駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第4試合・ウェルター級契約ウェイト(143パウンド)10回戦/△山本大五郎(判定1−1)パリンヤー・ジョッキージム[タイ国]△

山本は12勝(9KO)4敗3分の戦績で、現在のランキングはOPBFのSライト級15位、日本同級9位。大学生時代の99年に国体優勝など、アマで豊富な実績を残して01年にB級デビュー。2戦目で当時A級3戦目の日高和彦に、9戦目で当時は2度目のOPBF王座獲得へ向けて再起中だったレブ・サンティリャンに敗れたものの比較的順調なキャリアを積み重ね、ドローを挟みつつA級5連勝もマークして04年にはSウェルター級で日本ランキングにも登載された。ただし良い対戦相手になかなか恵まれず、チャンスを得た05年1月のダウティ・バハリ戦では分の悪いドロー、06年8月に金正範に挑んだOPBFタイトル戦では大健闘するも7RKO負けを喫し、あと一歩のところで成功の階段を昇りきれないでいる。前回、昨年10月には西尾彰人[姫路木下]に痛恨の敗北を喫し、ランキングが急降下。今回は再起戦となる。
パリンヤーはタイ国ウェルター級6位で、今回が4度目の来日。過去の日本3戦は1勝2敗で、前回昨年11月の試合では石橋正和[六島]に6R判定勝ちを収めている。
1R。山本は慎重な立ち上がり。パリンヤーのボディ連打や右ストレートを浴びてヒヤリとするシーンもあるが、ラウンド終盤には左カウンター、そして右ストレートのクリーンヒットでノックダウン。パリンヤーはカウント9で立ち上がるもフラフラでゴングに救われた形。
2R。山本はクロスレンジから上下にフック、アッパーを決めてゆくが、立ち直ったパリンヤーも荒々しく5〜8連打のコンビネーションを度々返していってアグレッシブさをアピール。山本はこの猛反撃を捌き切れずに、やや圧され気味。
3R。山本は左ジャブ中心の牽制で主導権確保を窺う。時折ショートや左ボディを狙って攻め込むも、パリンヤーに間隙を突かれて左アッパー、右ストレートの打ち下ろしなどを浴びてしまう。
4R。このラウンドもパリンヤーの右ストレート、アッパーが脅威。山本はこれをマトモに被弾してしまい後退するシーンもあった。それでも山本は鋭いコンビネーションでヒットを奪って反撃。パリンヤーの余裕を消し去る事は出来なかったが、ポイント上は際どいところまで持っていった。
5R。山本の左が漸く完全機能。的確なジャブに加えて上下へ打ち分けるダブルなどで先制し、左ボディを再三叩き込んで優勢に立つ。パリンヤーの右はこのラウンドもヒットしているが、印象薄いか。
6R。山本が左右ボディ→左、というコンビで先制。その後も左ジャブ、ボディ中心にヒットを集める。パリンヤーものらりくらりと捌きながら右ストレート、アッパー、ボディ連打で渋太く反撃。
7R。山本はこのラウンドも左ボディ中心にジャブ、ストレートなど。しかしパリンヤーは右アッパーをクリーンヒットさせ、更にストレート、アッパーを力強く決めてラッシュも敢行。
8R。パリンヤーのラッシングとロープ際での連打攻勢が目立つ。山本はラウンド終盤に入るまで打ち終わり狙いの反撃で思ったような効果を得られずにいたが、終了ゴング直前に左フックをクリーンヒットさせてパリンヤーをグラつかせ、一気に形勢挽回。
9R。山本はこのラウンドも打たれる苦しい展開。後手に回りつつも右ストレートをクリーンヒットさせて対抗するが、パリンヤーは的確なジャブ中心に、ストレート、アッパーなどで老獪に立ち回ってヒット数でリードを奪う。
10R。山本の強打、パリンヤーの連打で際どい内容。山本は強打で効かせたが、パリンヤーのアッパーやストレートを捌き切れずに互角近辺の内容に持ち込まれた。
公式判定は半田96-95(山本支持)、宮崎95-94(パリンヤー支持)、原田95-95の三者三様ドロー。駒木の採点は「A」95-94パリンヤー優勢「B」97-96山本優勢。接戦となった終盤ラウンドをどう評価するかで採点が割れるであろう内容。三者三様ドローは絶妙な落としどころ。
山本が1RにKO寸前の勝勢に立ったが、そこから相手のアグレッシブな連打を捌けずに苦戦。終わってみれば引分までポイントを喰い取られた。守れずに後手に回り、攻めてもあと一歩が決めきれない。恵まれたパンチ力という名の宝が持ち腐れてしまっている。