駒木ハヤトの西日本ボクシングレポートアーカイブ

かつて京阪神地区のボクシング会場に通い詰め、レポートを記した男ありけり。はてなダイアリーから記事をインポートしたものの、ブログ化して格段に読み難くなってしまいました。

興行概要及び雑感

初興行は去る5日に終わっているが、やはり年頭を飾る興行に相応しいのはこちらだろう。今年の西日本ボクシング界の行方を占うという意味でも重要な位置づけとなるダブル世界戦興行が、大阪府立体育館第一競技場で行われた。今宵の主役は5度目の防衛戦となる長谷川穂積[真正]と、悲願の世界初挑戦を果たした池原信遂[大阪帝拳]の2人。日本ボクシング界の至宝とも言える長谷川の約2年ぶりの関西帰還は勿論、一時は展望を完全に見失っていた池原が世界の頂にアタックする所まで漕ぎ着けた事も、東南アジア人相手に気の入らない試合をこなしていた頃を知る筆者としては非常に感慨深い。
関西でのダブル世界戦は04年1月の徳山昌守小島英次の金沢ジムコンビ以来3年ぶりとあってか業界内外の関心も高く、1階席はほぼ満席、2階席も指定席ゾーンを中心に程よく埋まる大健闘の観客動員を記録した。駒木が座った周辺には歴戦のマニア、ボクシング生観戦が始めてというライトファンの学生、在阪ジムの4回戦ボーイ、更には遠い故郷の英雄を応援に来た外国人と、バラエティに富んだ、それでいてボクシングに対する敬意と好意に溢れた人たちが思い思いに陣取っており、まさに理想的なボクシング興行の客席が出来上がっていた。観客たちのマナーも一部の心無いヤジを飛ばす輩を除いては概ね良好で、同じ大会場でも亀田兄弟の興行でウヨウヨしていた最前列前の通路に堂々と陣取る連中や、亀田以外の試合にはまるで興味を示さず騒音を発する集団は皆無であった。やはりイベントの品位と客の品位は比例するのだろう。
また、「ワールドプレミアムボクシング」名物となりつつある、豪華パンフレットは今回も健在。他の世界戦では1000円は取られそうな豪華オールカラーのパンフレットが無料配布された。この辺りのファンサービスも見事である。唯一気になったのは、試合中のフラッシュ撮影の注意喚起が日本語のみで行われたため、外国人客のフラッシュが世界戦の最中でも頻繁に焚かれてしまった事。2階席にいた筆者でさえ眩しかったのだから、選手にも影響があった事だろう。中には記者席でフラッシュ撮影をするイタリア人報道陣もいて、これには流石に閉口した。今後、世界戦を開催する際には、リングアナや館内放送から英語や出場選手の母国語でのアナウンスを行うなど対策を講じて頂きたい。


さて、今回は平日夕方からの開催、しかも19時〜21時の地上波生放送に合わせたタイムスケジュールということで、試合数は少な目の全5試合。前座は4回戦2試合と6回戦1試合のみで、合計ラウンドも38Rと世界戦興行にしては珍しい小規模興行となった。
もっとも、世界戦興行では、セミ前後に気合が空回りしたA級選手が格下相手に凡戦を繰り広げてメイン前に会場を冷やすケースも見受けられるだけに、この構成も逆に良かったのではないかと個人的には考える。特にボクシング興行はラウンド数が多いだけに、切るべき所は切る発想を持たなければ観客がメイン前に疲れてしまう。今回のように休憩込みで世界戦2試合・3時間半程度の興行が理想的と筆者は考えるのだが。


※駒木の手元の採点は「A」(10-9マスト)「B」(微差のRは10-10を積極的に採用)を併記します。「B」採点はラウンドマスト法の誤差を測るための試験的なものですので参考記録程度の認識でお願いします。公式ジャッジの基準は「A」と「B」の中間程度だとお考え下さい。
なお、世界戦では該当するベルト統括組織の世界戦採点基準に則って採点を行い、「10-10」の使用も慣例に従って最大2度に限定する事とします。また、WBAタイトルマッチの際には、今後導入が検討されているハーフポイント制による採点も併せて行います。