを余儀なくされるが、6回戦からは日本人から着実に勝ち星を挙げて日本ランキング圏内に浮上。山崎晃[六島]には跳ね返されたものの、昨年9月には西川和孝[中外]に苦戦しつつも負傷判定を拾ってランク入り。年末にはタイ国王者を降して東洋ランクにも入った。但し、名目上地位が上がると共に試合のパフォーマンスは急落しており、今回はメインイベンターとして「勝った上で魅せる」のが課題になる。
対するバーヌンは自称戦績5勝(1KO)3敗で、今回は昨年12月以来2度目の来日。初来日時はSウェルター契約で細川貴之[六島]と接戦を演じており、易々と噛ませるタイプのタイ人ではなさそうだ。
1R。畑はカウンターを警戒しながら左のジャブ、フック中心に手数を稼ぐ。バーヌンはタイ人にしてはアグレッシブだが、畑のクリンチ、ダッキングブロッキングに捌かれてヒットを奪うに至らず。
2R。畑がジャブ、ワン・ツーの猛連打で先制するが、手数だけでヒットに繋がらない。逆にバーヌンはアグレッシブな圧力・強打・手数攻めを展開し、畑を防戦一方に追い込む。相撃ちになってもバーヌンが優勢で、ラウンド後半になると畑はロープに詰められて強打を浴びせられっぱなし。
3R。畑は足を使いつつジャブ、ワン・ツーを狙うが、バーヌンの強引な圧力攻勢を捌き切れず、密着されては強打を捻じ込まれる。バーヌンはガードも割に手堅く、畑を効かせる一方で自身はダメージ薄い。ゴング直後(ほぼ同時)のバーヌンのパンチに対し、原田レフェリーが一旦減点を宣告するもジャッジの進言で撤回する一幕も。採点の公正化が急速に進む西日本地区だが、レフェリングに関しては未だ道半ばか。
4R。畑はラウンド序盤こそ足使った組み立てでペース掴みかけるが、バーヌンの強引なパワーファイトに受身を強いられる。それでもカウンターの右フック有効打で見せ場を作るが、バーヌンはロープ際での強打が力強い。
5R。畑はこのラウンドもジャブ連打とストレートで先制するが、バーヌンの圧力を受け、右2発のクリーンヒットを被弾。畑は再び足を使いつつ左アッパー中心にヒット重ね、ここはどうにか捌ききったが格下相手に苦境が続く。
6R。畑はまたしてもジャブとストレートで先制。密着しても左ボディ、右ストレートで効かせ、更には再び足を使いつつの右ストレート狙いに出て、このラウンドは明らかに優勢。バーヌンは圧力、手数共に衰え、畑のチャンスは膨らむが、肝心の所で攻めあぐむ悪癖が出て取り逃がす。
7R。先のラウンドはクルージングだったのか、バーヌンの圧力が復活。畑に左カウンターを決め、更に右ストレートで重たい追撃を見舞う。畑は左アッパーで凌ごうとするが、パンチ力で見劣る分が響いてダメージ量歴然。このラウンドは主導権も五分。なお、このラウンドはバーヌンがクリンチ時に畑を投げ飛ばした事に対し、減点1のペナルティ。減点を宣告する時の原田レフェリーは実に活き活きとしているように見えるのは気のせいか(笑)。
8R。密着距離、膠着気味の打撃戦。畑が鋭い手数、ヒットを見せるが次第にバーヌンの右ストレート、重いボディブローで動きを止められ、アッパーからの連打と右ストレートを浴びて効かされてしまった。
9R。バーヌンの圧力に畑は抵抗出来ず、ロープ際で重い手数を浴びてしまう。その後はリング中央で密着戦に。膠着した展開だがバーヌンが先手、先手で攻め、ラフでタフな試合を優位に進める。
10R。バーヌンは最後までアグレッシブに圧力、強打のラフな攻め。畑は主導権を見失い打ち合いでも五分にまとめられて大苦戦。しかしラウンド終盤に距離を開けたところでヒットを連発、ゴング前には右アッパーを有効打して形勢挽回に成功する。
公式判定は宮崎95-94(畑優勢)、北村96-95(バーヌン優勢)、野田95-95の三者三様ドロー。駒木の採点は「A」95-94「B」96-95バーヌン優勢。バーヌンは7Rにレスリング行為で減点1を課せられており、これが無ければ畑が0−2で負けていた事になる。
畑がタイ人の強引な圧力強打攻めをマトモに喰って大苦戦。減点に救われてのドローで何とか首が繋がったが……。非力なジャブ、ストレートで足止め出来ないパワーファイターとは、やはり相性が悪い様子。また、インサイドワークや守備面全般でも課題が改めて浮き彫りに。現在の地位をどう守ってゆくか、迫り来る岐路はいずれの道も険しい。