駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第7試合・Sウェルター級8回戦/●シントゥン・ギャットブサバー[タイ国](判定0−3)丸元大成[Gツダ]○

赤コーナーに座ったシントゥンは、公称7勝(6KO)4敗の戦績。04年にPABA王座、05年にタイ国王座、06年にABCO王座を獲得するなど、東洋圏のウェルター級では知られた存在。過去の来日でも2勝(2KO)1敗と勝ち越しており、国籍だけでは油断できない選手の典型と言える。
これがOPBF王座陥落後の再起戦となる丸元は20勝(9KO)8敗1分のサウスポー。Sウェルター級でWBC26位、OPBF15位、日本5位のランクを保持している。
99年にデビュー。01年、2度目の挑戦となった新人王トーナメントではウェルター級西軍代表まで進出。音田隆夫[トクホン真闘]との全日本決勝は2RKOで敗れるも、翌年から2年間負け無しの6連勝をマークし、A級上位の実力をアピールした。04年からはリスクの大きいビッグマッチにも積極的に挑み、ビー・タイト出場(1回戦で日高和彦[新日本木村]に敗退)、レブ・サンティリャン[比国→石神井スポーツ]が保持していたOPBF王座に挑戦する(12R判定負け)など貴重なキャリアを積む一方、黒星以上の白星も挙げてランカーとしてのポジションを確固たるものとする。05年末から06年5月には、今回の相手シントゥンら東洋アジア人相手のノンタイトル戦で連続KO負けを喫する大不振に陥るが、同年9月、山口裕司[ヨネクラ]が保持していたOPBF王座に挑戦し、7RTKO勝ちで殊勲の王座奪取を達成。この王座は07年2月に1度防衛後、7月に元王者・サンティリャンにKOされて失陥するが、日本ボクシング界での地位を再び確立させた。一度敗れた相手との再起戦は、過去と決別したいという思いの表れか。
1R。ショートレンジで打撃戦。丸元は軽打中心でダメージブローの少なさが気にかかるが、正攻法の攻めで数的優位に立つ。シントゥンは手堅く守りを固めながら右ストレート、左アッパーなど少ない手数で一発狙い。
2R。ショートレンジでの攻防。シントゥンはガード・ブロッキング手堅く、ジャブやボディフックで手数・ヒットを稼ぐ。丸元もジャブで牽制しながらボディフックやワン・ツー→アッパーなどの連打で印象的な場面を作る。
3R。中間〜ショートレンジで重厚なワン・ツー、フック合戦。ジャブ中心の丸元に対し、時折ワン・ツー、ボディを打ち込むシントゥン。終了ゴング直前、丸元がストレートを連続有効打させて見せ場。
4R。勝ちにこだわる丸元は、やや消極的な試合運び。時折派手なコンビネーションを見舞うが、単発のジャブ、ワン・ツーが主体。シントゥンはマイペースを崩さず、淡々と仕事をこなすように攻め、守る。
5R。丸元は時折ワン・ツーやアッパーで有効打を奪うが、慎重なポイントアウト狙いを崩さない。シントゥンも淡々とした試合運びでワン・ツー、ボディでヒットを返すが、インパクト不足。
6R。丸元は淡々とジャブ起点からの連打狙い。有効打を奪っても追おうとせず、ダルファイトの気配が漂う。ポイントでは劣勢明らかなシントゥンも工夫の無いボディ中心の攻めに終始。数では丸元の優勢が明らか。
7R。丸元はシントゥンの攻めを確実に捌きつつ、隙を見てショートフック、アッパーを鋭く決める。シントゥンはカウンターの右で丸元に冷や汗をかかせるが、チャンスはその1度きり。
8R。ショートレンジ打撃戦。出だしの打ち合いを制した丸元のペースで試合が進行する。丸元はシントゥンの手数を捌きつつ、アッパー、フックで着実にヒットを稼いでいった。
公式判定は坂本79-75、宮崎78-74、半田77-76の3−0で丸元。駒木の採点は「A」80-72「B」80-73丸元優勢。
丸元が慎重な試合運びで再起とリベンジを達成。しかし勝ちに徹したため、決め手を欠いたダルファイトに。丸元本人も試合後のインタビューで今回は試合内容よりも勝利優先だったと述べていたが、客席を冷やしただけでなくジャッジの心証を損ねてポイントを失った事実は責められて然るべき。今日の試合はあくまで過去の清算に過ぎない。