駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

第6試合・Lフライ級契約ウェイト(106パウンド)10回戦/○高山勝成[真正](9R1分24秒TKO)ガオフラチャーン・シットサイトン[タイ国]●

高山は19勝(7KO)3敗の戦績で、WBAミニマム級2位、WBC同級13位。00年にエディタウンゼントジムからデビュー、01年の新人王戦では西日本予選から6連勝で全日本Lフライ級新人王となる。02年も3連勝してデビュー10連勝を達成し、堂々と畠山昌人[協栄札幌赤坂・引退]の日本Lフライ級王座に挑戦するが、これに失敗して初の敗北。この後Gツダジムに移籍して再び4連勝すると、05年4月には、試合中の事故でイーグル・デーンジュンラバンからイサック・ブストスの手に渡っていたWBCミニマム級王座に挑戦して小差判定勝利で世界王者に。この王座はすぐさま傷の癒えたイーグルに敗れて失陥するも、06年には再起2戦目で小熊坂諭[新日本木村]が長年保持していた日本タイトルを奪取して地力の確かさを証明した。その後は新井田豊[横浜光]のWBA王座への挑戦が決定するが、新井田の負傷に伴い、カルロス・メロとの暫定王座決定戦が急遽決定。これに勝利して「暫定」ながらWBA・WBC二冠制覇に成功している。明けて07年、満を持して新井田とのWBA王座統一戦に臨むが、際どい判定で敗れて暫定王座から転落。この試合では所属ジムとの金銭トラブルも発生して移籍騒動も発生。結局は新設された真正ジムへの移籍となり、10月の復帰戦を判定勝ちして再出発を果たした。
対するガオフラチャーンはタイ国ミニマム級王者でOPBF同級1位。自称成績は5勝(5KO)5敗。過去4度の来日では1勝3敗、前回来日の07年11月には和賀寿和[畑中]の保持するOPBFタイトルに挑戦、惜敗している。
1R。ミニマム級らしいスピード最優先の展開。ラウンド前半は互いに相手の連打をスピードあるステップとボディワークで捌きあった。高山はラウンド終盤にロープへ詰めて連打を決めるがダメージは小さい。ガオフラチャーンも鋭い右で応戦した。
2R。ガオフラチャーンは激しいラッシュを見せたと思えば、右ストレート、左カウンターでヒット、有効打を奪ってみせる。高山は小気味良く連打で攻めるが決め手に欠け、受身に回るシーンも目立った。
3R。にわかに乱打戦ムード。スピードとパンチの回転力では高山だが、ガオフラチャーンもストレートは力強く、高山の顔面を跳ね上げるシーンもあった。
4R。高山のアグレッシブさがガオフラチャーンの技術とパワーを呑み込み始めた。ガオフラチャーンの単発強打も意に介せず、左フックで動きを止めて右フックで有効打。その後も連打の山で優勢確保。
5R。ガオフラチャーンの強打は荒っぽいがインパクト十分。高山もなかなか捌き切れずにラウンド前半を空費してしまう。しかし高山は左フック、アッパー中心に猛連打で反撃し、後半の90秒でキッチリ逆転した。
6R。やや動き鈍ったガオフラチャーンに対し、高山は右ストレートで先制すると、その後も安定した攻守でリードを守り切る。ガオフラチャーンもヒット数は少なくないが、その他の採点要素で劣勢。
7R。高山はこのラウンドも果敢に攻めるが、やや空回りか。ガオフラチャーンはのらりくらりと捌いて決定打を容易には許さず、逆にヒットも奪ってみせる。高山は終了ゴング直前にラッシュをかけてアピールするが、このラウンドは微妙な内容。
8R。このラウンドも前半戦は高山が攻め手を見出せないじれったい展開。だが後半に入ると高山がロープへ詰めて鮮やかなコンビネーション。手数、攻勢点、主導権支配とあらゆる要素で大差リード。
9R。高山がラウンド開始早々からアグレッシブ。コーナーで右ストレートをクリーンヒットするとガオフラチャーンはフラフラのグロッギー。勝ちを確信した高山は落ち着いて追い詰め、最後はロープダウン気味のTKOとなった。
高山が序盤こそ戦意高い相手に苦しんだが、中盤以降は持ち前の積極性を全面に出して攻め立て、勝敗の行方を早々に固めると、9Rにはチャンスを逃さず見事に仕留めた。このクラスの相手に完勝出来るのだから、やはり実力は世界のレベル。