駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第12試合・ミドル級4回戦/△坂本一人[本田F](判定1−0坂本勝者扱い)岩尾剛[泉北]▲

坂本は西部日本地区唯一のエントリー。未勝利1敗の戦績、しかも1年4ヶ月ぶりの再起戦が西軍代表戦となった。岩尾は7勝(2KO)無敗1分。
1R。坂本は地力劣勢を意識してアグレッシブに前、前へ出て手数攻め。岩尾はサウスポーとの相性の悪さを早くも露骨に覗かせ、殆ど手数を出せないまま被弾ばかりが重なってゆく。ただし、やっとの事で当てた右カウンターの威力は流石で、これ1発で形勢は互角近辺まで戻った。
2R。岩尾は全く調子を狂わせている感じで、クリンチ際にドサクサ紛れに当てたヒット数発のみの戦果。更に坂本の手数を捌き切れず、守備勘の鈍りまでも見え隠れする。
3R。メチャクチャな泥仕合に。岩尾はクリンチからショートを当てて何とかポイント確保へ道筋。坂本はクリンチと乱暴なパンチばかりで全くボクシングとして成立していない。
4R。坂本は必死の形相で抱きつくのみ。岩尾はこれを振りほどきながらショートを浴びせてポイント争いを優位に進めたが……
公式採点は福本39-38(坂本支持)、古田38-38、桑田38-38のマジョリティドロー。イーブンとした2人の優勢点投票により坂本が勝者扱い。駒木の採点は「A」39-37「B」40-38岩尾優勢。岩尾が西日本1回戦に続きサウスポーに対する極度の勘の悪さを露呈する大凡戦を演じながらも、後半戦はボクシングにすらならない有様の坂本にヒットを立て続けに浴びせていたのだが……。本来の岩尾を知っている西日本の審判なら間違いなくそちらに優勢点が付いていた内容で、これがアウェイの恐ろしさ。
しかし、納得のいく内容の判定勝ちならともかく、未勝利のままで大凡戦をやらかした選手を西軍代表にする審判団の判断は如何なものか? これでもし東の代表が万が一不慮の病気や事故で棄権した場合、日本ボクシング史上初の未勝利日本ランカーが誕生してしまう。本当にそれでいいのですか、と問いたくなる。
さて、坂本は敵失にも助けられて試合前半を強引に支配。地元ジャッジの支援も集めてドロー勝者扱いながら大殊勲の後楽園進出を果たした。今にも泣き出さんばかりの悲壮な表情、セコンドの指示に恐怖感を振り払うが如く絶叫の「ハイ!!」で応えるその姿には、観る者の心を打つモノが確かに宿っていた。しかし実力レベルは4回戦でも下位クラス。本来なら後楽園に上がれるような選手ではなく、全日本決勝の展望も極めて厳しい。
岩尾は最悪の内容でまさかの敗退。西日本1回戦でも露呈したサウスポー対策がまるで進んでいなかったという致命的なまでの不作為は、厳しく批難されても止む無しであろう。スパーリングパートナーにも事欠く地方の小規模ジム所属という弱味はあるが、それに甘えてほしくは無かった。非常に残念である。