駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Sバンタム級10回戦/●坂本裕喜[進光](判定0−3)丹羽賢史[Gツダ]○

坂本は14勝(6KO)5敗4分の戦績で、現在東洋太平洋バンタム級15位。99年に西部日本地区の小倉高橋ジムからデビュー戦勝利を飾るが、ここから1年のブランクを経て進光ジムに移籍・再始動する波乱含みの経歴を持つ。新人王戦などのトーナメントは回避し、4回戦、6回戦をそれぞれ1敗ずつでクリア。03年からはA級でも最高5連勝を含む好成績で高い勝率を維持したが、日本ランカーの武本在樹[千里馬神戸]、熟山竜一[JM加古川・引退]といった面々には及ばず敗退している。06年には強豪OPBF王者のウェート・サックムアングレーンに挑戦するが判定負け。その“後遺症”か、再起後2戦はやや物足りない内容・結果に終わっている。東洋ランキング維持のためにもこれ以上の停滞は許されないが……
丹羽は6勝(2KO)8敗3分の戦績。02年にデビューするが、B級資格獲得までの7戦を要し、04年の新人王戦でも緒戦敗退と、やや伸び悩み気味のグリーンボーイ時代を過ごす。6回戦でいきなり連勝を果たすが、そこから4連敗。06年10月に久々の勝利を得たものの、今年はタイ国遠征でウィラポン、ナパーポンといった世界上位ランカーの相手役を務める厳しいマッチメイクを課せられ、共に8R判定負けを喫している。今回は今年初めての日本での試合。厳しい環境で揉まれた成果を出す事が出来るか。
1R。両者中間距離からジャブ中心の慎重な立ち上がり。ラウンド前半、坂本がやや力んだ様子を見せた隙を突いて丹羽が細かくヒットを重ねるが、終盤には坂本も右ストレートを2発ヒットさせて逆襲。
2R。このラウンドも序盤はジャブ中心の展開。互いにブロック、パーリングで捌き合って静かな攻防がしばらく続いたが、やがて丹羽がジャブからワン・ツー・スリーまで繋げてヒットを奪うシーンが2度、3度。坂本もフックをボディへ打ち込んだが、これは大振りで単発気味。
3R。丹羽の精度の高い左が光る。ジャブ中心にヒットを重ね、ボディブロー、フックまで繋げてヒット数でリード。坂本の攻めは捌かれて苦しいが、左フックで上下に有効打を散らして小差に踏みとどまる。
4R。ショート〜クロスレンジで打撃戦。共にジャブ起点にワン・ツー、右アッパー、左右ボディ、左フックと多彩なショート連打を見せて接戦。丹羽が序盤、坂本が中盤を制して優劣は微妙。
5R。このラウンドもクロスレンジでの攻防。丹羽がアッパー連打からのラッシュで先制するが、坂本もアッパーをクリーンヒットして効かせる。その後も両者はアッパー、ボディ中心に激しい手数合戦を繰り広げた。
6R。このラウンドも打撃戦。丹羽はジャブ中心に手堅い攻めだが、坂本は強引なフック攻勢から印象的な連打を見せる。しかしラウンド終盤には丹羽もボディへヒットを連発する激しい抵抗を見せ、ここも互角。
7R。丹羽が坂本の強打攻めを捌きつつ、右アッパー→左ストレートでクリーンヒット。更にボディ連発で見せ場。その後はやや膠着気味だが、手数絶やさずアグレッシブに攻めた丹羽のラウンド。
8R。クロスレンジの攻防。ラウンド序盤は丹羽がボディブロー、右アッパー、ストレートで先手取るが、中盤に入って坂本が強引なフック中心に猛連打。終了ゴング直前には再び丹羽が攻勢に出て、またも互角のラウンドに。
9R。クロスレンジ打撃戦。密着しながら共に連打を放って一進一退の展開。強引ながら視聴覚的にインパクトの強い坂本の連打、丹羽の手数伴う激しい抵抗、ここも差は小さい。
10R。またしてもクロスレンジ。坂本が開始早々見栄えする連打で先手。丹羽もすぐさま反撃するが、主導権を奪わず後手、後手に回る。クリーンヒットに乏しい展開となったが、最後まで両者手数絶やさずアグレッシブな打ち合いゴング。
公式判定は宮崎98-93、原田98-93、坂本97-94の3−0で丹羽。結果的にユナニマスの中差判定となったが、内容は新井田×高山のような「明確なヒット数に乏しいが視聴覚に訴える強振」と「迫力は及ばないが確実にヒットするジャブ、ストレート」の比べ合いで実に採点の難しい試合。駒木は「A」採点を坂本寄りに、「B」採点を丹羽寄りにつけた結果「A」96-94坂本優勢「B」97-97イーブン。つまり公式ジャッジは坂本の迫力はあるが精度不完全なフック連打を度外視し、丹羽の確実なストレート系パンチを重視して採点したと思われる。通常、西日本の審判は坂本のような戦い方を好むのだが、彼に対する相当な心証の悪さが窺える。
激しいクロスレンジ乱打戦が繰り広げられたが、攻めの正確さと守備力で勝る丹羽がジャッジの支持を集めて中差判定勝ち。タイでの厳しい経験を見事に活かした。
坂本は強引なフック攻勢でインパクトのある攻めを見せたが、やや精度に欠ける所を見咎められたか。先述のように、本来ジャッジ好みのする内容を作ったにも関わらずこの結果という事は、ここしばらくの凡戦が微妙に審判団の心証に悪い影響を与えているのかも知れない。