駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第9試合・Sライト級10回戦/○大崎丈二[ウォズ](判定3−0)シントートング・フルオライトジム[タイ国]●

メインイベントは、今やウォズジムの“暫定エース”的ポジションに就いた大崎が連敗脱出と東洋ランク獲得を賭けて戦う正念場の一戦。
大崎は9勝(5KO)3敗2分の戦績。新人王戦は04年こそ西日本2回戦で敗退するものの、05年には5勝4KOで全日本新人王に到達。日本ランク10位も獲得する。しかし、その後は土居裕介[塚原京都]に判定勝ちするも大苦戦。西尾彰人[姫路木下]にはジャッジの非常に難しい試合ながら連続で判定負けを喫し、明らかに伸び悩みの現状である。今回は初のメイン登場で、連敗脱出と東洋ランカー撃破をノルマとする高いハードルを課せられた。まさに三重苦、四重苦であるが、この重圧を乗り越え再浮上を果たして欲しいと思わせるだけのポテンシャルを秘めた存在でもある。
対するシントートングは自称戦績12勝(11KO)4敗で、現在タイ国Sライト級王者でOPBF同級8位の東洋ランカーでもある。来日成績は0勝4敗と冴えないが、昨年は山本大五郎[金沢]、畑大輔[進光]相手に粘り強い抵抗を見せるなど、タダでは転ばないだけの粘り強さのようなものも窺える。今回も相手にKO勝利を献上するつもりは毛頭無いだろう。
1R。ジャブ、ワン・ツー中心に淡々とした打ち合い、捌き合い。ヤマ場の無いままラウンド終盤に突入した所で大崎が右ストレート、左ボディを有効打。シントートングはムキになって反撃を試みるが、大崎はステップワークでこれを捌く。
2R。大崎がジャブ中心に手数を出してゆくが、シントートングが時折放つ強打が有効に機能する。大崎は相手の突進を受け、更に左ボディ、右ストレートと、自身の攻撃をそのままお返しされてダメージを負ってしまった。
3R。シントートングの圧力が強い。右ボディストレートの有効打から連打をまとめるシーンもあって一旦は優勢に立つが、大崎も手数出しつつ断続的にストレートを浴びせて形勢を微差〜互角の範囲まで挽回する。
4R。淡々とした打撃戦が続く。大崎が先手でジャブの手数稼ぎに出て散発的ながらヒットも奪う。シントートングは被弾する度にラッシュを仕掛けてゆくが、大崎の捌きの前に不発。
5R。大崎がこのラウンドも左中心の手数稼ぎと冷静なディフェンスで淡々とリードを積み重ねる。だがラウンド終盤、シントートングが右ストレート連打をまとめて見舞い、有効打を奪って見せ場獲得。
6R。淡々とした展開が続く。このラウンドはタイ人が手数でも先手で、数的にはほぼ互角。ヒットらしいヒットは僅少で採点が難しいが、シントートングの強打に大崎がガードごと吹き飛ばされる場面も。
7R。このラウンドも淡々とした流れ。大崎がジャブで手数リードし、右ストレートでは2発ヒット。シントートングは強振をスカされて空回り気味だったが、ラウンド終盤に右ストレート1発見舞い、コーナーに追い詰めて更に圧力と手数を浴びせた。
8R。大崎がラウンド前半、細かいジャブで手数でヒット数を稼ぎ、右ストレートで有効打も奪う。だがシントートングも猛烈な強打で反撃し、有効打数では互角の範疇。大崎はこのラウンド、採点上は小差有利な立場だがタフなタイ人に苦しんでいる感ありあり。
9R。ショートレンジ打撃戦。タイ人が手数と圧力で攻勢をアピールするも、大崎はラウンド後半から近い距離で手数浴びせて抵抗。ヤマ場の無い試合展開だ。
10R。密着距離で打撃戦。大崎がシントートングの圧力、手数に苦しみつつも右ストレートやアッパーで有効打連発してヤマ場。シントートングは強打の威力十分だが、ガードを崩して攻めようという気持ちが感じられなかった。
公式判定は宮崎98-93、野田98-93、坂本97-94の3−0で大崎。駒木の採点は「A」96-94「B」99-95で大崎優勢。
大崎がタフなタイ人に苦しめられつつも、印象的な有効打を要所で見せて判定勝ちに持っていった。これで最低限のノルマは果たした事になるのだが、別の見方をすれば堅実と隣り合わせの面白みの無さが目立った試合でもあった。メインイベンターの重圧と役割を果たす事の難しさを実感した事だろう。この苦労を糧に次戦以降更なる飛躍を期したい。