駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第8試合・バンタム級10回戦/○名城信男[六島](3R2分30秒TKO)ペットクロンパイ・ソーターンティップ[タイ国]●

WBA王座陥落からの再起戦となる名城は9勝(5KO)1敗。現在はWBA2位、WBC13位、日本では未公認のWBOでも13位の世界ランクに位置している。
38勝19敗という、後の世界王者としては極めて平凡なアマ戦績を経て03年にB級デビュー。3連続短時間KO勝利の後、4戦目で元・日本ランカー・竹田津孝[森岡・引退]を、5戦目で当時世界ランカーだった本田秀伸[Gツダ]をそれぞれ撃破して世界ランカーへ急浮上。6戦目では指名挑戦者として当時の日本王者・田中聖二に挑み10RTKO勝利を収めるが、この試合は周知の事実となったリング禍が発生し、田中が試合後に死去。ショックを受けた名城は現役引退も考えるほど追い込まれたという。
しかし周囲のバックアップもあり一念発起して戦線復帰。7戦目でWBA王座指名挑戦権争奪戦も兼ねた日本王座初防衛戦でプロスパー松浦[国際・引退]に判定勝ちし、そして8戦目で遂にマーティン・カスティーヨが保持していたWBA王座を奪取すると共に、日本最短キャリア世界戴冠のタイ記録をマークした。
06年秋の初防衛戦では元スパーリング・パートナーのエデュアルド・ガルシア相手に手こずるも大差の判定勝ちを果たしたが、今年5月の2度目の防衛戦で元王者で指名挑戦者のアレクサンデル・ムニョスに敗れてプロ初黒星と共に王座陥落。その後は交通事故で頚椎を負傷するなど不運もあり再起が遅れたが、約7ヶ月ぶりにリングに上がることとなった。


対するペットクロンパイは来日12回目と日本のボクシングマニアにもすっかり御馴染みの存在。自称戦績14勝(4KO)14敗1分で、現在の地位はOPBFのSフライ級12位、タイ国同級1位。タイ国王座の戴冠経験もある。だが過去の来日成績は1勝9敗1分と“お仕事”臭の漂うもので、06年には同じく世界王座陥落からの再起戦に臨んだ川島勝重[大橋・引退]の相手も務め、相澤国之[三迫]とOPBF王座決定戦に出場し、今年に吐いてtからも4月に坂本裕喜[進光]に白星を献上している。


1R。名城はフック中心にアグレッシブな仕掛けで手数先行。ペットクロンパイもワン・ツー中心に鋭い反撃で積極的に試合を作ってゆく。名城は少々大振りが目立つが、それでも数的優位をキープして失点は許さない。
2R。名城からアグレッシブに仕掛けて激しい打撃戦へ。ワン・ツー、フックの単発やアッパー→ストレートのコンビなどを実に良いタイミングで浴びせてゆく。名城の特性の一つであるパンチの取捨選択の巧さが戻って来た。その後も左ボディ→顔面→右のトリプルをクリーンヒットさせて効かせると、ロープ際での猛攻でダウンをもぎ取った。
3R。ペットクロンパイは勝負を急いで早くもラッシュを敢行。捨て身とも言える攻勢から右フックをまともに食らわせたが、名城は落ち着いてショート連打を連続して打ち込んでこのラウンド最初のダウンを奪う。ペットクロンパイは立ち上がるもフラフラで、力無い抵抗の末に立ったまま力尽きてレフェリーストップに身の安全を救われた。
名城が、プロのキャリアでは初めてとも言える完全格下相手のチューンナップマッチで純然たる実力の差を見せ付けて圧勝。久々に名城らしいボクシングを披露し、健在振りをアピールした。とりあえずは非常に良い形でリスタートを切ったと言えるだろう。